andante バレンタイン
「全然問題ないよ~。お互いに頑張ろうねっ、じゃあね」
『うん、本当にありがとう。またね』
通話を切って、今度会う計画を思ってにやにやしてしまう。
「…先生~、こちらもヘルプです」
う~ん、従姉妹の亮子ちゃんは普通に料理出来るから良いとして、奈央子の不器用さはどうにかならないのか!
「顔に出てます、言いたいなら言って下さい、お止めしません」
あらら…ひねくれてぐれています。しょうがないのかな、あの素敵な先輩と付き合っているなら、自分の出来が浮き彫りになって惨めになるよねぇ…。
「付き合っている?素敵?…皆騙されている…章司先輩に騙されている…」
そう言いながら湯煎で溶かしたチョコをゆっくりかき混ぜている彼女はどんよりと暗い雰囲気で…。怖いよ、ちょっと。
「騙されているって、何が?」
「良いのっ、聞かないでっ。聞かれてあたしが答えたのが耳に入ったら…恐怖の尋問が待っているっ」
勢いよくかき混ぜながら、悲劇のヒロイン風だけれど…やり過ぎるとこぼしますよ、お嬢さん。
ピーッ
タイマーの音が聞こえてそちらに向かう。
「うん…これで良いか」
焼き加減もまあ良いでしょう。
「良いな…料理が上手いって…」
「奈央子はそれ以前の問題だから。不器用をなおさないと、血の味がする料理出しちゃうかもしれないよ?」
「うぅっ。でも3回しか指切っていない!」
「…普通はそんなに怪我しないんだよ?」
「うぅっ」
そんな事を言い合いながらお菓子を作っていく。奈央子もなんとか形になってほっとした様子。二人でお互い味見をして、ラッピングをしていく。
「…不器用って、どこまでも不器用なんだねぇ…」
「ひ、ひどいっ」
「はいはい、悪かったわね。でも遅くなっちゃったから、気を付けて帰りなよ?」
「うん、ありがとう。じゃあまた明日ね」
それでも満足したんだろう、嬉しそうに帰って行く彼女。無自覚なんだろうな、他人から見たら普通に彼氏彼女なんだけど。
「で、出来たのか?」
「うわ、びっくりした」
いつの間に背後に。不機嫌そうな表情に首を捻る。
「どうかした?」
「した。細川のために時間かけすぎ。何で俺が来ている時に別の奴の相手しているんだよ。俺の相手もしろ」
…聞いている側としてはなかなか恥ずかしい台詞です、はい。
「…じゃあ明日いっぱい側にいる」
「言ったな?覚悟しとけ、いっぱい使ってやる」
内心焦ったけれど…君の笑顔が嬉しいから、まあ良いか。




