andante クリスマス
「おい、何で俺まで作らなきゃいけないんだ」
「料理結構出来るじゃん。あたし1人キッチンに立たせようなんて、そうはいきませんからね」
談笑を止めソファーから立ち上がり、嫌そうにしながらも手を洗い始める君。
「ははっ。相変わらず修哉は使われてるのな、美弥子に」
「隆弘さんどうにかして下さいよ」
「無理。妹の相手なんてしていられないからな、俺。もう行くし」
「帰って来なくて良いよお兄ちゃん」
「俺じゃなくても誰かが帰るからそれまで精々楽しみな」
そう言ってにやっと笑うと兄はコートを手に出て行った。
「君達、いやだ」
「あーはいはい」
「サラダ作ってよ、はやく」
「了解しました」
お昼過ぎて少し経った。買い物に出掛けた両親と今遊びに出た兄がいない家はあたしと君だけなのに。
「大体、作っても俺帰るから食べないし」
確かに手伝ってもらう料理は両親と自分用。だけど…。
「同じ空間にいるのに違うことするのって、会話ないって一緒にいる意味無いじゃん」
寂しいじゃん。そう思うあたしは幼いですか。君から見て、面倒な子ですか。
「来年、理系選択するんでしょ」
料理を作りながら聞く。
「当たり前。文系無理。お前は文系だろ。クラス替えもあるな」
進路が違う、一緒の時間が少なくなる。たったそれだけなのに、一気に不安になる。
「それだけだろ」
君が、軽い感じで言った。
「それだけのこと。その程度のことだ」
もう一度。でも、眼差しは力強く。
「…ねぇ、それサラダ?」
「お前、俺の言ったこと聞いている?」
「んー、味はまぁまぁ」
「すぐいつも通りかよ、まったく」
「あ、これ味見する?」
「食べる。…ん」
満足げに首を縦に振る君。時には乙女だし悩むけれど、そんなのあたしには似合わない。いつもの調子で、いけば良い。
「修哉」
「ん?」
「Merry Christmas!」
微笑みじゃなく満面の笑顔。にっこりじゃなくてにこっとね。元気よく伝えよう。
「アホ」
いつも通りの酷い言葉でも、あたしの髪をグシャグシャにする手がいつもより熱いから。伝わってるよ、ちゃんとね。




