poco a poco バレンタイン
三上:告白もどきをしました
それから:連絡先交換済、イベント時にも会ってるよ!でも平日はたまに話すだけ、土日も三上の部活で会ってないよ…。
浅井:返事らしい返事、してないね?
からの、バレンタインです。
久しぶりにこんな気持ちでこの日を迎えるなんて、全く思いもしなかった。
『じゃあ亮子ちゃんがあげたい人はあまり甘くないのが良いんだ』
「うん、そうみたい」
『そっか。それにしても亮子ちゃんにもついに彼氏が…見てみたい!今度会わせてね~』
電話越しの楽しそうな声が耳にくすぐったい。
「え…っと…」
どういうふうに答えたら良いのか分からなくて、思わずどもってしまう。顔に熱が集中したのが分かった。
『大丈夫!あたしも連れていくから。話元に戻すね?分量と材料、作り方はそんな感じだから』
そう言われると、見たことなかった。
「ありがとう。ごめんね、忙しいのに」
『全然問題ないよ~。お互いに頑張ろうねっ、じゃあね』
「うん、本当にありがとう。またね」
通話を切って従姉妹から教えてもらったレシピを見直す。本やネット、キットもこの時期は大量に出回るけれど。手作りをするのは久しぶりで、だから料理上手な彼女に聞いて。
あの日から奨君と喋る時間も一緒にいる機会も増えて。“自分空間”の間も気付くと彼の姿を探していて。
時々、苦しくなる時がある。時々、嬉しくなる時がある。いつもの自分じゃないみたいで、どう表現して良いか分からないけれど、こんな自分も嫌じゃない。
取り敢えず、もらってくれると良いなと思いながら、ラッピング材を買いに出掛けた。
今日は学校中がざわざわしている。どこかの駅ではチョコを配っていたみたい。皆に配っている子もいる。誰かを呼んで渡している子もいる。夕暮れの帰宅時になっても暖かく穏やかな空気が学校内を流れていて、自分も暖かい気持ちになりながらいつものように外を見ていた。
「…あ…まだ渡していない…」
中々いないと思う、作ったのに本気で渡すの忘れている子。教室に入り鞄から取り出して悩む。部活に行ったから、教室にも戻って来ないだろう。
「…どうしよう」
「…何が?」
声をかけられ振り向くと偶然にも彼が立っていた。良かったと安心し表情が緩んだが、彼は私の持っている物を見て顔を曇らせた。
「それ…あれ…?」
「あれ…?チョコだけど会えて良かった。渡せなくなるところだったもの、はい」
差し出したチョコ、驚く彼、嫌いなのかと首を捻った彼女。
「甘いの苦手って言っていたから甘さ控えめで作ったんだけど、チョコ自体嫌いだった?それなら持ち帰るから良いよ?」
「いや、そんな事ないっ。…俺にくれるんだよな?」
「そうだよ」
「…はぁ~、もらえないのかと思っていたから、焦った…。ありがとう。…あと提案なんだけど…一緒に帰らない?出来れば…今日からずっと」
「…うん、良いよ」
彼の顔が赤かったのも、自分の顔が赤かったのも、きっと気のせいじゃないから。




