22.real situation
その頃デスプリンス刑務所の地下室では――。
「……アーロン、よせよ……冗談だろ?」
「お前を信用した俺がバカだった……」
ウォルチタウアーはトミーに銃を突きつけた。
彼らの前には口を開いたスーツケース。
しかし入っていたのは日記だ。
ダグラス・ステイヤーのものだろう、旅日記、手記諸々。そして数冊の本だった。
トミーは苦し紛れに手を伸ばし、中の一冊を掴む。
「わ、わかったぞ、アーロン、きっと金の在り処が書いてあるんだ! それか宝の地図」
「いい加減にしろ。もう付き合いきれん」
「ほ、ほら、〝森へ行ったのは……〟」
次の瞬間トミーはウォルチタウアーに殴られ、鼻血を飛ばして床に伸びた……。
* * *
ライセンスは全てを打ち明けた。
……ウォルチタウアーはあの時麻酔弾でブリウスを眠らせ、尋問した。
ジャックが奪った金の在り処を訊き出すために。
始めに、用意された自白剤入りの紅茶を飲まなかったブリウスは麻酔弾で眠らされたが、その後の催眠での自白も叶わなかった。
そもそも何も知らないブリウスから漏れる話などないのだが。
ウォルチタウアーは次に囚人のライセンスに話を持ちかける。ブリウスと共に脱獄し、彼の動向を探れと。それはライセンスの自由と引き換えだった。拒否すればその場で殺された。
引き受けるライセンス、その首には発信機が埋め込まれた。彼は約束を守り、実行するが、結局裏切られた。
全てはウォルチタウアーの策略だったのだ。
「……というわけだ。……済まなかった」
ライセンスは声を震わせ、謝った。
ブリウスは困惑したが責める気は起きなかった。
「あんたは捨て身で俺たちを守ってくれた。命の恩人だよ」
「俺はただ、外へ出たかっただけなんだ……ほんのひと時でも」
ブリウスは煙草を咥え、ライセンスにもすすめた。
「それは俺も同じ。……信じるさ」
◾️初期稿