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episode 19 作戦会……議?


「悠希っ!」


控え室に戻ってくると、和彦がすぐさま駆け寄ってきて、よろける俺の身体を支えてくれた。


「お前、将来いい嫁さんになるよ」

「ぼ、僕は男だよっ!!」


中学生に間違えられそうな童顔を真っ赤に染め、頬を膨らませて抗議してくる和彦。それを無視してケータイを取り出す。


「次はいつ?」


すると、先程の抗議を止め、和彦もケータイを覗き込んできた。いつ、とは次の試合の時間だろう。


「二時間後、みたいだな」


まだ俺の対戦相手の試合は行われていないらしい。そのどちらかが勝てば俺と当たるようだ。


「どうする?見に行く?」


尋ねる和彦に、しかし俺は首を横に振った。


「いや、見ても仕方ないだろ。どっかで休む」

「大した自信だね。次は多分学年5位だよ?」


…………5位?


「それって学年6位の波風紅葉より強いのか?」

「彼女を知っているのかい?あー、そう言えば彼女と模擬戦をして勝ったていう噂があったね。う〜ん……」


首を傾げて考えているのだろう。やがて顔を上げ口を開いた。


「どうかな。リオ……あ、学年5位のエリオ・コンティのことなんだけど、彼はパワータイプだからね。技術では波風さんの方が上だと思う」

「じゃあなんで紅葉が6位でそのエリオってのが5位なんだ?」


俺の問いに「知らないの?」と、逆に首を傾げる和彦。


「トーナメントの決勝戦が終わったら上位20人でバトルロイヤル形式で3日間サバイバルが行われるんだよ。それで先に負けていった人たちの順位が決まるってこと」

「つまり紅葉が先に誰かに負けたってことか」

「そういうこと」


なるほど、だからトーナメント期間がこんなにも長いのか。俺が一人で納得していると、補足とばかりに和彦は続けた。


「去年は学年1位の人が片っ端から片付けていって1日かからずに終わったんだよね。そのお陰で僕が10位に入れたんだけど……」


そんなやんちゃな奴なのか。学年1位って。

苦笑いしながら言う和彦の頭にぽんと手を置き、俺は首を振った。


「いんや、お前の腕はなかなかのもんだったぞ。本当ならもう少し上の順位だったはずだ」


俺がそういうと、彼は照れたように頬を染め出した。そんなやりとりをしながら俺たちは控え室を後にした。





☆☆☆☆☆





「和彦ー、水くれー」

「はいはい」


結局保健室のベッドで休むことに決め、甲斐甲斐しく世話をしてくれる和彦を眺めていた。


「お前、本当に男辞めて女になった方がいいと思う。世界の為に」

「そんなことないよっ!!」


俺の弄りにも一々反応してくれたりと、色々大変だなこいつも。

自分がしていることを棚に上げてそんな感慨に浸っていると、和彦が水を持ってきてくれた。


「はい。タオルもそろそろ取り替えた方がいいね」


俺の額に置かれたタオルを取り、ひんやり濡れた別のタオルに変えてくれた。

本当になんでこいつが男なのだろう。まるで母親のようだ。


「お母さーん、アイス食べたーい」

「お腹こわ……お母さんじゃないよっ!!男だよっ!!」


しまった、つい言葉に出てしまった。

プリプリ怒りながらも働き回る和彦から目を離し、ケータイを開いて対戦相手の試合を見ようと思ったが、手で制された。


「どうせ見るならあのテレビで見ようよ」


和彦が指差したのは、保健室の壁に埋め込まれている大画面テレビだった。


「見れんの?」

「校内放送で今あってる試合なら全部見られるよ」


ほう、それは凄い。

素直に感心していると、和彦が置かれていたリモコンのボタンを手早く押す。電源を入れチャンネルをいじりだすと、お目当ての試合が映った。どうやらこれから始まるらしい。


「あのハルバート使いがそうか?」

「うん」


頷き肯定。画面の中ではハルバートの武器型の補助武装を持った長身の男と、杖状の特化型を携えた気弱そうな女の子が対峙していた。なんだか――。


「温厚そうな奴だな」

「ははは、実際リオは優しいからね」


もっとこう、ゴツいのを想像していた俺は決して悪くは無いと思う。パワー型って言ってたし。

俺の言葉に苦笑しながら和彦は画面を見つめていた。


――始まる。


それから俺たちは無言で試合の行く末を見守った。





☆☆☆☆☆





「ふーん、土属性主体のごり押し、か」


試合が終わり、俺はそんな感想をつぶやいた。結果は圧勝、もちろん学年5位の。


「あの女の子もまぁまぁ強かったけど、相手が悪かったね。ご愁傷様」


おい和彦、テレビの向こうに向かって「ご愁傷様」なんて止めなさい。かわいそうだろう。

合掌までしてそんなことを言い出す彼に心の中でツッコんで、先程の試合を思い返していた。


試合は終始女の子が魔法を撃つ、5位が弾くまたは土属性の魔法で相殺、距離を詰めて攻撃、女の子が避ける、の繰り返しだった。特化型の弱点である近接戦に持ち込む確実な戦法だ。なのだが、


「……えげつねー」


それが素直な感想だった。なすすべなく倒されていく女の子の姿があまりにも可哀想に見える程に。俺の呟きに苦笑いする和彦も同意見なのだろう。


「まぁ、確実って言えば確実なんだけどな。あれは事前に相手のことを調べてキチンと対策練った戦い方だったし」

「誰だって相手を調べたりするよ。悠希みたいなのが少数派なだけ」


あれ?そうなの?

首を傾げる俺に、呆れたような視線を投げかけてくる。

和彦は最後にはぁ〜と、長いため息をついて俺に向き直った。


「で、今回は相手の情報を手に入れたよ。どんな戦い方にするの?」

「どんなって言われてもな……」


相手も俺のことは調べてるだろうしなぁ。今まで使った武器は銃と刀。手持ちはまだまだあるとはいえ、あまり手の内を見せたくはない。

それに伝説武器は論外。国家機密で情報漏洩されていないのが一つあるとはいえ、そんなものが普通の学生相手に使えるわけもない。


「もういっそ両方使うか」

「?何が?」


だんだん考えるのが面倒になってきた俺は投げやりに結論を出したのだが、つい声に出してしまっていたらしい。首を傾げる和彦に「気にすんな」と言ってベッドから降りる。まだふらつくが寝ていたお陰か、和彦の介護のお陰かだいぶマシになっていた。そんな彼にふと振り向いて笑顔を向ける。


「将来はナースになれるぜ」

「男だよっ!!」


親指を立てて最高にいい顔をしている俺に顔を真っ赤に染める和彦。そんな俺たちは次の試合へと向かった。





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