allegro 始
「これで委員会を終わりにします」
委員長の声と同時に委員会が終わる。先生が去って委員も去る。残ったのは委員長と副委員長、そして書記。
「…終わったのはいーけど、あの教師また口出ししやがって」
先生がいなくなると、途端に変わる委員長。さっきまでの優等生は今何処に。
「まぁまぁ、気にしないで出た議案まとめちゃいましょ」
優しい副委員長が宥める。よく付き合えるものだ。
「けっ、大体何なんだよあの野郎は」
「毎回座って突っ込むだけじゃねーか、審判でもしているのかよ」
「偉そうにしやがって、生徒会なんだから引っ込んでろっつーの」
「それに10円ハゲあれだけ気にしてたら誰だって気付くっつーの!あほが!」
「そう思うよな?細川も」
(急に話振らないで下さいっ)
「え?すみません書くのに必死で聞いていませんでした。何ですか?」
書記の私は板書に必死なふりしてスルー。でないとかなり酷い罵詈雑言の後の、最後の言葉にいつもウケてしまう自分が分かってしまうから。
今もとぼけたふりしているがお腹が痛い。
委員長はそんな私を見てつまらなそうにため息を吐く。
副委員長は声を抑えて笑っている。
委員長は先生の前では優等生だが、生徒の前では劣等生と聞いたことがある。もしかしたら生徒全員の弱みを知っているのだろうか、だから先生は気付かない…だとしたら敵にはしたくない。
「…決めた」
しばし黙って作業をしていた委員長が不意に呟いて、私を見る。…嫌な予感。
「細川奈央子、俺と付き合え。お前だけが俺に対して反応が薄い。だから付き合え」
…何を言い出すんだこの人は!
「ちょ、ちょっと待って下さい先輩。先輩って雛子先輩と付き合っているんじゃ」
正副委員長は3年だ、書記の私は2年だ。
「え?あたしが章司君と?付き合ってないよ、奈央子ちゃん」
「だから付き合え」
あら、新事実発覚…ではなくて。
「わ、私も反応が薄いわけじゃなくて、先輩の最後の一言が面白すぎて耐えていただけですから」
「だから付き合わないって?じゃあこれからは素直に反応するお前を近くで見ていたい。だから付き合え」
頭の回転が速い人は他人の意図をくみ取るのもお上手で…というか、少し俺様的な発言では。
「奈央子ちゃん、奈央子ちゃん、断ると章司君弱みを掴んでちらつかせるかもしれないよ?」
副委員長が隣で耳打ちをしてくれた。…容易に想像出来て私怖いです、雛子先輩。
「で、返事は?」
ニヤニヤと笑っているようにしか見えませんが。
「はぁ…」
なんでも、私は前から気に入っていたんだとか。そして不毛な関係は今も継続中です。…とほほ。




