野獣刑事 〜ストーリー攻略その2〜
ストーリー中盤までは頭を空っぽにして遊べるバカゲーとして純粋に楽しめるのですが、途中で息切れしたかのように普通の展開にトーンダウンしていくのです。
テロ組織の目的は陽動に過ぎなかったとか、黒幕の陰謀とか、展開によっては同僚が死亡したり、お約束ではありますが、意外な黒幕がラスボスとして登場してきます。ストーリーとしては王道でしょうが、良くも悪くも普通のアクションドラマの展開です。中には野獣が市民に叩かれ、宍戸が苦悩するなんてシーンまで出てきます。ハチャメチャな主人公がこれでいいのでしょうか。(念のために追記いたしますと、ここで姉妹作、落シ刑事の主人公が登場、というシーンなので、避けては通れなかった事情があったのかも知れません)
それにしてもこのギャップにはついていけない部分もあるというのが偽らざる気持ちでもあります。
序盤、あれだけバカで盛り上げたのに中盤から妙にシリアス路線にシフトされてはユーザーとしては戸惑ってしまうのです。できれば最後までバカのまま突っ走ってほしかった、というのが前述したストーリーの破綻なのです。
もちろん、大人の事情も理解してます。当時の時代背景を考慮すれば、ひと昔前のように開発費は決して安くはありませんし、どんな作品でもヒットやシリーズ化を念頭に制作されているはずなのです。プレステ時代のようなカルト作はなかなか世に出せない時代になりつつあった、そんな時期に本作のようなバカゲーをリリースするのは大変な挑戦だったことも理解します。最初から最後までバカで押し切るのはさすがに難しかったのでしょう。
しかし、ゲーム雑誌で本作の基本コンセプトに魅了され、当時としてはちょっと古めのグラフィックでも、そのバカな世界観を見て購入を決めた筆者のようなユーザーにとっては、このどっちつかずな仕様は許容できなかったというのもまた事実です。
俳優、舘ひろし氏歌うエンディング曲もいい曲ですが、やはり本作のコンセプトからは大きく外れている感が拭えません。
本作の最大の魅力でもあるバカなストーリーは以上の理由から、残念ながら可もなく不可もなく、という評価をせざるを得ません。面白いんだけど、人にまでオススメできるほどでもない、と。
では本作は可もなく不可もないバカゲーに過ぎないのか、というと、実はそうでもありません。それは前回述べたシステム面の優秀さが補っています。アクションパートの間口が広いお陰で、ストーリーはトーンダウンしてもゲームとしては結構遊べるという、まさに奇跡的なバランスを保っているのです。
おそらく当時のゲーム制作は完全な分業制でしょう。ストーリーパートとアクションパートは完全に別部門だった可能性大です。そのチームの不足した部分をお互いが補い合う、そんな絶妙なバランスの上に本作は秀作として成立しているのです。それを感じられることに筆者は本作を名作のひとつに加えても良いと考えているのです。
では本作は名作なのか? その点については次回、総括しましょう。