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16.goin' back
午前七時。
ライセンスは車の脇に立ち、静かに遠くを見つめていた。
澄んだ冷気を思いきり吸い込むと、二メートルの巨体が打ち震えた。
やがてブリウスがやって来た。クリシアを連れて。
「ミスター・ライセンス。よく眠れたかい?」
笑顔で応える。
「ああ。何より空気がうまい。生きた心地がする」
「そして朝はこれ」と言ってブリウスは拝借してきた新聞を渡す。
「俺たちのこと、まだ載ってないぜ」
ブリウスはキーを回し、アクセルを吹かした。
三人を乗せた車はまた走り出した。
しばらく経って後ろのライセンスが身を乗り出した。
「……ブリウスよ。北へ向かうのでは?」
車は来た道をまた戻っている。
「ああ。大事なこと思い出してね。〝ジャック兄貴〟のとこへ寄らなきゃ。付き合ってくれるかい?」
ルームミラーに映るブリウスのどこか切ない眼差し。
ライセンスは表情を変えずに小さく頷いた。
「……わかった」




