ルエを泣かせました
『ここっす』
「いい眺めだな」
ルエに手を引かれながら森を抜け、小高い山を少し上った場所
少し開けたその場所からは星龍の住処を一望できる場所だった
『ここからの夕日が一番綺麗なんすよ。おいらのお気に入りの場所っす』
ルエは元の大きさに戻ると崖端に座り足をぶらぶらさせながら呟いた
俺はルエの隣に腰を下ろし同じように足を投げ出す
「俺もこの場所気に入ったよ。いい眺めだし、静かだし。連れてきたかった本当の場所ってここだろ?」
『ばれたっすか。そうっす、ここがタツトを連れてきたかった場所っす。…タツト』
ルエがこちらに向き直る
顔は朱に染まり少し緊張しているように見える
『タツト…おいら、タツトの事が好きっす。大好きっす。この気持ちだけはレイたちにも負けないっす。おいらとも、その…つ、番になってほしいっす!』
俺の両手を取り真剣に見つめるルエ
…いかん、大事な場面なのに吹き出しそうだ
どうしてもルエの真剣な顔は慣れないな
「ルエ」
『はいっす!』
「告白はうれしい。俺もルエと番になりたいよ。でも、今のルエとはなれない」
『ど、どうしてっすか!?』
予想していた答えと違ったためかルエが泣きそうな顔になる
「だってルエ、自分のことをレイたちより下に見てるでしょ?」
『そ、それは…』
さっきルエは「この気持ちだけはレイたちにも負けない」と言った
それはつまり他の部分はレイたちより劣っている、自分の方が格下だと言っているようなものだった
「ルエ。ルエはレイたちと同じ龍皇だ。そこに上下関係なんてないんだよ」
『でも、おいら弱いっす…』
「そんなこと言ったら俺の方が弱い。それにルエは魔法攻撃力に関してはレイやラグよりも高いんだよ?」
『え…?』
涙目のルエがこちらを見る
あーあー、かわいいお顔が酷いことに
空間収納内に入っているハンカチでルエの目元をぬぐってやる
「それにルエの占いには本当に助かってる。最近天気の事しか聞いてなかったけどそれでも百発百中だし、一度はその占いのおかげで町を未然に危機から救ったこともあった。これはルエだからできたことでレイたちにはできない。あと薬師だから薬の知識もすごい。ルエは俺たちの体の事を考えて薬を作ってくれているから体にも優しいしおかげですぐに病気が治る。いつも感謝してる」
『…』
「俺はルエがレイたちより劣っているなんて思ってない。ルエは、まだ自分は下だって思う?」
『………っす。思わないっす!うわあぁあああああああああん!』
小さくなったかと思うと俺の胸に飛びつき大声で泣き出した
俺はルエの頭に手を乗せて優しく撫でた
ルエが泣き止むころには夕日は沈み、空には月と星が輝いていた
「治まったかな?泣き虫さん」
『むー!おいら泣き虫じゃないっす!』
目が赤く充血しているがすっきりした顔だった
『タツト。おいら、弱かったっす。力じゃなく心が弱かったっす。レイやラグ、他のみんなもすごい、勝てないってずっと思ってたっす。でも、タツトなら、こんな弱いおいらでも愛してくれるって心の中で逃げてたっす…。でも、おいらもう逃げないっす。レイたちがすごいならおいらもすごくなってやるっす!だからタツト、傍でおいらを見ててほしいっす。もしまた逃げそうだったら怒ってほしいっす。そして、すごくなったおいらを見てほしいっす!』
相手がすごいなら自分もすごくなる…か
ルエも既にすごい奴だと俺は思う
だから
チュッ
『…タ、タツト?』
「ずっとそばで応援してる。ルエの番として」
『タ、タツト!』
「逃げようとしたら…そうだな、鱗10枚剥してその場所に唐辛子味噌を塗りこむからそのつもりでね?」
『飴と鞭の差が激しいっす!あとそれはやりすぎっす!おいら泣いちゃうっす!』
「やっぱり泣き虫ドラゴンじゃん」
『う―…、タツト意地悪っす!』
だってルエ、弄りがいがあるんだもん!
番になったから遠慮もいらないしね
その後、二人で夜空を少し見てから、もう一度キスをして家に帰った
ルエはアホの子に見えていろいろ考えている子って言うのを書きたかった…
可愛いルエが書きたかった!
泣いてるルエが書きたかった!
後悔はしていない!