ニャー
本当はもっと「ムワァー」みたいな感じの汚い声で鳴くのだが、よく出会う猫がいる。尻尾だけ茶トラで他は白。尻尾も白ければおもしろいなんて言葉があるが、この猫は面白くない。オレを餌認定しているからだ。一度も餌をあげてないのにだ。
深夜徘徊の時には、オレは基本的にコンビニによる。職務質問避けのためだ。居間まで一度も職務質問はされたことはないのだが、念のため買い物袋をぶら下げていた方が、変な人に見られないだろうと思っている。
出会うのは、だいたいコンビニ袋をぶら下げている時で、自分の存在を知らせるように「ムワァー」と低く鳴きながら近づいてくるのだ。
垂直に尻尾を立てて、オレの右足に身体をなすりつけてくる。歩くのに邪魔になるので凄くうざったい。オレが止まらないと、今度は顔を擦り付けてくる。そして狭い靴の上に四足を無理やり乗せて、オレの顔を睨むように見上げる。そのままなにもないと、尻尾で二三回脛をびんたしてから去っていく。
買い物袋に手を入れた時だけオクターブ高く「ニャー」と鳴くのだ。気に食わない。「後ひと押しすればなにくれるだろう」的な浅い魂胆が見える。これが面白く無い。最初からかわいこぶって鳴くのなら、オレも良い人ぶって「ないしょだよ」なんて言いながらこっそり餌をあげていたかもしれない。
あなただけに懐いてますよーって雰囲気を出すなら最後まで貫いて欲しい。ぜひ進化の過程で、習性に入れておいて欲しい。喉を鳴らしたり、猫の集会を開いたり、狭いところが好きだったり、よくわからない習性があるのだから、猫をかぶり通すも習性に入ってていいだろう。
基本的にオレは動物に話しかけることが出来ない。なにが恥ずかしいってあの赤ちゃん言葉だ。別に人がやってるのは気にならないが、自分でやるのはダメだ。小学生の頃に漏らした時よりも、激しい羞恥心に襲われる。
そんなわけで赤ちゃん言葉は無理だが、一度だけ「にゃーん」と話しかけてみたことがある。結果「ヴャ」と聞いたこと無い鳴き声を返された。それ以来一度も猫に言葉を掛けていない。