真・三國無双3エンパイアーズ 〜長坂坡の逃亡〜
戦国無双が一応の成功を収め、真・三國無双3がリリース。この頃には無双はすでにミリオンを約束されたような存在感を放っていました。予想通り、3も大ヒット。しかし、ゲームとしての総合力は2に及ばなかった、というのが筆者の感想です。
キャラも増え、グラフィックも向上しているはずなのになぜか?
まず、すぐに気付いたのがキャラの挙動がおかしい点。
プレイヤーキャラが攻撃を繰り出すと、キャラが勝手に敵をロックオンしてしまい、方向キーとは真逆の方向に進む、という仕様でした。これが曲者だったのです。例えばザコ兵と中ボスが同時に攻めてきた場合、プレイヤーは強敵の中ボスを倒したい。しかしキャラは勝手にザコ兵をロックオン。その隙に中ボスの攻撃を食らう。仕方ないのでザコ兵を倒して仕切りなおし。するとまた別のザコ兵が現れ、結局、ザコ兵を一掃しないと中ボスと戦えないというものでした。
この欠点は2の時にも少しは見られました。しかし、3ではその欠点がグレードアップしていたのです。これは進化でなく退化です。なぜ3が2の欠点を伸ばしてしまうのか。
次に、ちょっとしてから気付いた欠点。無双シリーズのウリでもある無双乱舞の活躍の場がほとんどなくなってしまったこと。
無双ゲージが溜まり辛い仕様になってしまい、ここぞという時でも発動時期を逸してしまいます。しかも玉という、戦いを有利に進めるアイテムを装備するとゲージを消費するという仕様がそれに拍車をかけています。
そしてもうひとつ。暗殺ができなくなった点。
暗殺というのは弓矢を使い、遠距離から敵有名武将を文字通り暗殺する、ゲームシステムの不備を突いた技です。2では極端に離れた場所から弓矢で狙撃しても敵は動かず、そのまま殺すことが可能でした。これはリアルではありません。開発陣もその不備に気付いたようです。そこで3ではある程度ダメージを与えると敵がガードし、そんなズルができなくなっていたのです。これは一見して正統進化です。前作の不備をきちんと潰しています。しかし、筆者はこの仕様に気付いた時、大きく落胆しました。同じ想いを抱いたユーザーもさぞかし多かったでしょう。それは間違いありません。
そもそもコーエー系SLGをプレイするような連中は卑怯な手段が大好きなのです。なるべく自分は安全な場所で、敵が自滅したり仲違いを起こしたところで漁夫の利を得るのが堪らなく好きな奴らばかりなのです。(やや誇張アリ)
暗殺などはその最たるものです。自分は絶対安全な高台に陣取り、せっせとかき集めた弓矢を惜しみなく使い、楽して敵将を討ち取り、戦局を有利にもっていき、自分はなるべく汗を流さず勝利に導く。そんなプレイスタイルを許容する懐の深さが2にはあったのに、3ではそれが許されません。自分が積極的に最前線に突入し、大暴れしなければ自軍が勝てなくなっていたのです。確かにそれも無双の大きな魅力です。一騎当千の爽快感です。しかし、筆者のように非力で卑怯で姑息なプレイスタイルが大好きな奴は歴史の主人公になど、そんなになりたくないのです。それよりも歴史の影で蠢き、大局にささやかな影響を及ぼす働きの方にずっと魅力を覚えるのです。特に暗殺に成功した時のゾクゾクするようなカタルシスは無双でしか味わえないものでした。
その暗殺ができないと知った時、「開発陣は分かってない!」と、心の中で叫んだものです。ゲームは確かに決められたルールの中でプレイするのが正道でしょう。それは分かります。しかし! ゲームで最も重要なのは面白いか、楽しいか、気持ちいいか、そこなのです!
いくらルールが正しくなくたって、ルールの不備がゲームバランスを崩したって、それが楽しければそれもゲームの魅力のひとつなのです。プレイヤーは勝手にルールや縛りを設けて楽しむのです。おかしな部分は勝手にストーリをくっつけて、それも楽しむものなのです。そこを制作サイド、開発陣は分かっていなかったのです。