02
歩道橋から落ちた私が目覚めた場所は、草原の真ん中だった。
「なに…これ」
ただの草原じゃないことは一目でわかった。早朝のように空は白みあたりは明るいのに、草原いっぱいに蛍のような光がふよふよと飛ん
でいた。でも蛍にはない赤や青の光をしているのもあった。それにどんなに目を凝らしても蛍の体が見えない。
「ここは命が集う場所」
背後から声がして振り向くと、そこには白い布を金で縁取った衣装をまとった少年…いや青年がいた。青年が私に目を合わすとニコリと
笑った。笑った青年の顔はとてもこの世のものとは思えないほど、キレイで儚いと思った。
「君には謝らなくてはいけない。君はまだ死ぬ定めではなかった」
「え?」
私と青年の間を風が吹き抜けた。光は風に流されて今は私たちのすぐそばには光は一つもなかった。
「もっと、人生を楽しんで欲しかった。もっと、愛を知ってほしかった。」
―愛?
その瞬間胸が締め付けられるように苦しくなり、私は立っていられなくなった。
青年は苦しそうな顔をしていたけれど、私は何も言うことが出来なかった。
「君の魂はそのまま、転生させよう…アイツなら。君を…」
愛してくれるはずだから
最後の言葉が聞こえないまま私はそのまま意識を失った。青年は優しく微笑んでいたと思う。
―お願いだから笑って
私じゃない誰かの声が聞こえた気がした。