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Last Week  作者: 成瀬 瑠夏
1/5

1日目

 私、横田(よこた) 優花(ゆうか)は気が付くと真っ白な空間にいた。

世界のどこかにある空間なのか、天国なのか、地獄なのか。

生きているのか、死んでいるのか。

それすらわからなかった。


 彼女が不安を抱えながら周囲を見渡すと、見慣れた自分の鞄が1つ無造作に置いてあった。

すがる思いで中を探ると、ポーチ・財布・腕時計・携帯電話が入っていた。

彼女は携帯電話を見て思い立った。

『電話で誰かに連絡しよう。』

・・・彼女は携帯電話を開き、落胆した。


なぜなら、登録してあったはずの連絡先が何一つとして残っていなかったからだ。

どれだけ必死にデータの検索をしても出てくるのは【データがありません】の文字。

彼女は悲しみに暮れ、どうしたらいいのかわからなくなった。


 混乱している頭で彼女は財布の中に、ある一人の連絡先が入っていることを思い出した。

彼女はある名前と電話番号が印刷されている名刺を財布から取り出し、半ばあきらめながらも

震える指でやっとの思いで番号を打ち込んだ。

すると予想外なことに携帯電話から相手と自分を繋ぐ呼び出し音がした。

彼女は願いながら呼び出し音に耳をすませ続けた。


やがて呼び出し音がプツンと切れ、人間の声が聞こえた。

「はい、もしもし。神崎です。」

彼女は驚きと嬉しさのあまり沈黙してしまった。

電話から聞こえてくるのは、よく聞き慣れた優しくて温かい声だった。

「あの、どちらさまですか。」

沈黙に耐えきれなくなったのか、その声はこちらの様子を窺うような口調で続けた。

「優花です。」

そういった途端、電話の向こう側で何かが倒れる音がした。

無音だった空間に響いた音に彼女は肩をふるわせた。

そんな彼女に向かって電話の向こう側からは怒鳴り声が聞こえる。


「ふざけないでください!優花は先日亡くなったんです。

どこの誰だか知りませんが悪ふざけも大概にしてください。」

相手に気を遣いながらも、心底腹が立っているとわかる口調だった。

こんな彼の声を彼女は聞いたことがなかった。

しかしそれ以上に頭の中が真っ白になった。


『私が、死んだ?』


衝撃の事実に彼女の頭は自分でも気がつかないうちに思考を止めていた。

「あの、しっかりしてください。」

彼の声に彼女は意識を取り戻した。

「あの、私が死んだ、って本当なんですか。」

彼女が口にすると電話の向こう側が「まだ言いますか」と呆れた様子で言い、本当です。と続けた。


そして彼は彼女が『交差点にふいに飛び出して車に轢かれたらしい。』

という事故の状況を教えてくれた。しかし彼女はどこか腑に落ちなかった。

何がかはよくわからなかったが、何かが違うような気がした。

「もういいですか。」

そういって彼が電話を切ろうとしたので彼女は一気にまくし立てるように

自分が覚えている彼との思い出や自分のことを伝えた。

彼が自分のことを信じてくれるように。

するとわずかな時間が流れた後に電話がプツンと切れ、静寂が再び彼女を包んだ。

彼女はこの数分間で起こったたくさんの出来事に疲れ、横になるとすぐに睡魔に襲われた。




 夢のなかでも私はなにもない真っ白な空間にいた。

 私は夢のなかで出口を探して歩き続けた。






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