表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深夜徘徊は怪  作者: ふん
4/9

深夜徘徊には仲間がいる


『仲間』と言っても、一緒に深夜徘徊をするわけではない。顔見知りと呼んでもいいのか悩むような関係だ。

 話したり、会釈をするわけでもなく、彼が深夜にタバコを吸っている姿を時々見かけるだけ。

 意識して存在を確かめるようになったのは2年位前からだろうか。火種から流れ出る紫煙が、夜空に溶けるように消えていくのを眺めるのが好きなようだ。彼の視線が灰皿でもなく、街の風景でもなく、いつも空を見上げていることから、オレは勝手にそう思っている。

 なぜ仲間なのかというと、1回会えばその日は彼と何回も会うからだ。

 まずはマンション近くのコンビニ。大抵はここでその日のファーストコンタクトだ。そこから24時間のスーパー、コインランドリー、別のコンビニ数カ所、それに公園。

 おそらくだが、彼はタバコを吸うスペースを探してウロウロしているのだろう。家族に煙たがられてたまらず外に出ているのか、煙自体が禁止で外で吸わされてるのか、実は国家機密の報部員のエージェントでなにかを見張っているのか。なんて妄想を膨らませる。

 深夜徘徊をしてる時は、幼稚な妄想なほど面白い。もし、何かの手違いでオレが対象になっていたらどうしようとか、実はオレもエージェントで彼の動向を伺っているとか、いつか映画で見たようなストーリーが頭の中で勝手に出来上がっている。

 どこか寝る前の妄想と似ている。基本的に寝る前の妄想には終わりがない。勝手に都合の良いように話が展開しているので、話の進みも早いが、その分物語が壮大になるので寝付くまでいつまでも妄想が続いている。

 深夜徘徊中の妄想もそうだ。勝手に物語は壮大になるし、もし妄想に行き詰まっても、セーブ&ロード機能のように都合の良い所からまた妄想を始めるので、家に帰るまでに妄想が終わった試しがない。

 ちなみにタバコを吸っている彼は、オレの妄想の中では、大抵『エージェント』か『土地神様』として出演してもらっている。彼が土地神様の時の決まり文句は「神様を交代してみないかい?」だ。そこからいくつも枝分かれして、オレが土地神様になったり、街の難事件を解決したり、神隠しにあったりと、様々な妄想を膨らませている。

 さらにそこからも枝分かれしていくので、妄想は止まらない。

 例えばオレが土地神様になったとしてやることは、一人の少年の前に姿を現してドタバタコメディを演じる。または、別の土地神様とバトルが始まる。男としてはお決まりの神様特権を活かしてのエロい展開。

 基本的には都合の良い妄想をしているわけだから良いとこどりをしたいので、小さい山場がいくつも迎える。ある程度盛り上がってきたし、欲求を満たす大きな展開を迎えるにはどうしようと考えだすと、知らず知らずのうちに足が早くなり家に付いてしまう。

 かと言って、寝る前にその妄想の続きを妄想するのかというと、そうではない。歩いているの時の妄想と、寝る前の妄想の質が違うからだ。

 歩いている時は、どんなに矛盾していても一つ一つ段階を踏んで山場まで妄想を膨らませる。それに対し寝る前の妄想は、早送り機能が付いているのだ。いきなり『ラスボス前』からの妄想も始めることが出来る。寝る前の妄想は、とにかく気持ちよく眠りに入ることが大事なので、歩いている時の暇つぶしの妄想ではない。先に『質が違う』と書いたが、寝る前の妄想はものすごく質が低い。シーン回想だけを見ているようなものだからだ。

 歩いている時の幼稚な妄想よりも質の低い寝る前の妄想の中身を知り合いに知られたら、間違いなくオレは姿をくらます。

 それだけ、しょうもなく恥ずかしい妄想をしているからだ。



 タバコを吸っている彼は、オレを見かけた時はどんな妄想を膨らませているのだろう。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ