間奏
響と奏が出会ってから、二日後……
「響って、なんで音楽やってんだ?」
太一と昼食を食べていた、響に太一が聞く。
「んぁ……特に意味はねぇよ…」
ラーメンを啜りながら、響は素っ気なく答える。
「そうかぁ?お前のキーボードって、すげぇけどたまにすげぇ寂しい音させてるからよ〜」
(さすがに太一は気付くか…でも…)
響は内心で驚き、感心しつつも、
「そう聞こえただけだ!意味なんかねぇよ!それより、今週末のライヴに向けて、どうなんだよ?」
誤魔化す様に話を切り替える。
「おー!もちろん、みんな良い感じで仕上がってきてるぜ!お前も絶対見に来い!そして、うちの【W・W】に入れ!」
太一が楽しそうに、切り替わった話題に食い付く。
「見には行ってやるが、入らねぇよ!」
響はきっぱりと加入を拒否する。
「ちっ!そこは、勢いで「はい!」って、言っておけよ!」
太一が舌打ちして、ラーメンのスープをすする。
(そういえば、奏さんは楽器持ってなかったな…)
ふと、響は数日前に出会った奏の事を思い出していた。
(響さんのキーボード…上手かったけど、どこか寂しそうに聞こえたな……)
奏は響のキーボードの音を思い出し、そんなことを考えていた。
「何を考えているのかな?」
ケーキを頬張りながら、美里はボーッとしている奏に聞く。
「ん…何でもない。それより、美里〜!頬張りながら、喋るの行儀悪いよ!」
奏は頭を切り替え、めっと美里をつつく。
「む…ゴクン……だって、奏がどっか遠くを見てたから〜」
美里が言い分けする。
「だってじゃないの!もう!ちょっと、考え事をしてただけ」
「まさか…男!?奏はあたしを見捨てるのね!」
「ちょっと〜!なんで、そうなるのよ!」
「むむ…その必死の様子…もしかして、ホントに……!」
「ち・が・い・ま・す!…ただ、ちょっと気になる音があっただけだよ!」
奏がむくれて、ケーキを頬張る。
「へぇ…奏が気になる音があるって珍しいね〜!どんな音?」
美里が再び、ケーキを食べながら、訊ねる。
「ん〜…ちょっと、寂しい音………それより、次のケーキ取りに行こ!」
それだけ告げて、奏は話を逸らした。