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RYTHEM  作者: 香坂皐月
22/23

allegro 卒業式

「卒業生退場、卒業生一同、起立っ」

 あぁ、解放される。テラ並みの安堵感とミクロ並みの虚脱感。


「先輩も卒業ね~」

「奈央子も寂しくなるね~」

 ぼそぼそと、冷やかしか慰めのようにかけられる他愛もない言葉。

「良く分かりません」

 満面の笑みで答えたら両側から手刀が入った。…痛い。


 先輩はN大実力合格、何故か居住相談され、何故か買い物に付き合わされ…私の三学期、成績は低空飛行でかなり不安定でした。…えぇ…憎かったぁ…。

「一同、起立っ」

 それでも来年、いないんですね。学校にいても街にいても、見ることも聞くことも、話すことも会うことも、ないんですね。


 パチパチパチパチ………。

 拍手の音が、重く響いて聞こえる。



「奈央子ー、先輩の所行ってあげないのー?」

「…あれに突っ込んでいけと」

「…頑張れ」

 視線の先には、ここぞとばかり群がる群がる男女の輪。人気者?あ、憎さ再び。


「しょうがないんですけどねー、あれだけ外面良いとねー」

「外面?誰の?」

「何の話?」

「卒業までばれないって…どれだけ皮厚いんですか」


 人垣が少し落ち着いて、今周囲にいるのは皆卒業生。別れを惜しむから当然だ、これからクラスの謝恩会にでも行くのだろう。それが一番妥当、なのに。

「奈央子」

 そこから抜けて来てくれちゃうのだ、この人は。


「ごめん、奈央子連れ帰っても良いかな」

「はいっ、どうぞどうぞ」

「奈央子っ、ほらボーッとしていないでっ」

「ありがとう」


 爽やかな表情のまま、ずるずると引っ張られ向かった先は…。

「何で校内に逆戻り?」

「お前何で側に来ないんだよっ。大変だったんだぞ、これっ」

「ぎゃっ、痛いっ」

「ありがたく受けとれ、正月の逆再現付きだぞ。ここ、いつも委員会やっていた教室だろうが、馬鹿」


 私はおでこに直撃させていませんからっしかもボタン固いしっ…最後までこの人は何様だっ。

「いりませんよっ、お金にもならないのにっ」

「奈央子…お前強欲だったんだなぁ」

「違いますからっ」

「安心しろ、その強欲に応えられる器だからな、俺は。我が儘言って良いぞ、毎月会いに来てやるよ」

 ぐいっと抱き寄せられにやりと笑う顔を見上げて。その後ろには、青い空。


「卒業して下さいよっ」

「学校からな。お前からは無理」

 新しい付き合い方が、また二人をつなぐから。

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