2日目(2)
その日一日、俺は仕事にまったく集中できなかった。
家に帰った俺は、なぜかこの話を昨日の彼女に伝えなければと思い
着信履歴から未登録の番号の発信ボタンを押した。
夜遅くに迷惑だろうか、と思ったが電話の相手はすぐに出た。
「はい、横田ですが。」
なぜ昨日気づかなかったのだろう。
落ち着いて聞けばよく知った彼女の声だった。
「俺です。神崎 零です。」
そういうと彼女はまさか俺だとは思わなかったのか驚きながらも
昨日ぶりです、と返事をした。
冷静になって聞いてみると今までと何一つ変わっていない。
なのになぜ昨日はあんなに違って聞こえたのだろう。
「どうしたんですか。」
彼女はなかなか話し出さない俺に不思議そうに聞いた。
俺はまず謝らなければいけないと思った。
「ごめん。君が優花だって、すぐに気づいてあげられなくて。
そのうえ疑ってしまった。」
「そんなのすぐに信じられる人のほうがおかしいよ。」
彼女は笑いながらそういった。
「で、どうしたの?」
彼女は俺が話したい本題は別にあることに気がついていたようだ。
「今日、警察から電話が来て、事件性がないから捜査を打ち切る、って言われた。」
俺がそう伝えると彼女は少しの間の後に、そっか。と返事をした。
そして、こう続けた。
「けど本当に事故死だったのかな。」
「え?」
彼女の何かを疑っているような言葉に俺はすぐに反応した。
「今日の朝少しだけ思い出したことがあって、誰かに背中を押されたような気がしたんだよね。」
彼女はそう言ったあとに、気がしただけなんだけどね。と繰り返した。
本当に気がしただけなのか、事実なのかはわからないけど俺は彼女の言葉を信じたいと思った。
しかし、俺には彼女の言葉によって一つの疑問にぶつかった。
『優花は自殺していない?』