poco a poco ハロウィン
「ねぇねぇ、今日何の日か知ってる?」
どのクラスにも1人はいるお祭り好きな人間。
「へ?」
「知らないのかね?亮子君」
あたしのクラスでは女の子で。
「では今日は何月何日か答えよ!」
ビシッと指先を向けてきた彼女は友達で。
「えっと、10月31日」
「そうっハロウィンなのですよ!っということで…Trick or treat!」
差し出された掌に反応して。
「え、うそっ。言ってみるものだね、愛してるよ亮子ちゃん!じゃねっ」
1つだけ残っていたノンシュガーの飴。嬉しそうに握り締め、声をかけてきた時と同じ勢いで去って行く。反応に戸惑う言葉を残して。
「…照れるなぁ」
急に熱くなった頬を冷やすように手をあて、思い切って冷たい風に触れたくなって廊下に出て窓を開け放った。
「あれ、浅井。寒くなってきたから教室で待っててって言わなかったっけ、俺」
気付くと辺りはずっと暗くなっていて、いつものように景色を見ていたみたいで。
「三上君」
「風邪ひくかもしれないよ」
苦笑して開けっ放しの窓を閉めてくれた。視線が交じる、表情が曇った。
「ちょっと顔赤くないか?風邪ひいたんじゃ」
「大丈夫。冷たい空気に触れていたからだと思う」
笑いながら言うと、安心したように表情が緩んだ。曇った顔より、こっちの方が絶対良い。
「そっか。でも気を付けろよ、今年は風邪が流行るっていうから」
親のようで、思わず吹きだしてしまう。
「え、浅井?」
「な、何でもない…そう言えば三上君は今日何の日か知ってる?」
「今日?…ああ、ハロウィン?」
誤魔化すための話題があっさり返されて悔しい。鞄を持ってきて隣に立つと、彼女に言われた言葉を繰り返してみた。
「そうだよ、だから…Trick or treat?」
一瞬疑問の表情の後、考えるように鞄やポケットを探す彼。
「…ごめん、何もない」
いきなりでも反応してくれる、それが何だかくすぐったい。
「でも、悪戯は?」
不思議そうに聞いてきた回答は…悪戯で誤魔化さないと、まだ言えない言葉。
「好きなの」
「!?」
「この帰り道が」
落胆させてごめんなさい。素直な気持ちと熱くなっている顔、見せる勇気がまだなくて。




