episode 51 現れた仇
明けましておめでとうございます!!
なんだかんだあって投稿して3ヶ月になりました。
最初はなんとなくで投稿したこの作品がここまでくるとは思いませんでした((笑
今年の抱負として
投稿スピードを落とさないことと、皆様に満足して頂けるようにより良い小説にしていきたいと思います。
最後になりましたが、今日まで『犯罪者は英雄?』をご覧頂き本当にありがとうございます!
どうか今年もよろしくおねがいしますm(_ _)mペコリ
風が頬を吹き抜け、アスファルトを踏みつける感覚だけが伝わってくる。
過ぎ去る景色。まるで新幹線にでも乗ったようなこの光景に、しかし俺は感慨に浸ることは出来なかった。
駆ける。ただ駆ける。
安全圏である結界の中でも、結界が破壊された今の状況では壊れたプレハブ小屋も同然。侵入されることは目に見えている。
みんなが危ない。
だがしかし、皆の身を案じる一方で、どうしようもない憎悪が湧き上がってくるのもまた事実。
重傷に追いやられたニコルに聞いた話で蘇った使命のような感情。
唇を噛み締めながら、前へ進み続ける足へ更なる力を込める。
俺がアリーナに付いたとき、一葉、レイ、ライラ、和彦、桜、綾芽、遥が血の海に浮かんでいたら―――そんな考えがよぎるが、即座に頭を振った。
――何考えてんだ俺はッ!!そうならないために走れ!!走り続けろ!!
強がる想いとは裏腹に、徐々に嫌な方へ嫌な方へと考えが行ってしまう。全て自分のせいなんだと。
――――あのとき俺が残っていればッ!
自分で紅葉たちを探そうとしなければ、今こんな状況にならずに済んだ。
“奴”が来ている時点で、“奴”が現れる可能性がある時点でこうなることは予想できたはず。なのに俺はそこまで考えが回らなかった。さらにニコルが言うにはあと二人も保持者がいる。ならば――――
(レイと一葉だけじゃ無茶だッ!!)
既にアリーナまであと少し。
頼む。頼むから間に合ってくれよッ!
大勢の人間を葬って尚、仲間の安否を心配している自分自身の身勝手さが嫌になりながらも、ただひたすら足を止めずに走りつづけた。
☆☆☆☆☆
――パリィィイン!!
黒崎ライラの治療を終えた直後、ガラスが割れたような音が耳をつんざく。
この場に居る学生たちはこの音の正体を瞬時に理解できただろうか。だが、それを確認する余裕は波風一葉にも無かった。
「結界が……壊され?」
無意識のうちに呟いた言葉が自分自身でも瞬時に信じられない。いや、信じたくないのかもしれない。
そんな一葉の心情とは裏腹に、未だに舞っている煙の中からいくつもの影が飛び出した。
それを見て我に返り、周りを気にかけながら身構える。
続々と競技場内へと飛び降りてくる影に、思わず舌打ちを吐いた。
数はおよそ四十といったところか。先程アリーナで桜たちを襲っていた男たちと同じで、その服装に規則性は無い。だが、それも放たれる殺気のお陰でこの男たちが敵だということを間違えようもないのだが。
その中でも突出した圧力を放つ男が三人。恐らくリーダー格なのだろう。その内の一人が驚いたような声をあげた。
「おや?おやおや?これはこれは“ガイスト・クイーン”、波風一葉ではありませんか。こんなところへどうなさいました?」
「……ここは私の学園都市よ。私がここに居ることの何が可笑しいのかしら、ミスター“ブリューナク”」
丁寧な口調で心底驚いたような顔をする“ブリューナク”と呼ばれた男。だが、一葉が苦笑混じりに言うと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「覚えて頂けて光栄です。ですが、ここは自己紹介をさせていただきましょう。私は、伝説武器“ブリューナク”保持者のセルゲイ・グラジエフです。で、こちらが――――」
「伝説武器“ゲイ・ボルグ”保持者のアレーク・ヴィリギンスキーです。はじめまして、クイーン」
セルゲイと名乗った男の声を遮って軽くお辞儀するアレークと名乗った男。先程レイと一戦を交えた男がこのアレークなのだが、そんなこと、このときの一葉には知る由もない。
人懐っこそうな笑みを浮かべるセルゲイ。張り付けたような微笑を浮かべるアレーク。そして――――
「そして、そこの目つきが悪い方は伝説武器“ガラドボルグ”保持者のイリヤ・ザハロフです」
(コイツが……ッ!!)
イリヤ・ザハロフ。
この名前は初耳だが、その伝説武器の名は良く知っている。
短めの銀髪に、炎を浮かべたような真紅の瞳で背は高めで年は20ぐらいだろうか。鋭い目つきでこちらを睨み続けるせいか、肺を圧迫されているような錯覚に陥る。
だが、そんなことよりも、
(コイツが、コイツが雅人をッ!!)
悠希の兄であり、一葉の戦友でもある華瀬雅人を殺した張本人が今、目の前にいる。
今すぐにでも突っ込みたい衝動に駆られるが、冷静さを掻いた状態ではこの男に勝てないことは目に見えている。更に傍に二人の保持者と何人もの術師が控えているのだ。伝説武器を持たない彼女にとって最早勝ち目などない。
それが解らないほど一葉もバカではない。なんとかここは抑えて後ろにいる桜たちを逃がす方法を考えなくては――――
「おいセルゲイ、アレーク。てめぇら仲良しごっこするためにここに来たのか?なら俺はこの場の全員斬り殺すけど文句無いよな?」
――ゾクッ!
とてつもない殺気を孕んだ声音でイリヤがそう言い放った。自分の考えを読まれたのどうかは解らないが、背筋に悪寒が走り抜け、額を嫌な汗が伝う。
だが、そんなイリヤの言葉を眉一つ動かさずにセルゲイは首を横に振った。
「イリヤ、それは命令違反ですよ?私たちはただ“あれ”を見つけにきただけだということをお忘れなく」
「ケッ!いたぶろうが、殺そうがどっちも変わらねーだろーが!」
「それでも、ですよ。私たちは“あの方”の命令には逆らえない。それともここで命令に逆らいますか?」
「ちっ……」
怒鳴りつけるように声音のイリヤとは反対に、セルゲイは極めて冷静な声でそれを宥める。
会話の所々によく解らないところがあったが、どうやら彼らは学園都市にいる人間を傷つけることはできても殺すことはできないらいしい。
だが、それよりも――――
(“あれ”を見つけにきた?“あれ”っていったい……それにこの三人を抑えつけて従わせる“あの方”って…………)
解らないことはたくさんある。だが、それでも一葉のやることは変わらない。
「……ジェネレート」
呟くと同時に右手に光が集まり出す。それが臨界点に達するとその光が弾け、一振りの刀が現れた。
「おや?」
一葉の呟きに気が付いたセルゲイがそんな声をあげた。だがその瞬間、その場で一閃。
通常であればこの距離では斬撃に魔力を乗せて放つのだが、一葉の刀からは何の変化も現れない。
ただの素振りの練習ように見えるこの動作。しかし、ここは一種の戦場。そんなことをするはずがない。
――――バタ
唐突にセルゲイの後ろにいた部下らしき男が音を立てて倒れた。それを皮切りに続々と三人の周りの人間が倒れていく。
一人、二人、四人、八人。
とうとう三人だけになってしまったその光景を見て、後ろにいる桜たちが驚愕に目を見開いている。
そんなことは一葉に解るはずももないのだが、ただこの想いだけがずっと胸にひしめいている。
「……いたぶるって言ったっけ?」
守らなくてはいけない。
大切な妹とその友達たちを。
「やれるものならやってみなさい」
数年ぶりに自身から放たれる殺気を纏いながら、かつて“ガイスト・クイーン”と呼ばれた彼女は戦いを決意するのだった。
最近更新できてなくて皆様にご迷惑をおかけしてしまってます。
すみません。
なんだか指が進まなくて、、、
スランプみたいです。
ためしに新しいのを書いてみたのですが、これもまた続きが書けなくなりかけてます。
犯罪者は英雄?をご覧頂いているみなさま。
なるべく早く次話を挙げたいと思いますが、それまで暖かく見守ってください。
本当にすみません。