10年前に考えた名前で精神的ダメージを受けた
目が覚めると、俺はゲームの世界にいた。
こんなシチュエーションは、昨今のアニメや漫画、小説ではよくある事である。
しかも、廃プレイをして極めたオンラインゲームに、そのステータスを引き継いでなんて”お約束”だ。
そんな”お約束”な召喚?転生?・・・
まあ、分からないが、自分自身がその立場になるとは普通は思わない。
いや・・・ちょっとは主人公になりきって考えたことがあったかもしれない。
そんな”お約束”で俺は此処にいる。
『ファイナルクエスト・オンライン』
このゲーム自体は、10年も前のゲームである。
当時は、こだわり過ぎのキャラクタークリエイトやアバターアイテムで華やかだが、
マゾすぎるレベリング、レアドロップ・・・で、ある意味一世風靡した。
俺は、数人しか到達しなかったと言われる最大LV200に到達した数少ない一人だった。
そう、それこそ当時は夢出る程やりこんだ・・・
夢?
「そうか、これは夢か!」
俺の最後の記憶も、
『家で寝た。』
である。
「夢なら楽しもう!」
とりあえず、そういう事にした。
「まずはステータスと所持品を確認しておくか・・・」
LV200・・・
職業:ダークナイト・・・
装備:漆黒の大剣+99、漆黒の鎧+99、闇のマント+99・・・
どうやら、最後にログアウトした通り・・・
・・・あ。
名前 †漆黒の騎士†凍夜†
黒歴史を見た。
・・・10年前といえば、厨二をこじらせていた頃だ。
故にこの名前・・・
あの頃は、ノートにキャラの設定とか、書いていた気がする。
よし、起きよう。
この名前で呼ばれたら、いろいろとダメージを受けそうだ。
・・・思ったが起きられない。
まあ、考えてみたら、ゲーム内フレンドにでも会わなければ呼ばれる事もないだろう。
とりあえず、現在地は・・・
・・・考えるだけで、いろいろ分かるのは便利だな。
まあ、ゲームパッドやキーボードなんて無いし、夢だし、ご都合主義ってヤツだな。
現在地は、『王都ハワプール近辺の平原』と分かった。
当時、拠点にしていた場所の近くである。
とりあえず、ハワプールに向かう事にする。
・・・勿論考えただけで、行き方も分かった。
30分程歩くと、城門に到着する。
城門をくぐり、城下に入ろうとすると兵士に呼び止められた。
「今は、魔物が増えているゆえ、一応チェックをしている。」
「それゆえ、名前と出身、王都へ来た目的を聞く事になっている。」
くっ
名前を言え・・・だ・・・とっ・・・!?
「どうした? 名乗れぬのか?」
「その騎士の甲冑は飾りか!?」
覚悟を決めて名乗るしかないか・・・
そう思った矢先、もう一人の兵士がやってきた。
「ま、まて、その御方は・・・」
「もしや、†漆黒の騎士†凍夜†様ではありませんか?」
ぶっ!
盛大に吹き出してしまった。
「あ、ああ・・・そう・・・だ・・・」
これだけで、HPがゴッソリ減った気がする。
「あの伝説の†漆黒の騎士†凍夜†様が来てくれたぞ!」
「早速、王にお知らせするのだ!」
一人の兵士はあわてて城の方に向かっていった。
「失礼しました。」
「まさか、あの伝説の†漆黒の騎士†凍夜†様が御出でになるとは思いもしませんでしたので・・・」
「早速城に向かい、王とお会いになって下さい。」
気が付くと、城で王に会うことになっていた。
精神的ダメージを大分受けながらも、城へ向かうことにした。
城にたどり着くと、やはり同じようなダメージを受ける羽目になったが、
何とか謁見の間へとたどり着く。
「おお、よく来てくれた! 英雄†漆黒の騎士†凍夜†よ!」
「お主達が世界を救ってから10年、しかしまた新たな脅威が生まれようとしているのだ。」
「・・・魔王ルーファスの復活を企む、邪神官達の事ですね?」
俺はこの展開を知っている。
昔、このゲームが好き過ぎてその後の話を黒歴史のノートに書いた。
「おお、流石は†漆黒の騎士†凍夜†じゃ!」
「既にそのたくらみに気が付いていたという訳か・・・」
「その邪神官達は・・・」
邪神官は5人。
そいつ等を倒すと魔王ルーファスが復活する。
そもそも邪神官はルーファスの生贄なのだ。
つまり、倒したら魔王復活。
倒さないと邪神官による世界の混乱。
そんな設定だ。
ここまで設定どおりだと、次に来るのは・・・
「おお、もう一人の英雄§紅蓮の魔術師§火燐§も到着したとの事じゃ!」
やはり・・・
火燐と言うのは、同時期に厨二をわずらっていた妹のキャラだ。
俺の設定では、二人で邪神官を倒す旅に出るのである。
程なくして、火燐が通される。
「おお、よく来てくれた§紅蓮の魔術師§火燐§よ!」
・・・火燐も精神的ダメージを受けていた。
とりあえず王様の話は流して、邪神官を倒す旅に出ると告げ城を後にした。
適当な酒場に入り、今後の予定・・・
(と言っても、設定はある程度覚えているのでその通りに行けばいいのだが)
を話そうと切り出した時だった。
「まったくなんなのよ、ここは!」
「昔やってたゲームの世界で、しかも・・・名前・・・」
火燐はまるで、現実世界からここに来たような口ぶりをしていた。
「ちょっとまて、火燐」
「お前、本物の妹の○○○なのか?」
「何で夢の世界のNPC?が私の本名知ってるのよ!」
「・・・え?」
「だってここ俺の夢だろ!?」
「だってここ私の夢だろ!?」
「え?」
「え?」
・・・
・・・OKOK。
整理しよう。
ここは『ファイナルクエスト・オンライン』の世界っぽい。
どうやら、昔考えた俺の設定どおりの後日談だ。
なんだ、やっぱり俺の夢じゃねーか。
「なんだ、やっぱり俺の夢じゃねーか。」
「なんだ、やっぱり私の夢じゃない。」
・・・
・・・
「この話、俺の考えた後日談の設定どうりなんだが?」
「この話、私の考えた後日談の設定どうりなんだけど?」
・・・そういえば、妹と一緒に考えた気がしてきた。
「OK。分かった。」
「俺の記憶も曖昧だが、二人で後日談をノートに書いた気がしないでもない。」
「・・・私もそんな気がしてきた。」
「そこで、たまたま二人で同じ夢を見た。」
「このゲームの後日談の設定どおりの夢だ。」
「無理がなくない?」
「知らん。それ以外に何がある?」
「まぢでゲームの世界に来ちゃったとか?」
「ほら、確か・・・」
現実の世界からゲームの世界に召喚されて、ゲームの世界のキャラで世界を救う。
「とかって設定じゃなかったかなーって」
「火燐。お互いに覚えてる設定を全てあげるぞ!」
〜ファイナルクエスト・オンラインの後日談〜
世界を救った英雄†漆黒の騎士†凍夜†と§紅蓮の魔術師§火燐§は現実世界へと帰った。
しかし、10年後に5人の邪神官が魔王ルーファスを復活させようと企み世界は混乱する。
再びファイナルクエスト・オンラインの世界に戻った2人は邪神官を倒す旅に出る。
5人の邪神官を倒した2人だったが、それは罠だった。
邪神官こそが魔王ルーファスを復活させる生贄だったのだ。
苦戦の末、魔王ルーファスを倒した2人は現実世界に戻るのであった。
・・・つまりだ。
「設定通りだとすると、魔王ルーファスを倒せば現実世界に戻れるって訳だな。」
「夢でも何でもいいけど、さっさと終わらせましょう・・・」
「はあ・・・そうだな・・・」
こうして、自分たちで考えた厨二設定のゲームを、
10年越しに精神的ダメージを受けながらプレイする旅は始まった。
・・・
・・・
「あ、そういえば封印武器とかって設定もあった気がする・・・」
・・・
・・・
・・・




