allegro 卒業式
「卒業生退場、卒業生一同、起立っ」
あぁ、解放される。テラ並みの安堵感とミクロ並みの虚脱感。
「先輩も卒業ね~」
「奈央子も寂しくなるね~」
ぼそぼそと、冷やかしか慰めのようにかけられる他愛もない言葉。
「良く分かりません」
満面の笑みで答えたら両側から手刀が入った。…痛い。
先輩はN大実力合格、何故か居住相談され、何故か買い物に付き合わされ…私の三学期、成績は低空飛行でかなり不安定でした。…えぇ…憎かったぁ…。
「一同、起立っ」
それでも来年、いないんですね。学校にいても街にいても、見ることも聞くことも、話すことも会うことも、ないんですね。
パチパチパチパチ………。
拍手の音が、重く響いて聞こえる。
「奈央子ー、先輩の所行ってあげないのー?」
「…あれに突っ込んでいけと」
「…頑張れ」
視線の先には、ここぞとばかり群がる群がる男女の輪。人気者?あ、憎さ再び。
「しょうがないんですけどねー、あれだけ外面良いとねー」
「外面?誰の?」
「何の話?」
「卒業までばれないって…どれだけ皮厚いんですか」
人垣が少し落ち着いて、今周囲にいるのは皆卒業生。別れを惜しむから当然だ、これからクラスの謝恩会にでも行くのだろう。それが一番妥当、なのに。
「奈央子」
そこから抜けて来てくれちゃうのだ、この人は。
「ごめん、奈央子連れ帰っても良いかな」
「はいっ、どうぞどうぞ」
「奈央子っ、ほらボーッとしていないでっ」
「ありがとう」
爽やかな表情のまま、ずるずると引っ張られ向かった先は…。
「何で校内に逆戻り?」
「お前何で側に来ないんだよっ。大変だったんだぞ、これっ」
「ぎゃっ、痛いっ」
「ありがたく受けとれ、正月の逆再現付きだぞ。ここ、いつも委員会やっていた教室だろうが、馬鹿」
私はおでこに直撃させていませんからっしかもボタン固いしっ…最後までこの人は何様だっ。
「いりませんよっ、お金にもならないのにっ」
「奈央子…お前強欲だったんだなぁ」
「違いますからっ」
「安心しろ、その強欲に応えられる器だからな、俺は。我が儘言って良いぞ、毎月会いに来てやるよ」
ぐいっと抱き寄せられにやりと笑う顔を見上げて。その後ろには、青い空。
「卒業して下さいよっ」
「学校からな。お前からは無理」
新しい付き合い方が、また二人をつなぐから。




