andante 修哉side
彼らの地区は昔から大人数、マンモス学校設定。修哉君は教科書持ち帰る派、美弥子ちゃんは学校置き派。
「別だな」
「そうだね」
幼馴染だからって、すごい仲が良いわけでもない、悪いわけでもない。それなのにどうしてだろう、お前と話さないときが、一週間も続かないんだ。
家は五件違いで近い。当然幼稚園から一緒、クラスも小四までは一緒だった。それから高校に入るまで一緒だったことはない。逆に端と端のクラス、話す機会なんて何時あるのかという感じなのに。
「やべ、教科書無い。ちょっと借りてくる」
「また愛しの君の所?遠いのに偉いね」
「ばっか。アホ言っていないで問解けよ。今日当たるのお前だろ」
「げっ」
俺からあいつのクラスに行く時もあったし。
「修哉、修哉呼んでいる」
「…美弥子か」
「何よ、通りかかったから声かけてあげたのにさ」
「どうせ何か狙いあるんだろ」
「あ、ばれた?」
あいつが移動中に顔を出す時もあった。
「何時から付き合っているんだよ」
尋ねると二人共まず首を捻ると周囲から言われる。高校も学力とやりたい事で選んだらあいつと同じになっただけ。
「高校まで一緒なんて、熱いね」
と言われたら苛ついて言った相手に喧嘩腰になったり。
「どこが良いんだ」
冷やかし半分に聞かれても息が楽に出来る所としか言いようがない。あいつにとって俺がどういう存在か知らないが、俺にとっては酸素。ないと辛いし死ぬだろう。側にいないと嫌だと思うし、近くにいると落ち着くし嬉しい。
側に居られる存在になり得た事が嬉しい。
そう言ったら殴りやがった、グーで。今でも納得がいかない。
「大きくなったら何になりたい?」
大人が小さい子供に聞くときは何か裏があるように思えてならない。あいつは引っ掛からなかったが、言い過ぎていた気もする。
「えーとおー、お花屋さんケーキ屋さん、パン屋さんに小物屋さんと…」
延々続く思い付いたものの羅列。呆れたように笑った親達に、最後にあいつはこう言った。
「それとね、好きな人の隣に堂々と立てる素敵な人!」
「あら、美弥子は好きな人がいるの?」
「よく分からないけれど、隣に立っていたいのっ」
昔からあいつは少し変だ。
「修哉は?何になりたい?」
でも聞かれて答えた言葉は、お前の存在が俺の中に根付いていたからか。
「大切な人の隣で立って支える男の人」




