13.to the north
ヘッドライトが車道を照らす。
行き交う車は少ない。
町を抜け、辺りは黒い山々が続いてきた。
もう百キロ以上走っただろうか、クリシアは少し速度を落とした。
「……ねえブリウス。自分が何をしたのかわかってるの? ねえ!」
三回目だ。ブリウスは口を尖らせた。
「……運転、代わろうか?」
少しずつ落ち着きを取り戻すクリシアだったが、あまり話す気にはなれなかった。
後部座席の大男のことが気になっていた。
ライセンスは申し訳なく言った。
「すまないね……邪魔だと思うが」
「……いえ」
――彼は恩人なんかじゃない。罪人だ。
逃げられるわけない。また捕まって、刑が重くなる……。
……でも、そう思ってもライセンスの穏やかで紳士的な態度に対してクリシアは何も言えずにいた。
ただ前を見て走った。ひたすら、北を目指して。
ブリウスは訊ねた。
「クリシア……どう? マルコさん相変わらず」
「元気よ。よくしてもらってる」
「最近……何か変わったことは?」
「……ないわ。どうして?」
「いや、特になけりゃいいんだ」
「そうね、隣りのアンジェリーナがあなたのことが忘れられないって。寂しがってるわ」
「ハハハ……あの犬か」
午前一時、モーテルに車を駐め、シャワーを浴びた。
ライセンスは車内で休むことにした。
クリシアはブリウスの腕の中で涙を零した。
求め合う鼓動は狂おしく寂しさを埋め尽くした。




