レイには悪いことをしました
ちょいと遅れやした
お許しくだせぇ…
『タツト、話がある。こっちに来い』
「…はい」
自室のベッドでノーブルから借りた本を読んでいた俺をヴァスが何やらお怒りな様子で呼ぶ
俺何かやらかしたっけ?
何も心当たりがないんですけど…
『座れ』
相当ご立腹なのかいつもの優しさあふれる口調ではなくきつい命令口調だ
ひたすらに怖い
言われた通りに床に正座する
『…なぜ我が怒っているかわかるか?』
さっきから考えてるけど何も心当たりがないよぉ…
なんで怒ってるの…
とりあえず首を横に振ってわからないと意思表示する
『貴様の口は飾りか?それとも言葉も話せぬ幼子だったか?ん?』
「わかりません!」
ヴァスが怖い
体が震え涙が出てくる
でもそれを止めることは許されない
まるで蛇に睨まれた蛙のように体が動かない
『貴様、我が弟レイの告白の答えを先送りにしたらしいな?』
「…はい」
『あぁ、安心しろ。その事については怒っていない。気持ちの整理は大切だ。一時の感情で付き合ってもらったほうが怒りを覚える。我が怒っているのは、レイには答えを先送りにしておいてラグやルエ、アロの告白には答えているという点だ』
…あ
『その反応は思い出したらしいな。…はぁ、タツトがここまで屑だとは思ってなかった』
「ご、ごめんな「馬鹿者!我に謝ってどうする!謝る相手が違うだろう!」ひぅっ…」
そうだ、謝らなくちゃいけない相手はヴァスじゃない
レイだ
レイは優しいから僕がラグたちの告白に答えても何も言ってこなかった
僕はレイの優しさに甘えて、レイとの約束を忘れてしまった…
最低だ…
最低の屑だ
ヴァスに怒られても仕方ない
『温泉だ』
「…え?」
『レイは今、貴様に告白したあの温泉にいる。早く行って謝って、殴られて来い』
「…っ!?うん!行ってきます!」
窓を力任せに開け放ち≪飛翼≫で温泉目指して全速力で飛んだ
★ ☆ ★ ☆ ★
『まったく、あそこまで馬鹿者だとは思わなんだ』
『ま、まぁ、僕らにも非があるから…』
『そ、そうっすよ!だから、帰ってきたら許してあげてほしいっす!』
『ヴァス、頼む』
タツトが飛び出していった窓を眺めるヴァスにラグ、ルエ、アロが地に伏して懇願する
(…はぁ、惚れた弱みというやつか…。我も、こやつ等も甘くなったものだ)
ヴァスは溜息をつき呆れ顔で口を開く
『ならば、貴様らにもお説教だ。タツトたちが帰ってくるまで、みっちりな。それで勘弁してやろう』
『『『うっ…はい』』』
タツトとレイが帰るまでの間、三人の龍皇は正座でお説教を受けた
★ ☆ ★ ☆ ★
「はぁ…はぁ…やっと着いた…」
三度の休憩を経てようやくレイたちが作った温泉に到着した
こんなに遠かったっけ…?
いや、今はそんなことどうでもいい
「レイ…どこ…?」
温泉を見渡してみたがレイは見当たらない
レイ、どこ?
何処にいるの?
「レイ―!」
『タツトか。お前も入りに来たのか?』
「ホアっちょ!?」
後ろからレイが声をかける
あーびっくりした
「後ろから声かけないでよ!びっくりするじゃん!」
『スマンスマン。浸かり過ぎたのでな、そこで涼んでいたのだ。そうしたらタツトが飛んできたからな、脅かしてやろうかと思ったのだ』
くっそぅ…久しぶりにやられた…
ムカついたのでクックックと笑うレイの頬を指でつまみ横に引っ張る
…プフっ
「変な顔」
『そこも好きだろう?』
「…うん、好き」
俺が好きというとレイは悲しそうな顔をして俯く
そうだよ、遊びに来たんじゃない!
「レイ!」
『な、なんだ!?』
「ごめんなさい!」
地面を割るかという勢いで土下座する
おでこ痛いけど我慢!
『な、なんの謝罪だ?』
「俺がレイの告白を保留にしている間にラグたちと番になったことに対してです」
『あぁ、その事か』
…あれ?怒ってない?
むしろちょっとうれしそう?
『ようやく、恋仲としての好きになったのだろう?ならばそれでいい。吾輩は怒っていないから顔をあげてくれ。…あぁ、赤くなっているぞ。まったく…』
「ふきゅ!?」
そう言って俺のおでこをペロッと舐めた
擽った痛い…
『吾輩との約束を忘れていた罰だ。それくらい我慢しろ』
「…はーい」
『…それで?返事を聞かせてもらえるか?』
分かってるくせに…
「僕はレイが好き。家族としてはもちろん、恋愛感情としても大好きです」
『吾輩もだ、タツト。大好きだ、愛してる』
レイにハグされ口を塞がれる
柔らかく温かいレイの唇は何時まででも吸い付いていたくなる
『…』
「…!?」
レイが無理やり舌を入れてきた
レイは歯の裏や上顎を舐め、僕の舌と絡めてくる
不快感はない
むしろ痺れるような、ほわほわするような、とても気持ちのいい物だった
どれくらいたっただろうか、レイが口を離す
お互いの口から銀の糸が繋がり、艶めかしく光る
『スマン。我慢が出来なかった』
「いいよ。待たせたのは僕だから。いくらでも付き合うよ」
『…ならば、もう一度してもいいか?』
その答えとしてもう一度キスしてやった
『あぁ、幸せだ。夢なのではないかと思うほどに幸せだ』
抱き合いながら入っているとレイが上機嫌に呟く
幸せそうな顔をするレイも可愛いなぁ…
「本当に遅くなってごめんね?ヴァスに言われるまで忘れちゃってたんだ…。あとで殴ってくれていいからね」
『はっはっは。我が殴ったらお前など一発で死んでしまうぞ。だから…』
「あうっ!」
ピシッ!と言い音を立てておでこに衝撃が走る
おでこをさすりながらレイを見やるとどうやらデコピンをしたらしい
『これで勘弁してやる。だからこれ以上謝らなくていい。謝るくらいなら吾輩を撫でろ。接吻でもいいぞ?』
といってすり寄ってくる
本当にやさしい
今度はこの優しさに溺れないようにしないとね
「ありがとう、レイ」
『うむ』
俺はレイにキスした後レイの頭を優しく撫でた
帰ったらヴァスにもお礼を言わないとね
読み返して思ったんですよ
「あれ?レイとタツトってまだ付き合って無くね?」と
これはまずいぞとなりました
いやはや、自分の構成力がここまでないとは思ってもみませんでしたよ
レイ好きの皆さま申し訳ありませんでした!
あ、明日も上げる予定です




