allegro バレンタイン
…何故こんな事をしているんでしょう。私は今、手作り何とかを友達に教えてもらい作っているところです。彼女は料理全般が得意なので、さっきも従姉妹の方から聞かれていました。それに比べ私は…。
「奈央子はそれ以前の問題だから。不器用をなおさないと、血の味がする料理出しちゃうかもしれないよ?」
「うぅっ。でも指3回しか切っていない!」
「…普通はそんなに怪我しないんだよ?」
自分では普通だと思っていたのに。ラッピングした時も。
「…不器用って、どこまでも不器用なんだねぇ…」
と、しみじみ言われ…確かに奇抜な形かもしれないけどっ。
とにかく仕上がり、お礼を言って帰り道。脅されてはいるけれど、流石にこれは止めて市販を買おうかと私にしては悩んでいた。ふと、擦れ違った男子高生達の声が聞こえてくる。
「お前は良いよ、浅井さんから絶対貰えるから」
「本当だよな。俺も本命欲しいっ」
「でも何も言ってなかったし、そぶりもないし…。貰えるのなら何でも良いや」
「はっきり言ってないんだっけ、照れ臭くって」
「どうして良いか分からないから一緒に帰らないんだっけ、恥ずかしくって」
「「純情ぶるなよ~」」
「うるせっ」
こういう人もいるんだ…そうだよね、味より見た目よりあげるあげないの心意気が大切だよね…原因は先輩が要求してきたからだしっ。倒れようが死にそうになろうが関係ないっ、人生前向きに!
…と、開き直り翌日。いつの間にやら放課後。はい、あの方が教室に来てくださるそうで。
「奈央子、帰ろう」
「建前」先輩の、おーでーまーしー。今日はスペシャルバージョン?なのか一段と好青年です。おっと紙袋を持っている…おぉっ、物です物。本命チョコらしき物もありますよっ、私相手より彼女達相手の方が…私の精神的にとても良い!
「先輩、それ、あれですよね」
「あぁ、チョコだよ」
何だか素晴らしく笑顔です、上手くいくかもしれないっ。
「じゃあ私と一緒にいたら大変ですよね」
「はい?」
「そうですかっ、よく分かりましたっ。では一緒にいる必要ないですよねっ、ねっ?それでは私潔く身を引くので紙袋の中をくれた人達と末永く仲良く御幸せにっ。それではっ」
やった、これで自由の身…!とはいかず。爽やかに見え、がしっと掴まれた腕の辺りから黒いものが…あ、目の錯覚?そのまま外へ連れ出されまして。
「俺の事がまだ良く分かっていないみたいだから、自宅でじっくり教えてやるよ、奈央子」
そう言って目の錯覚じゃない黒い笑みを浮かべた先輩…あぁ、悪魔と言わず何と言い表しましょう。
「申し訳ございませんでした、私が悪かったです、許して下さい」
「謝罪は俺の部屋で時間をかけて聞いてやるから」
「そ、そうだ、チ、チョコありますよ、チョコ」
「なかったら今頃泣かしている。手作りだろ?ゆっくり味わって感想聞かせてやるよ」
これは、もしかして、絶対絶命ってやつですか?先輩のお宅訪問の必要性は、どこにあるんでしょうか。私の表情を読んだのか、先輩は笑みを深くして…腹黒い笑顔でこう言った。
「ホワイトデーまで待たせずにお返ししてやるよ、行動でな?」




