真・三國無双3エンパイアーズ 〜呉郡平定戦〜
やがて時代は進み、PS一人勝ちの時代も終局が見えてきます。ライバルメーカー、セガが次世代ハード、ドリームキャストをリリース。ソニーもこれに対抗してPS2を発売。初代の倍の処理能力を持ち、3D描画能力も大幅に向上させたモンスターマシンです。ですが、高性能すぎるがゆえに、サードパーティーにも多大な負担を強い、業界の再編、淘汰を推し進めた負の側面もありました。
そんな中で光栄もメーカー名をコーエーと改め、PS2に参入してきます。その一作目が記憶が定かなら三國志7だったのもコーエーらしい。ただ、この7は元々パソコンからPSに移植する予定だったものを急遽、PS2に移植という異色作ではありました。いや、シャレじゃなくて。
そんな裏技を使わなきゃいけないぐらいPS2は規格外のマシンだったのですね。登場時はサードパーティーもどんなゲームを出せばいいのか、しばらく模索していた感があります。そんな中、コーエーもPS2専用ゲーム、決戦シリーズをリリースします。これは大合戦をリアルタイムでシミュレートして体験できるという非常にコーエーらしい、画期的なゲームでした。今でも名作の誉れ高いシリーズです。当時はリアルタイム戦略ストラテジーとか銘打ってたと思いますが、その銘に偽りなしです。
それも三国志が舞台の決戦2になるとさらにはっちゃけます。
卑弥呼や孔明がなんの説明もなく空を飛んだり、馬超がネイティブアメリカンっぽかったり、名将、于禁がオネエだったり、ツッコミどころ満載。それでいてゲーム内容はいたって真面目。まさにあの当時のコーエーファンが待ち望んでいた、「僕達の好きなコーエー」が具現化したような作品だったのです。
コーエーの快進撃はまだ止まりません。この決戦2のヒットに前後して、真・三國無双が登場するのです。
一作目は地味な売上げだったようです。しかし、内容は間違いなく画期的名作です。プレイヤーは三国志の有名武将を操り、合戦が行われる戦場で戦う、今となっては当たり前ですが、当時としては誰もが夢見たゲームシステムだったのです。広大な箱庭空間でリアルタイムなアクションゲームなんて、当時はシェンムーくらいしかなかったのではないでしょうか。PSにもグランドセフトオートやドライバーといった洋ゲーはありましたが、こちらはカーアクションがメインでした。世界に先駆け、コーエーはどこも成し得なかったゲームを世に出したのです。
操作法もいたって簡単。□ボタン連打で通常攻撃。△ボタンで特殊効果付加のチャージ攻撃。○ボタンで無双乱舞発動! この攻撃パターンでワラワラ湧いてくる敵ザコ兵をなぎ倒す、まさに一騎当千の爽快感を味わえるのです。これだけ書くと作業っぽいですが、これが逆にリアルでもありました。格闘技では同じ型を何度も反復して身体に覚え込ませます。そうすることによって、実戦で型の動きが自然と出るようになります。このボタン連打で同じ動きの繰り返しがその説明になるのです。タイミングを計るために筆者は最初、いち、にい、さん、と、カウントを取りながらタイミングを覚え込んでいったのを覚えています。つまり、格闘技の型稽古と同じですね。これがリアルだった。
エポックメイキングはまだあります。この一見、単純操作の攻撃法はシステム的弱点のようにも見えますが、大きな武器でもあります。
当時は2D対戦格闘ゲームもほぼ行き着くところまで行ってしまった感があり、操作法は複雑になり難易度も高く、コアユーザー以外は置いて行かれるような状態になっていました。アクションは好きだけどヘタ、という、大多数のユーザーの受け皿がなくなっていた時代でもあったのです。そんな時期にコーエーが簡単操作の爽快アクションゲームを出したのです。おそらくこの英断はコーエーだからこそできた、と、筆者は感じています。
コーエーユーザーは大多数がSLGプレイヤーです。アクションは得意ではありません。そこでコーエーはそのユーザーに向けて簡単操作を採用したのでしょう。これが成功へと繋がったのです。もしこれがカプコンとか、SNKといったハードなアクションゲームメーカーだったなら、やはり複雑な操作法を導入し、間口の狭いゲームになっていたのでは、と、思うのです。筆者も真・三國無双をプレイし、アクション得意な人はこんな爽快感をずっと味わってたんだ、と感慨を覚えたものです。
そう、真・三國無双は誰でも上級プレイヤー気分を味わえるゲームでもあったのです。これも画期的と言えるでしょう。
そしてこの地味なヒットは確実にユーザーの支持を受け、真・三國無双2での大ブレイクとして結実するのです。