allegro 続
人生は常に競争だ。その言葉が実感できる今日この頃。まさに私の人生は時間との競争だ。6限が終わり、チャイムが鳴り終わる。掃除は今日なし、先生が出て行く。鞄を掴んでいざ、自由への道を…!
「奈央、帰ろうか」
(ぎゃあぁぁぁ!!)
扉の前には「建前」の先輩がそれはもう爽やかな笑顔で立っていらっしゃる。
「あ、片山先輩だぁ」
「あ、本当だー」
その声に照れたように微笑む先輩。本音を知らない人達にとって、「建前」の先輩は結構人気者らしい。私には痛い視線が突き刺さる。ああ…代わってくれるなら喜んで代わりますともさ!
気が付くと先輩とクラスの女子が喋っている。チャンス!気付かれないように、そおっと、そおっと…。
「ん?奈央どうした?」
にっこり笑って私の腕を掴む先輩。ふと気付いたように髪に手を伸ばしてきて…。
「ごみついてるぞ。ほら取れた。逃げようってそうはいかないぜ?奈央子」
私にだけ最後が聞こえるように本音の先輩で。私は青くなって固まった。女子は赤くなって固まった。先輩は「建前」に戻って「じゃあね」と言うと、私の手を引っ張って歩き出した。
「…もう教師も見てねーな」
校庭を半ばまで通った時、本音の先輩が面倒くさそうに言った。私はこの時点でやっと正気に戻る。先輩がにやっと笑って、握る手に力を込めた。
「奈ー央、奈ー央っ子ちゃん?もしかして今日も逃げようとした?」
「せせ、先輩、手、手っ」
恥ずかしいからとぶんぶん振って離そうとする。
「い・や・だ。それに名前で呼べって言っただろ!…俺は絶対お前を離さないからな、奈央子」
沈黙の後の急な真面目口調に、顔が赤くなる。名前は呼ばないと後が怖いので呼ぶとしよう、が、その後はもう耐えられない!
「いーやー!!章司先輩それくさいです、恥ずかしいですっ、赤っ恥です!」
自分でも何を言っているのやら、とにかく聞いていて恥ずかしい!先輩は少しの間目を大きく見開いて沈黙し、その後失礼にも爆笑しやがりました。
「くくっ…あーはっはっは…やっぱり奈央子って最高!あー、本当に面白いね、お前」
そう言って今度は肩を掴んで抱き寄せられました。
「近いです、近いです、ちかちか…近いんですってば章司先輩!離して下さいっ」
「気にしない気にしない。ラッキーぐらいに思って今度からは流せる努力しろよ」
そう言って離すご様子も見えません。
「そんな事出来ません…ってまたやるんですか!?」
「ナイス突っ込み。んー、お前やっぱり良い反応するなぁ。だからつい遊びたくなるんだよな」
すごく楽しそうであります。私と帰るといつもこんな感じ、馬鹿笑いしやがります。…私を何だと思っているんだ、私はおもちゃじゃないぞ!?
「奈ー央、……奈央子?」
怒り心頭で顔を背けていたら…。
「…素直にならないなら、もっといじって遊んでやろうか?」
…と。…ええ、永久凍土の微笑み付きの低い良いお声で。すみません、勝てません。今も不毛な関係は続いております、とほり。…雛子先輩、私、安息が欲しいです…。




