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届けたい音  作者: 夜の桜
8/8

二重奏

二時五分前…


響と奏は、ステージ裏にいた。


太一が響達を見たときはホントに驚いていたが、運営に事情を話し、


「頑張れよ!」


響と奏の事を詳しく聞くこともせず、二人の背を押した。




「お二人とも、準備お願いします〜!」


運営が響と奏に声をかける。


二人は顔を見合わせ、頷く。


(音合わせとかはしてない…でも、奏なら…)


(正直、自信はないけど…響君ならきっと…)


同じような過去を持ち、同じような理由で音楽を続けた二人…


「では、次は【ワールド・ウインド】さんの予定でしたが、事情により、急遽変更で二人組のデュエットになります〜!それでは…どうぞー!」


二人が呼ばれ、二人は出した答えの音を奏で、響かせるためステージに立った。


二人が選んだ曲はたった一曲…


〜〜♪〜♪


ステージに立ち、二人は会釈だけし、何も伝えることなく、響のキーボードが音を奏でる。


誰もが聞いたことがあり、この場には相応しいとは思えない曲の音…


「今〜♪わたしの〜♪」


『翼をください』…明らかにこの場で使う曲ではないため、観客も唖然とし、場は静まり返る。


「願い事は〜♪」


〜〜♪


奏の歌と響のキーボードだけが運動公園に響き渡る。


「えっ…奏?」


美里がステージを見て、唖然とする。


「始めて組むって言ってたが、これをここでやるか〜」


太一が乾いた笑みを浮かべる。


それでも、二人は静かに、しかし、力強く奏で、響かせる。


「この大空に♪翼を広げ♪飛んでいきたいの〜♪」


♪〜♪〜


(響君、君も見つけたんだね!誰かに届けるための音を…)


キーボードを弾きながら、響はあの女性の声を聞いた気がした。


(そうですね…一人じゃ見付けられなかったですけど、これが俺の…)




(やっと、君らしい歌が聞けたよ!)


奏は歌いながら、聞いていた。


あの男の子の声を…


(一時はどうなるかと、思ったけど、もう大丈夫だね!)


(うん…やっと、分かったよ!君の言葉が…これがわたしの…)




((届けたい音だよ♪))




「〜♪」


〜♪


たった一曲…それも、『翼をください』というありふれていて、この場では場違いな曲…


それでも、二人は終わったあと笑顔で頭を下げた。


そこで、静寂だった観客から、


パチパチパチ…


最初はわずかに…しかし、それは徐々に大きく広がり、


パチパチパチ!!


大きな拍手となり、二人に届いた。


「あんな、歌と音を聞いたら場違いだろうと、みんな聞きいっちまう…」


太一が拍手を送りながら、呆れたように呟く。


「奏〜!すごい、響いたよ〜!」


美里が少し泣きながら、笑顔で声援を送る。


拍手と声援を浴びながら、響と奏はステージから下がった。


「ぐす…非常に心に響く演奏でした!…それでは、この調子で次いきましょう!次は〜」




「なんか…すっきりしたな…」


「うん…」


響達はステージを離れ、ステージからの演奏を遠くに聞きながら、芝生で横になっていた。


「ステージで弾いてるとき…あの女性ひとの声を聞いた…気のせいかも知れないけど、それを聞いて俺は分かった気がするよ…」


「わたしもね…あの子の声を聞いたんだ…」


ステージからの音だけが、二人の周りにある。


「きっと、音楽を続けたのは…あの女性に音を届けたかったんだと思う…」


「わたしも、また歌を始めたのは、あの子に歌を届けたかったんだと思う…」


「なぁ…もし、奏さえ良ければ、これからも二人で二重奏デュエットしないか?」


「……うん…わたしもそうしたいなって、思ってた…」


「「もう一人、届けたい人ができたから!」」


響と奏は、顔を見合わせ笑い合う。




二人の音と歌が、今日も奏で合い、響き渡っていた。






〜fin♪


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