andante お正月 美弥子side
今年の冬は雪が多くない。
「…つまらない」
「大雪地域の人に謝れ。俺にとっては嬉しいけど、お前また何かしそうだったし」
「来年受験生だから今のうちなのに、雪ウサギしか作れなかった」
「一個ですまないくせに」
「何よっ、可愛いじゃない雪ウサギ!」
「壁づたいにずーっとあるじゃねえかっ。怖いわっ。三つ重ねた物もあったしっ」
「親ウサギ子ウサギ孫ウサギだもんっ」
「早口言葉の回し者かお前はっ。しかも“もん”って…気持ち悪い」
「そういうこと言う?」
「ああ、言う」
でも毎年付き合ってくれる面倒見の良い君。今日はお正月最初の日、お参りに来たのは良いけれど。
「あー、はずれ」
「だな。他の所行こうぜ」
人、多い。多すぎる。この中に入って行くって…根性がいる。
「あー」
「何だよ」
「ちょっと感動しただけ、うん」
「訳が分からない」
奈央子があの有名な先輩に引っ張られ人混みに突っ込んでいくのが見えたような気がして。
「何だよ」
「自分が幸せ者だと思っただけ」
「正月ボケには早いんじゃねぇの。あー腹減った。何か食べようぜ」
他人のふり見て…じゃないけれど、あたしを引っ張って行くような君じゃなくて良かった。同じ位置から見て考えてくれる君で良かった。
「…でも何であたしの方が少ないのよっ」
「ダイエット宣言したのお前だろっ」
「こんな時に持ち出さないでよ!大体偶数個なのに6:4で分けるわけ!?」
「俺が金払っているんだから少し位良いだろっ?」
「せこいっ。男のくせにちっちゃいぞっ」
「女なんだから遠慮しろっ」
「男女差別反対っ」
「言い出したのお前だろうがっ」
たこ焼きの数でこんなに言い合いが出来る、昔からの慣れみたいなもの。本気と冗談の境界も分かるから、言いたいことどんどん言える。
「…無駄に疲れた。他に食べたいものあるか?」
「う~ん…お土産にりんご飴買うでしょ、他は…あ、大阪焼」
「参拝は」
「近くの神社に変更」
「それが妥当だな」
また一年が始まる。年が変わっても、あたし達の関係はこんな感じであって欲しい。




