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episode 18 三回戦−召還術師−



すみません


新原雅人→新原和彦に変更します(汗)


本当にすみません……




兄さんは優しかった。

弱きを助け、悪を裁く。俺にとってのヒーロー。





兄さんは強かった。

戦場では敵味方が恐れる程の鬼神の如き力があった。





でもやっぱり優しかった。

殺されかけている仲間がいたら自分の危険を省みず突っ込んでいった。



そんな兄さんを尊敬していたし、憧れていた。





でもあいつがやってきた。


俺のせいで兄さんがあいつに殺された。


今の世界を変えられるだけの人材を俺ごときの存在のせいで殺させてしまった。




俺は自分とあの銀髪の男を決して許さない。

絶対に俺はあいつを殺す。

それ以外に兄さんと世界への償いが思い浮かばない。




けど俺は弱い。


あの男を思い出しただけで恐怖や怒りに自我を失ってしまう。




兄さん、俺は兄さんみたいにはなれないよ。





☆☆☆☆☆





「――ッ!!」


焼かれるような頭痛で俺は目を覚ました。


痛い。


頭を抱えうずくまるが、この痛みは消えそうにはない。


しばらくそうして、体が痛みに慣れるのを待ち、時間を確認する。

今は朝8時44分。

2日目以降は自分の試合にだけ行けばいいのだが、あと約一時間後には俺の試合が始まる。


そんな丁度いいタイミングで頭痛で起きる。

こんな偶然ってあるのか?

もしかして身体が戦いを求めている?


頭をよぎる憶測を無視して身体を起こし、昨日着たままだった制服すら着替えず、覚束ない足取りで俺は次寮を出た。



「やあ」


寮を出ると、突然声をかけられた。振り向くと、声の主は人懐っこそうな笑みを浮かべている。


「……新原君、だっけ?」


大変失礼なことだが、彼の名前が一瞬浮かんでこなかった。俺の不自然な間に気が付いたのか、少し苦笑している。


「和彦でいいよ。昨日で試合終わったから君の試合を見に行こうと思ってね」

「俺も悠希でいい。それでわざわざ待ってたのか?」


彼がここにいるということはそういうことだろう。和彦のような術師をうちの学校では聞いたことがない。だが、俺の予想と反して彼は首を振った。


「それもあるけど、聞きたいことがあってね」

「なんだ?」


首を傾げる。

すると彼は笑みを消し、真剣な顔で尋ねてきた。


「……体調は大丈夫?」

「――ッ!!」


まったく予想していなかった。バレたのか?たかが生徒に一体なぜ?

驚愕していいると、和彦が再び言葉を続けた。


「僕の家は代々医師の家系なんだ。筋肉の使い方でわかる、悠希は筋肉じゃなくて魔力で身体を動かしてるよね」


そんなことまでバレてたのか。

俺は今も身体の全てを魔力で動かしている。もしこれを止めようものなら立っていられないだろう。

だが、そんなことで俺の体調がわかるやつが居るとは思わなかった。


「だから今日は僕が悠希をサポートしようと思ってね。本当なら止めさせたいところだけど、できない理由があるんでしょ?」

「それは……」


話せない。話すのであれば全てを明かさなくてはならない。思案顔になった俺を見て、和彦が再び首を振った。


「別に聞こうなんて思ってないよ。ただ、悠希のケアや、倒れたときに早めに処置できたほうがいいと思って。よければ僕を使って欲しい」


どう言うつもりなのだろう。昨日知り合っただけの俺にこんなに親切にしてくれるなんて。

思わず彼の目を覗き込む。少なくとも邪心は無さそうだ。


「……すまない。じゃあ宜しく頼む」

「任せて!」


笑顔で頷く和彦。彼の厚意に甘えることにして、俺たち二人は次の試合に向かった。





☆☆☆☆☆





第3高校、第2アリーナ。

俺たちはそこの控え室に居た。和彦の真意は未だにわからないが、悪い奴ではなさそうなので別段気にする必要も無いだろう。


「じゃあ行ってくる」

「うん、がんばってね」


ベンチに腰掛けている彼にそう声をかけ、場内へ歩いていった。


フィールドは相変わらずの熱気に包まれている。俺が入った瞬間に歓声が沸いた。やはり第一試合や第二試合よりも数が多い。

上に進めば進む程負ける人も出てくるため、観客がその都度増えるのは納得できる。だが、それにしてこれは多すぎる。

大方、一回戦で補助武装無しで瞬殺、さらには学年10位の和彦(これはさっき聞いたことだが)に勝ったとあって俺の注目度も鰻登りに急上昇中なんだろなぁ。単に手加減してる余裕が無いだけなのだが。


げんなりしながら中央に移動する。対戦相手はもう来ているようだ。


「よ、よろしくお願いしますっ!!」

「あ、ああ。よろしく」


いきなり対戦相手の女子生徒に話しかけられてびっくりしたが、相手も緊張しているようで、こちらおどかすよりは自分の緊張を解すためと言った方がいいのかもしれない。


「これより、三回戦、華瀬悠希vs高宮鈴(たかみや すず)の試合を開始します」


開始前のサイレンが鳴る。


「ジェネレートっ!!」


そんな中、一際大きな声で目の前の女の子が言い放った。彼女の左手には和彦や綾芽さんと同じ杖。

昨日と同じ嫌な予感しかせず、とりあえず俺も武器を呼び出すことにした。


「ジェネレート」


両手に光が集まり弾ける。二丁拳銃の武器型補助武装だ。

俺が具現化させると、やはりと言うかお約束と言うか、周りからざわめきが起こった。


やっぱり目立つよな、などと呑気に思いながら開始の合図を待った。


「では始めっ!!」


「オープンっ!!」


開始が告げられた瞬間、彼女が真っ先に口を開いた。

これはまずい。


彼女の周りに5つの魔法陣が浮かび上がり、その中から五体の何かが現れた。

二体はでかい蜂のような生物。他三体は白銀の狼。


「召還術師か……」


五体同時に多重召還できるのだからそこそこの召還術師なのだろう。

でかい蜂はランクEの『ポイズンキラー』、狼はランクDの『アイスウルフ』。


魔獣にはランクという物がある。上から準にSS、S、A、B、C、D、E、Fまであり、強さや危険度によって格付けされている。ちなみに魔獣指定区域も危険度から同様にSS〜Dランクまで枠組みされる。

まぁランクEとDならば妥当な所だろう。


迫り来る魔獣たちから避け、雅人の時と同じように俺は徐々に近づいていく。

魔獣たちはそれをさせまいと俺に食らいつこうとしてくる。だが、俺は引き金に手をかけた。


「大人しくしてろ」


【雷属性添加:銃:纏-封縛-】


雷属性の魔法を纏わせた弾丸を五発撃ち出す。轟く銃声の中で銃弾が五体の魔獣に触れると、突然魔獣たちが痙攣しだした。

“封縛”は体に電気を流して動きを封じる魔法。泣き出すことも適わず、五体の魔獣は地面に平伏した。


「どうする?」


銃口を術者に向け、問う。彼女は迷うこともなく手を上げて降参してくれた。


「勝者!!華瀬悠希!!」


その瞬間歓声という名の銃弾が飛び交い、俺の頭を揺さぶる。いや、もとからあった痛みが集中が切れたせいで戻ってきたのだ。

再び足元が覚束なくなる。悲鳴を上げる身体に鞭打って控え室に戻っていった。

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