野獣刑事 〜総括〜
前述したように、本作はストーリーパート、アクションパート、ふたつでひとつなのです。バカゲーでありながら製作陣はいたって真面目に作った。
真面目に作ったがゆえにストーリーは序盤で大盛り上がりだったのに、中盤でトーンダウンせざるを得なかった。
アクションパートは真面目に作ったがゆえに可もなく不可もなく、されど決してつまらないものは作らなかった。どちらも非常に丁寧に作り込まれているのです。
もし本作がプレステ時代に制作されていればどちらかのバランスが崩壊したクソゲーにしかなりえなかったのではないでしょうか。
あの時代のニンテンドーDS作品だったからこそ本作は秀作足り得た。しかし、低年齢層のユーザーも多いDSだったため、逆に無難なストーリーやアクションにせざるを得なかったのもまた事実なのです。
当時はすでにグランドセフトオートや龍が如くもリリースされており、本作はDSでできる龍が如くを目指して制作されたのかも知れません。
また、姉妹作の落シ刑事にも本作のキャラが登場したりと、いかに制作サイドが本作に力を入れていたかが窺えます。
が、残念ながら売上げ的にはあまり振るわなかったと記憶しています。売上げは本作の方が上だったようですが、ゲーム内容は姉妹作、落シ刑事のほうが評価が高かったような記憶があります。こちらの落シ刑事もプレイすれば、また評価は違ったのかも知れません。今となっては購入しなかったことが悔やまれます。
もしかすると本作もまた、姉妹作と合わせて、ふたつでひとつだったのかも知れません。どちらか一方だけプレイしたのでは魅力も半減してしまうものだった可能性も否定はできないのです。
そんなわけで、筆者は本作を正当に評価することができません。筆者としては秀作に位置付けますが、名作になる可能性も秘めているのです。
残念ながら両作品とも売上げでは苦戦したようです。続編がリリースされなかったのがその証でしょう。しかし、売上げが伸びなかったから駄作だったということはもちろんありません。筆者は本作を大いに評価します。あの時代でまだこれほどの挑戦的試みのゲームをリリースするメーカーがあることについても嬉しく思ったものです。
しかし、その後のゲーム業界を見るにつけ、本作のようなバカゲーが世に出たのは本作が事実上最後だった、と、筆者は感じています。
そういう意味でも、本作は記念碑的名作であると訴えたいのです。