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届けたい音  作者: 夜の桜
3/8

交錯

(もう少し弾いてくか…)


太一が去ってから、十数分そのまま座っていた響が立ち上がり、キーボードの前に行く。


♪〜〜〜♪〜〜…


再び、スタジオにキーボードの音が鳴り響く。




「今なら2-bスタジオが空いてるよ」


奏は受付の金髪の老人から、鍵を受け取り、通い慣れたスタジオの廊下を歩く。


〜♪〜〜〜♪〜


その途中で音が聞こえ、奏は歩みを止める。


奏が周りを見回すと、僅かに隙間が空いた扉を見つける。


その音に惹かれるまま、奏はその扉に向かった。




〜♪〜♪〜〜


ふと、キーボードを弾きながら、響は視線を感じ、扉の方に目線を向ける。


そこには、響と同じくらいの年のポニーテールの女子が立っていた。


その女子は響の視線に気づき、慌てたような表情を作る。


「あんたは…?」


響はキーボードを弾く手を止め、ポニーテールの女子…奏に訊ねる。


「あっ…す……すみません!ちょっと、扉が開いてて、惹かれる音だったので、つい……」


あたふたしながら、奏が事情を説明する。


「あぁ…太一が出たときに閉まってなかったか……すまない!迷惑だったな…」


響は自分に非がある事に気づき、頭を下げる。


「そ…そんな!わたしも何も言わないで、聞き入ってしまったので、わたしこそごめんなさい!」


奏もそう言って、頭を下げる。


二人とも頭を下げて、十秒程経過したとき、


「響さん〜!そろそろ時間だよ〜!」


受付にいた金髪の老人から、スタジオに放送が入った。


「おっと…じゃあ、俺は時間だから行くよ!…えっと……」


「奏…奏者のそうで奏…」


響が困った顔をしたのを見て、奏が名乗る。


「奏…さんか……俺は響…音響のきょうで響!」


奏に同じように返し、響は帰り支度を始める。


「ひ…響さんはよく、このスタジオに来るんですか?」


(あ…わたし、何聞いてるんだろ……今会ったばかりの人に…)


言ってから、奏は内心で自問する。


「あぁ……結構よく来るよ…奏さんは?」


(って、なんで聞き返したんだ!?)


響も自らつっこみを入れる。


「わたしも…よく来ます……けど、響さんと会ったのは、初めてですね」


「そうだな…時間が違うのかもな……なぁ、俺の音…どう」


「響さんー!後がつかえてるから、早めによろしくねー!」


響の言葉を切るように、再び、スタジオに放送が入った。


「…っと!じゃあ、行くわ!また!」


響は荷物を抱え、スタジオから飛び出した。


「はい。また…」


奏も出ていく響の背に小さく手を振った。


((なんで、「また」って言ったんだろ?))


二人が別れた後に、二人とも同じことを思ったのだった。



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