10年前に考えた魔法の詠唱で精神的ダメージを受けた
〜王都ハワプール 近辺の平原〜
「さて、火燐。邪神官の居場所は覚えているか?」
ここで、目的地について切り出した。
酒場で話していたら・・・
「英雄†漆黒の騎士†凍夜†様と§紅蓮の魔術師§火燐§様ですよね!」
と声をかけられまくり、たまらず王都の外に逃げたのだ。
「何処って、『魔王城』でしょ?」
「それで、『魔王城』には『邪なる結界』が貼られていて・・・」
「そうそう、『封印武器』を使わないと結界が破れないんだよな!」
・・・
・・・二人とも頭を抱える羽目になった。
「今更ながら、ベタな展開だな・・・」
「そして、お前は忘れている。」
「『魔王城』に居るのは最後の1人だ・・・」
「そうだっけ? あ、じゃあ残りの4人は何処にいるんだっけ?」
「・・・ちょっとワールドマップを思い浮かべてくれ。」
ワールドマップを開くと考えると、ワールドマップが目の前に現れる。
「便利よねー考えるだけでいいんだから」
「・・・『魔王城』がここだ。」
俺は世界の中心の島を指す。
そこから、点在する『遺跡』、『塔』、『洞窟』、『古城』を線で繋ぐ。
「・・・ああ、思い出した!」
「たしか、この形が『魔王復活の儀式』の為の『魔法陣』になってるのよね!」
・・・
・・・またも精神的ダメージを受ける。
「昔はこれを大真面目に考えてたんだよな・・・」
「若気の至りね・・・」
其れは兎も角。
「最初の目的地は、一番近い『遺跡』だ。」
「その後は『塔』、『洞窟』、『城』、二つの『封印武器』を手に入れたのち、『邪なる結界』を破り『魔王城』だ」
「おっけ。早速『遺跡』近くまで魔法で移動しましょ。」
「まあ、待て」
「お前、戦闘はしたか?」
「まだだけど・・・」
「ほら、このゲーム『平原』に敵は、ほとんど出ないじゃない」
「いくらLVがカンストでも、慣れない戦闘がいきなりボス戦ってのもな・・・」
「なるほどね。」
「じゃあ、その辺の森でもうろついて、MOBを狩りましょ」
という訳で、俺達は近くの森に入ってみた。
この辺りはそれ程強いMOBがいる訳じゃないので練習にはちょうど良い。
・・・
・・・暫くすると、ゴブリンの群れに遭遇した。
ゴブリンの攻撃力は低く、俺達にダメージを与えることができない。
俺が『漆黒の大剣』をひと薙ぎすると、前衛のゴブリンが一撃で黒い霧になって消えた。
「中学校の頃、剣道部でもないのに木刀を振っていたのが役に立つとはな・・・」
「・・・それ、十分に黒歴史よ?」
「・・・ファイア!」
火燐は一番弱い魔法の『ファイア』を唱える。
・・・しかし発動しない。
「あ・・・れ・・・?」
「アイス! サンダー! ブラックサンダー!」
・・・最後のはお菓子だ。
そこで、火燐は何かに気が付いたようだった。
「え、え〜と・・・」
「炎よ敵を焼き尽くせ! ファイア!!」
今度はちゃんと発動し、ゴブリンを焼き払う。
「氷よ敵を凍てつかせよ! アイス!!」
「雷よ敵を貫け! サンダー!!」
その攻撃で、ゴブリンの群れは全滅した。
あ、森が燃えてる。
火燐が必死にアイスで消していた。
「・・・つまり、どういう事だったんだ?」
「なんか、魔法の前にいろいろ叫んでたろ?」
「ちょっと・・・ソレに突っ込むわけ?」
・・・
・・・
しばしの沈黙ののち・・・
「わ、私が魔法の詠唱を考えて、黒歴史のノートに書いてたのよ!!」
うん、実は知ってた。
つまり、何かしらの設定を考えてあると、その通りにしないといけない訳だ。
実は俺もスキルに同じようなセリフを考えてあった。
・・・できるだけ通常攻撃で押し切る事にした。
「まあ、ボスと戦う前で良かったな。」
「・・・そういう事にしておく。」
「それじゃあ、早速転移の魔法を頼む。」
「・・・・きしゃーーーーー!!」
あ、火燐が壊れた。
どうやら高度な魔法ほど詠唱が長いらしい。
転移の魔法は高LVの魔術師しか使えない高度な魔法だ。
ちなみに火燐は、回復系なども含み全ての魔法が使える。
もし、全部の詠唱を覚えてたら・・・尊敬するぞ・・・妹よ・・・
火燐が落ち着いた後、転移の魔法で移動する。
とは言っても、移動できるのは近くの町までである。
転移の魔法は、一度行った場所にしか行けないからだ。
『遺跡』は俺達が考えたダンジョンなので、実際のゲームに無い=行った事が無いのだ。
何はともあれ、今日は日も暮れてきたので宿屋で休むことにする。
「ところで火燐。お金いくら持ってる?」
「・・・カンストに決まってるじゃない?」
「俺もだ。」
有り余る資金。
しかしも武器防具は廃装備。
回復薬の類も『なぜか質量が無効化される袋』に最大数入っている。
正に使い道が無い。
いっそ寄付でもするかと考えたが、
『贈 †漆黒の騎士†凍夜† 様』
とか書かれたら嫌なのでやめた。
せめて部屋はと・・・
「一番いい部屋を頼む。」
と言ってやった。
翌日。
『遺跡』に向かう。
歩いたら大体2日は掛る距離だが、
火燐の召喚魔法で呼びだした召喚獣『グリフォン』で移動すれば2時間と掛らなかった。
乗り心地はあまりいいものではなかったが・・・
「さて、『遺跡』に到着ね。」
「『遺跡』の中では、強力な魔法は使えないから・・・」
「強力なスキルを頼むわね。」
「凍夜お・に・い・ちゃ・ん♪」
・・・
・・・
コイツ、俺のスキルの事を覚えていやがる・・・
ボス戦において、俺は多大なる精神的ダメージを負うことは確定した・・・




