撃退して町を出ました
「おうガキ。ちょっと俺と話をしようや」
髭面のいかにも悪そうなおっさんが話しかけてきた
あぁ…
やっぱり絡まれた
「僕なんかに何か用ですか?」
あ、やべ
めんどくせぇって感じに話しちゃった
「…おいクソガキ。Bランクになったからって調子乗ってんじゃねぇぞ!」
やっぱり怒っちゃったよ!
おわっ!殴りかかってきた!
紙一重でしゃがんでよける
パシッと乾いた音がした
上を見るとレイがおっさんの手を掴んでいた
『貴様、タツトを殴ったな?』
れ、レイさん?
当たってない!当たってないから!
奇跡的にかすってもいないから!
だからそのどす黒いオーラを消してください!
『レイ、こいつどういう殺す?』
ラグさーん!?
物騒すぎますよ!?
君もそのどす黒いオーラを消してください!
「あ…ああ…」
あ、白目向いて気絶しちゃった
うわぁ…失禁までしてる…
『チッ…雑魚が』
『こんな少ない殺気で気絶しちゃうなんて…』
おいおい、あれで少ないのかよ
僕でもわかるほど出てたぞ
何も感じなかったけど
いや、そうじゃない
「レイ!ラグ!そこまで!僕は大丈夫だから!その人離してあげて!」
『しかしだな、こいつはタツトを殴ったんだぞ!』
『そうだよ!万死に値する!』
どんだけだよ!
「当たってないから!かすりもしてないから!僕気にしてないから!だから離してあげて!」
『し、しかしだな!』
「早く!手が変な色してきてるから!」
なんだあの色!?
青紫色してるぞ!
大丈夫なのか?あれ
「レイ!」
『チッ…わかった』
やっとレイがおっさんの手を放した
うわぁ…
レイの手の形にへこんでる…
どんな強さで握ってたんだよ
『なんで…なんでこいつを許すの?何もしてないのに殴られたんだよ?』
「何回も言うけど当たってないからね。当たってたならまだしも当たってないのにやり返せないし、やり返したらこっちが悪くなる。それに今回は僕の態度も悪かったからね。おあいこってことで」
明らかにこちらがやりすぎてはいるが気にしない
だって殴ってきたんだからね
ていうかレイもラグも過保護すぎやしませんか?
過保護っていうのも違うんだけど
なんて言ったらいいんだろう…
言葉が見つからない…
『むー…タツト優しすぎ!そこがいいんだけどさ』
「ありがとう。えっと、この人のことお願いします」
「わ、わかりました…」
おっさんを近くにいた受付のお姉さんに任せてギルドを出た
「よし、明日町を出よう!」
『何故だ?まだこの街にいる予定ではなかったか?』
お風呂に入りながらレイたちに明日町を出るといった
理由としてはさっきの人が報復しに来るかもしれないからね
こういう時のカンって大体当たるからね
そのことをレイたちに言ったら笑われた
僕のカンってかなり当たるんだからな!
「ほら見ろ!当たった!」
『まさかだな』
『タツトすごい』
日が昇る前に宿を出て日の出とともに門を出たはずなのに門を出てすぐに包囲されてしまった
昨日のおっさんが前に出てきた
うわお
すっごい怒ってらっしゃる
顔が真っ赤
「昨日はよくもやってくれたな!てめぇら、このクソガキどもをぶっ殺せ!」
ぶっ殺せときましたか。
そっちがその気なら
「レイ、ラグ。昨日止めて悪かったね。やっちゃっていいよ。あ、殺さないでね?」
『『了解』』
そう言った瞬間2人から昨日のとは比べ物にならないくらいのどす黒いオーラが溢れてきた
本当に昨日のは少しだったのか…
うわ…鳥肌が少し立ってる
僕でこれなら周りの人たちは…
「・・・」
「う…ぁ…」
「ブクブク」
まさに阿鼻叫喚
顔の穴という穴から出るものすべて出てる
失禁してる人も続出してるし
これはひどい
そこでレイとラグが殺気を止めた
『…これでいいか?』
「完璧だよ。えっと…あ、いたいた。おい、おっさん」
「あ…あぁ…」
ありゃま
昨日と同じようになっちゃってるよ
ま、いい。とりあえず反応してるってことは聞こえてるよね
「今後俺たちに関わるな。次は命の保証はない」
「あ…あ…」
かろうじて首が縦に振られた
よし、一件落着
とっととこの場を去ろう
「レイ、ラグ。行くよ」
『う、うむ』
『わかったー』
僕たちはすぐにその場を去った
またおっさんたちに絡まれそうな気もするけどその時は…
いや、それは絡まれたときにしよう
『そういや、さっき自分のことを僕たちではなく俺たちと言っていたな』
『それ!とってもかっこよかった!』
「あ~、あの時は二度と絡まれないように強くいったほうがいいと思って俺って言ったんだよね」
『いいんじゃないか?これからも俺と言えばいい』
『いいねそれ!タツト!』
これからもっすか…
まぁ、レイとラグが言ってくれてるんだし
「わかったよ。これからは俺で行くよ」
2人の頭を撫でながらそう言ってやる
おーおー目を閉じていい笑顔しやがって
そんなに気持ちいいか
猫だったら絶対喉鳴ってるな
「さてと、では旅を再開しますか!グレスタイン帝国目指してしゅっぱーつ!」
『おー!』
『お、おー』
「…これ越えるの?」
『そうだ。行くぞ』
レイさんや
目の前には20メートルは離れているであろう谷
深さがどれほどかはわからないけど多分かなり深い
そして向こう岸まで伸びるつり橋
とても古いです
誰もこの道使ってないんじゃないか?
「別の道は…」
『近くにあるのはこの橋だけ。かなり戻らないとないよ』
マジっすか…
絶対落ちるよ?
あれ
絶対落ちるって
だって風吹いただけでギィギィ言ってるもん
あれはダメだって
「あれは渡れないと思うんだけど…」
『ん?確かにあれに乗ると落ちるな』
そんな軽く言うことじゃありませんよ!?
落ちたら死にますよ!?
『落ち着け。誰もあれで渡るとは言っていない。吾輩に乗って渡ればいい。幸いここは人があまり通らないからな』
それなら行ける!
グッドアイデアだよ!
では早速…
ふ、普段より怖かった…
なぜだろう
絶対に落ちないと分かっていても怖かった
下見るんじゃなかったよ…
『あれほど下を見るなと言ったではないか、バカ者が』
「いやだって、見るなって言われたら見たくなっちゃうっていうか…」
レイとラグに溜息を吐かれた
当たり前だよね
『はぁ…まったく、では行くぞ。明日はあの山を越えるつもりだからな。できるだけ近づいておくぞ』
「はーい」
見た感じ富士山よりも高い気がする山
雲より上に頂上があるらしい
山に黒い雲がかかってる
あれ上るんすか…
ハードっすね
『キビキビ行くぞ!』
レイとラグに手を引かれて黒雲のかかる山へと向かった




