poco a poco クリスマス
Q,恋人達の三大イベントと言えば?
A,誕生日にバレンタイン、そして…クリスマス。
「…」
そんなキャッチフレーズを何回聞いただろう。実体験してみるとこんなに人がいるなんて。恋人だけじゃないけれど、それでも多い。
「あ、さいっ」
「三上君」
「遅れて、ごめんっなっ」
「それほど待っていないから平気だよ。それより息整えて、ね」
待ち合わせ時間より遅いが急いで来てくれたことがわかる。ショーウィンドーの光が、息苦しそうな表情を照らし出してくれた。
「…悪い。もう大丈夫だから行こうか」
「うん」
促されて賑わう大通りを歩き始めた。子供から大人、友達から家族、皆隣と視線を交わし笑いながら歩いている。
「やっぱり混んでいるな」
大通りから少しそれた道に入っても混雑は続いている。
「テレビで取り上げられていたからかな」
この道を少し歩いた所に、飾り付けられたもみの木街道がある。
「それだけじゃないと思うけど、テレビに踊らされたみたいで悔しいな」
そう言ってちょっと顔をしかめた動作が幼く見えて、小さな笑みが顔に浮かぶ。
見に来たのはもみの木街道。光も押さえめ、飾り付けも派手じゃないから穴場だと誰かが言っていて。けれど今年は地元テレビに取り上げられたからか、とても混んでいる。
「…あれ」
気付くと隣にいた姿が見えなくて、一気に混乱する。
「どうしっ」
「浅井っ。良かった、見失ったかと思った」
声と同時に強めに引っ張られた腕。驚きより安堵が勝った。
焦っていた表情が安堵、そして心配そうな様子に変わっていく。
「…どうかした?」
「見つけてくれて、ありがとう」
探してくれて、ありがとう。心が暖かくなっていく、嬉しくなって見上げて微笑む。掴まれた腕に力が込められた。
「…三上君?」
「…敵わないなぁ、亮子には」
名前を呼ばれる。腕から離された手が自分の手を握る。顔を見合せ、視線が交わされる。
「行こうか」
「…うん、奨君」
初めて名前を呼びあって、手をつなぎあわせて。また視線が交じり、どちらともなく笑いあう。
1人で見る景色は好きだと感じる。2人で見た景色は…幸せを、感じた。




