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RYTHEM  作者: 香坂皐月
12/23

poco a poco お正月 浅井side

 人混みはあまり好きじゃない。ぎゅーって押し潰されて場所も気持ちも小さくなるから。見ているのは、ちょっと楽しい。人の流れが時の流れ、のように見えるから。その人混みの中を、お正月元旦に、鳥居の前に向かっているのは。


「み…奨、君」

「あ、あけましておめでとう、亮子」

 二人で人混みの中にいるのは嫌じゃないからだろうか。


「おめでとうございます」

「何か改まった言い方って照れるな」

 そう言いながら差し出された手をじっと見てしまう。

「手袋しないの?今日まだ寒いよ」

 苦笑した彼は手袋をする。良かった、ちゃんと持っていた。


「じゃあ境内に入ろうか」

「うん」

 手袋をした手がポケットに入れられてしまったので、仕方なく彼の二の腕辺りの服を掴んで迷わないようにする。ちょっと強く掴みすぎたのか、掴まれた所を凝視する彼。

「強かった?掴む力」

「全く。そうじゃなくて、こっちの方が…いや、何でもない」

 視線があったので問いかけるとうっすらと顔が赤い。あたしの顔も熱い。寒さ予防の焚き火近くを通ったからだろう。


「やっぱり元旦は混むな」

「そうだね」

 右も左も人、人、人。前も後ろも人、人、人。押しくらまんじゅう状態で、体が温められる。

「年末は何していた?」

「あんまり変わらないかも。年越し蕎麦は食べたよ」

「俺の家は…そう言われると食べてないな」

 そんな事を喋りながら、人波にのってゆっくりと歩いていく。ふと視線を露店に向けると…。


「あれ…」

「何かあった?」

「…ううん、何でもないよ」

 声をかけられ視線を戻し、もう一回露店に戻す。確かに見たと思った従姉妹の美弥子ちゃんと、言い合っていた男子の姿は見えなくて首を横に振る。


「そうだ、亮子は初夢見た?」

「ううん、特には。奨、君は?」

 やっとお賽銭箱の前まで来た。お財布から五円玉を取り出して軽く投げる。


「見たよ」

「そうなんだ、どんな夢?」

 興味があったので聞いたのに、笑っているだけで教えてくれない。

「初夢も願い事も教えたら効果ないって言うだろ?だから…駄目」

 ならあたしも教えないで叶える努力をしていこう。そして今年も、宜しくお願いします。


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