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episode 4 手品師じゃなくて魔術師ですよ


ヘイル先生に付いていき、校舎を出て五分ほど歩いたところにそれはあった。

「・・・・東京ドーム?」

「アリーナだ」

我らが日本の比較対象と同じ大きさだと!?俺の反応に苦笑しながらヘイル先生はアリーナへと入っていく。


アリーナ内はとてつもなく広い。

魔法を使った模擬戦闘を行うための物なのだから広くて当然なのだが、どうしても「これ作るだけでも相当金使ってんだろうな」、などとここに来て何度目かの疑問を浮かべてしまう。

アリーナ中央まで到着すると、ヘイル先生は親切にも解説をしてくれた。


要約すると、このアリーナには上級魔法の結界が張り巡らされており、観客席から球技場に魔法を放つことができない。逆もまた然り。つまり暴れまわっても壊れないというわけだ。

もう一つは試験について。模擬戦形式で行い、相手を戦闘不能またはギブアップさせれば勝ちとなるらしい。


「―――まぁそんなところだ。審判はあそこにいる二人の教員にしてもらう」

ヘイル先生の指差す方向を見ると、黒髪と水色の髪の二人の女性が手を振っていた。

「じゃあ手早く終わらせよう。親父の説得には時間がかかりそうだしな」


そう言ってさがる先生。完全に俺を見くびっているな。


心の中で少しイラついたそんな自分に軽く自己嫌悪して歩いていく男性を見守る。

15メートルほど離れたところで止まり、こちらに向き直る。

「ジェネレート」

そう呟いたヘイル先生の手に光が収束する。光が消えると手には斧が握られていた。


武装召還。


従来の魔法使いのような魔法書を持って呪文を唱えるようなことは現在ではなくなった。魔法書の代わりとなったのが補助武装。特殊な加工が施されたそれらは、魔法が研究されて科学者たちによって作り出された言うなれば魔法の簡略装置。予め武器に術式を組み込むことで、発動速度を大幅に短縮するこれらには大きく分けて三つ存在する。


一つ目は特化型。

大量の術式を保存でき、魔法だけを使うことに特化した補助武装。精霊術師や召還術師、魔術オンリーの魔術師によく好まれる。


二つ目は武器型。

魔法を戦闘の補助として使う、現代で最もオーソドックスななものである。使える術式が少ない代わりに武器として扱われるという利点がある。


最後はそのどちらにも含まれない伝説武器(レジェンダリーウェポン)。これは現代では実現不可能と呼ばれた二つを合わせた補助武装。古代の人類が作ったこれらは大量の術式を保存でき、武器としても最上級、それに加えそれぞれに解析できない術式が備わっているらしい。


ちなみに超能力者は補助武装を使わない。元々一つのことに特化した超能力たちは使う必要がないのだ。


ヘイルが握っているのは武器型の補助武装。太陽の光を浴びてキラリと光る刃を見るだけで手入れが行き届いていることがわかる。

それを構えて俺に聞こえる声で呼びかける。


「おい!武器ださなくていいのか?」

「あー・・・・わかりました」


言いながら俺は手に武器を呼び出す。光が収束していき一つの形となる。現れたのは銃。


「ほう。珍しいな」

ヘイル先生はまじまじと俺の手を眺める。少し居心地が悪い。


「ほら、ヘイル先生。戸惑ってるじゃないですか」

「確かに銃使いなんて珍しいですけど、ジロジロしすぎです」

女性陣二人がからかってくる。

彼女たちの言ったとおり銃使いは珍しい。剣などと違ってこちらは接近戦はできない。かと言って長距離なら特化型のほうが断然いい。銃の利点としては、その連続性。引き金を引けばそれだけで銃弾が飛んでいくため、補助武装によって魔法を纏わせればいいだけだ。

そんな中途半端な位置にいる銃を使う者はあまりいないのだ。

「むっ、すまんすまん。ついな」

ばつが悪そうに頭を掻くヘイル先生。悪気はないだろうから別にいいんだが。

「じゃあそろそろ始めましょうか」

黒髪の女性教師がそう呟くと、俺とヘイル先生が睨み合う。場を静寂が支配する。


「始めてください」

先ほどの黒髪の女性教師が宣言するとヘイル先生が突っ込んできた。


ブゥウォン!!。


胴に斬り込んできた斧を後ろに飛んで交わす。空を切る音だけでこんななのだから余程の威力があるのだろう。さすが教師だ。


再び斬りかかってきたところを銃で牽制。斧で弾かれるが動きを止めることには成功した。


ふぅ。あれ受け止めたら痛そうだな。


そんなことを思いながら俺はヘイル先生を観察する。


一見パワー型にも見えるのだが、スピードもそこそこあるようだ。魔法はまだ見ていないが身体強化はなかなかのものだろう。(身体強化とは魔力を体内で循環させて身体能力を向上させる技能のことだ。)


授業までまだ時間があるとはいえ、教師までそうだとは限らない。余り迷惑をかけるのもどうかと思うのでなるだけ早く終わらせることに決めた。


再び突っ込んできたヘイル先生。魔力を集中させ、それを銃弾に纏わせるようにイメージする。


【炎属性添加:銃:(まとい)


武器型で最も用いられる属性添加魔法。名前の通り属性を物体に付与させる魔法だ。


炎属性の魔法を纏った弾丸はヘイル先生の胸に向かって飛んでいく。先生は斧を胸あたりに持って行き盾にしようとする。

「そんなの・・・」

無駄だ、と続けようとしたがすぐにそれは起きた。


バキィィン!!


甲高い金属の音がアリーナを包み込む。俺以外のこの場の三人が斧を見て呆然としていた。


弾丸は斧にひびを入れて制止していた。折ろうと思えば折れたが、それだとヘイル先生に貫通してしまう可能性があったのでそうしなかった。


驚愕から立ち直ったヘイル先生は再び2本目の斧を取り出そうとするが、それよりも早く俺は走り出す。


三メートルを切ったところでヘイル先生の武器が形を結び、俺に振り下ろしてくる。


バキィィン!!


再び金属の甲高い音が響く。今度は銃で打ったのではない。刀で切ったのだ。


先程まで何もなかったはずの右手に刀が握られていたことに再びヘイル先生は驚愕の表情を浮かべる。



瞬間展開(マジック・トレース)


武装展開をする際には必ずタイムラグが存在してしまう。武装展開は武器が自分の手に握られていることを想像し、それが明確に身を結んだところで別空間から呼び出すといったものだ。人間の思考には時間がかかる。だが俺には何故かそのタイムラグが存在しなかった。一葉にそのことを教えたら瞬間展開と勝手に名付けられてしまったのである。


もちろんこんなこと知らないヘイル先生は、刀を首に突きつけられていると言うのに未だ驚愕から抜けきっていないようだ。一葉などその反応を見て必死に笑いを抑えている。


「・・・・驚いた。おまえはきっと手品師に成れるな。俺が保証してやる」

「俺は手品師じゃなくて魔術師だからな」

軽口を交えてようやく落ち着いたヘイル先生と向かい合う。するとどこから拍手が聞こえてくる。辺りを見回すと女性陣三人が手を叩いていた。

「いやー、すごいね。ヘイル先生ってAランク魔術師なのに」

「生徒に負けたってことは退職ですね。今までお疲れさまでした。辞表は今日中にお願いします」

「ちょっ!それはさすがに・・・」

女性教師二人にいじられているヘイル先生を生暖かい目で見る俺。そんな俺のところにトコトコとやってくる一葉。

「・・・瞬間展開(マジック・トレース)まで使って良かったの?」

「まぁ、どの道これは使わないと不便だからな」

「まぁ、あんたがいいならいいんだけどね」

それで話は終わりとばかりに目を逸らす。少し俺より小さい一葉と一緒に未だにいじられ続けているヘイル先生たちを見守り続ける。


・・・・・・あ、こけた。




戦闘描写難しいorz


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