allegro ハロウィン
「よし…今日は完璧っ」
中間テストは前に終わったし、期末はもっと後だから勉強面で鬼教師と向き合う心配はない。クラスマッチも体育祭も終わったから運動面でいじられる必要もない。イベント対策もした!
「奈央子は良いよね~、あんなに格好良い先輩と付き合ってさ~」
「そうそうっ。何より大切にしてる~って分かるもんねっ」
「飽きられて捨てられるかと思ったけど、そんな心配必要ないみたいだし」
「ううっ」
クラスメートの言葉が痛い痛い…。ソウデス、何日、何週間ではなく何ヵ月と経っているのデス、あの不毛な攻防戦が…ううっ。
『あんなに格好良い先輩と付き合ってさ~』
だがこの言葉に断固として戦う!理由1:格好良いのは建前、騙されてはいかんっ。理由2:付き合う、絶対チガウ…主従関係じゃないだろうか、誰か気付いてっ。
「「「ずる~い」」」
一斉に揃う声、一瞬後のきゃははと笑う声、ダブルショックで呼吸が、息がっ。…すぐに応答出来ません…。
「細川、迎え」
机の上にダウンしていたら、最終通告。
「片山先輩待たせるなよな。すっげー良い人なんだからさ」
お前もか男の癖に。しぶしぶ立ち上がり歩き出すが力なく、じっと手を見る…あぁ、震えてるぅ…。
「奈央、どうかした?気分悪い?」
顔を覗き込んでくる角度が斜め下から45度で、そっと握られているように見えてかなり強い力で握られた手が今日の帰りを表しているんですね、先輩。これでも鍛えられ察しが良くなったのです、はい。
「だ、大丈夫です」
「そう…?でも心配だから今日は早めに帰ろうか」
言った後握られていた手はつなぐ形へ。そして連行、いつものパターン…なんですが。
「先輩」
「あ?何?」
校門を出るといつの間にかつなぐから絡め合うに変わっている互いの手。慣れとは恐ろしい…ではなくて。
「…悪いものでも食べました?」
「言うことに事欠いてそれか、お前」
返しにも切れがなくて、しっくりきません…ここは1つ。
「先輩今日何の日か知っていますか」
「は?知らねー」
「10月31日ですハロウィンです、ハロウィンと言えば決め台詞、それ位知ってますよね」
「馬鹿にしてるなお前。Trick or treat、これでOk?」
面倒臭そうに答えた口に、チョコを放り込んだ。
「っ!?」
「Happy halloween.疲れたときには、糖分塩分ですよ」
呆気に取られて見下ろしてきた表情が、崩れていき最後には大笑いに変わる。
「くくっ…はー、馬鹿らしい。やめた、無理だ、決めた。お前も来い、1年後また後輩になれ」
…悩んでいるのかなと思ったら、糖分は必要なかったみたいですね?




