第二話
2~3mの動物を数匹、爪て掴んだ銀色の龍は数百kg程の重さを感じさせない動きで戻って来た。
俺の前にまた、赤黒い血を垂れ流す死骸が転がった。しかも、さっき食べた動物らしきものと同じ形をしていたそれの旨さは知ってる。
『さあ、お食べ』
喉が鳴り、勝手に動く体を止められず俺はまた死骸を貪る。
食道を通る肉片は胃に溜まる筈なのに、何故か消えてしまうかのように餓えは無くならない。
「がぁうぅぅっ」
死骸の中にある微量の何かを体が選んで吸収し、それ以外は全て体外に捨てている気がする。
食べても食べても、微量過ぎる何かは体に溜まらず空腹感が俺を苛む。
さっきは食べなかった動物の額に付いていた石が気になった。薄緑色をしたその石から、肉片を食い散らかしていた時に感じた何か、をもっと強く感じたからだ。
恐る恐る、額にある石を牙で根本かは噛み千切りほうばった。
「ぎぃ、ぁあ!」
最初に感じた血の芳醇さに酔いしれていた事など忘れてしまいそうだった。俺は慌て、他の死骸にも付いている石を噛み砕いて呑み込んだ。
餓えが一気に満たされ、俺は満腹感に眠りに誘われた。
『嗚呼、なんと賢い子だ!!魔石を選んで食べるなんて。』
翼を伸ばし、感極まったように銀色の龍は躍動し、俺の顔を覗き込んだ。その瞳には残虐さなど無く母性愛に溢れていた。俺が漸く、頭に響いく声を誰のものか認識した瞬間だった。
小さな体を震わせながら、今日も2m程の動物の死骸を数匹食べる。
最近は、餓えから解放されており焦らずゆっくりと貪るようになった。
普通だったら、吐き気を催すだろうグロい構図になっているがご愛嬌だ。
俺を育ててくれる、銀色の龍も元気に貪る俺の姿に喜んでくれる。
「ぎぃうい!!(旨い!!)」
『そうか、旨いか。』
嬉しそうな声が頭に響き、頬を舌で舐められる。前まで恐怖しか感じなかった行為に、今は愛情を感じていた。
すでにこのよく分からない場所で、銀色の龍に世話をされて一月以上が経っている。
最初は餓えが消えた後、眠り込んでしまい起きればまた動物の死骸が差し出され、また食べて眠りというサイクルを繰り返していた。
しかし、その内睡魔に耐えられるようになった。俺は銀色の龍が動物を探しに行っている間に、巣穴らしき洞窟から出た。そして、現実を知った。
視界一杯に広がる有り得ない光景。
緑色で塗り潰した森が眼下に見える。
恐竜のような貌をした鳥が青空を羽ばたき、地面を三つ目の狼達がかけ、5m程の象のような巨体に亀に似た甲羅を付けた動物か何かが走って逃げていった。
近くを流れる河には、様々な生き物が水を飲んだりしていた。
俺は切り立った崖の自然に出来た穴を洞窟だと勘違いしていたらしい。
崖からせりだした足場から、身を乗り出して下の森を凝視していた。
だから、銀色の龍が上から降り立つまで気付かなかった。
『愛しい子よ、ほら巣にお戻り。お前の翼はまだ未完成で飛び立てぬ。』
女性の声が響いき、驚いた俺の体は銀色の龍が降り立つ時に作った風圧に耐えきれず、体を宙に浮かせてしまった。
「が、ぎゃぁうう!!!(あ?はぁああ!!!)」