03
くるくる、くるくる…回りながら落ちていくような、そんな感覚の後私はいつのまにか赤ん坊として生まれていた。
転生した後、私は父と三人の姉に大変可愛がられながら育てられ幸せいっぱいで成長した。ただ一つを除いて。
「ロキ様~、大変ですっ!人間どもが遂に魔王討伐なんて言い始めました」
「つぶせ。虫けらなんぞつぶしてしまえ。」
そう、父は魔界の王だったのです。
どうやら私は異世界に転生したらしく、この世界にはファンタジーよろしく。魔界と人間界、魔族と人間が存在しています。父は魔族の
王。もちろん私も魔族。パッと見は人間に近いけれど背中には漆黒の羽がある。
最初は困惑したし、嫌だった。何故物語でいう悪い方に生まれてしまったんだろう…でも、そんなことも忘れてしまうほど父も姉も私を
すごくすごくかわいがってくれた。
だから私は父にあまりひどいことをしないでほしいことを訴え続けた。
父にも立場や考えがあったと思う、適当に私をあしらい適当に人間界にちょっかいを出していた。
そうして時は過ぎ、私が19歳になりしばらく経ったある日のこと。
玉座の間に呼ばれた私はいつもと同じように大きく重圧感のある扉を開いた。
「お呼びでしょうか?お父様…」
玉座の間には父ともう一人悪魔がいた。
「よぉ、ガキんちょ。」
「トール…」
線の細い見た目の悪魔。父の義理の弟であるトールは私を見て意地悪そうに笑った。
「もう19歳なんですけど…」
「オレ何歳だとおもってんのさ。それにガキんちょは歳じゃなくて見た目だ、み・た・め」
「う…」
悪魔に年齢という概念はない。生まれた時から死ぬま見た目は基本的には変わらない。
人間なんて赤ん坊から年寄りまであるのに。不公平だ。
「…そんでロキよ。なんの用だよいきなり呼び出して。」
「あぁ。お前ら…契りを交わせ。」
「「は?」」
玉座の間に沈黙が広がる。父が何を言ったのか整理をするのに時間がかかりそうだ。
契りとはこの世界での結婚を表す。
つまり父はトールと結婚しろと言っているのだ。理解はできたがなぜ今言われたのかわからない。
「…ロキよぉ。何考えてる?」
「ふん。お前もわかってるだろう。人間どもの最近の動きを。」
「あぁ、魔王討伐に熱を上げてるらしいじゃないか。それがどうかしたか?」
私はそこまで聞いて玉座の間から逃げ出した。
頭では分かっている。父が理不尽なことはしない…あの人たちとは違う。違うんだ。
わかっているのに、何故私の気持ちを無視して結婚の話を持ち出してきたのだろう…
そこまで考えて私はどうでもよくなってしまった。
そして私は、異界の門がある部屋まで来た。
部屋の中央には仰々しいほどの装飾が施されている。人間界に行く悪魔はここを通るか自分の魔力を使ってゲートを作らなくてはいけな
い。私は何も考えることなく扉を開けた。
瞬間中へ引きずり込まれた。
扉の中には闇が広がっていた。
絶え間なく強い風が吹き身体から体温が奪われていく。
ここでやっと小さい頃に父に言われたことを思い出した。
―魔力が弱すぎると人間界にたどり着く前に消えてしまう。だからお前は人間界に行くんじゃないぞ。
そう私の頭をなでながら言った父は優しい顔をしていた。