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episode 11 コーチ



「私に魔法を教えてくださいっ!!」

「・・・・・はい?」


昼休み。

今日もライラたちと学食かぁ、などと呑気に立ち上がった俺はいきなり目の前の少女に頭を下げられた。


えーっと、かわいい子だな。

いや、そうじゃないだろ!!

今この子はなんて言った!?

魔法を教える!?なんで!?

そもそも誰!?

このクラスじゃないよね!?

その前になんで俺!?


噴水のごとく沸いてくる疑問に混乱していると、目の前の少女が顔を上げる。

鮮やかな青色の長髪、女性として平均的な慎重に端正な顔立ち。その瞳は真剣に俺を見つめていた。



「あ、申し遅れました。第11高校一年B組の早川綾芽(はやかわ あやめ)と言います」


ほう、お隣さんか(悠希たちはC組)。などと見当はずれなけとを思ってしまったのは混乱しているからだ。そうだと願いたい。


「えっと、じゃあ早川さん」

「綾芽でいいですよ」


なんだかペースを掴みにくいな、この子。


「じゃあ、綾芽さん。取り敢えずなんで俺に?」


まず当たり触りの無いところ攻めていこう。うん、それがいい。


「はいっ!華瀬さんが学年6位の波風さんにあっさり勝ったと、友達に聞いたので」

「うん、その友達連れてこようか。でないと俺が殺される」


後ろからとてつもない殺気を感じるんですが、まさか紅葉さんじゃありませんよね?怖いから確認しないけど。


冷や汗がだらだら流れてくる俺の心情などつゆ知らず、話を続ける綾芽さん。


「それに華瀬さんって、英雄の『華瀬悠希』と同姓同名じゃないですか、そんな人に教えて貰うなんてちょっといいかな、って」


ビクゥッ!!


いきなり笑顔でそんな爆弾を投下してきた。

心臓が飛び出すかと思う程の衝撃に、俺と紅葉は引きつった笑みを浮かべる。


「はははははー、同姓同名ってだけだよー。そんなことないってー」


「そ、そうよ。あははははー」


俺も紅葉もこの際若干カタコトなのは仕方がない。

俺たちは今爆弾処理の最中なのだからそんなことに変わってなどいられるかっ。

ひとまず念話で作戦会議。


『まずくない?』

『非常にまずいな』

『どうする?』

『どうしようか』


やばい何も決まらない。

焦る俺たち。

そんな中、案外直ぐにことはすんだ。


「まぁ、そうですよねー。でも華瀬さんに教えて貰いたいっての冗談なんかじゃ無いんですよ?」


き、きたぁー!!!これだー!!!


「う、うん。まぁいいよ」


それぐらいでこの話がスルーされるなら安いものだ。


「本当ですか!?ありがとうございますっ!!」


「いやいや、こちらこそありがとう」


逸らされてくれて。

俺の最後の言葉に首を傾げる綾芽さんだったが、直ぐにそんなこと忘れて上機嫌で教室を出て行った。



「・・・・・・これが日本でいう嵐が過ぎたってやつか?」

「ああ、そんなとこだ」



ぐったりとうなだれる俺と紅葉。


訝しく見つめてくるライラだったが、すぐに興味を逸らして時計を見る。それに俺たちもつられる。





桜も待たせてることだし昼飯行かねーとな。





☆☆☆☆☆





放課後。

俺はアリーナへ来ていた。もちろ綾芽さんの特訓のためである。

トーナメントの近いこの時期はアリーナが一般開放されているため生徒たちも自由に使える。既にアリーナにはチラホラ人影があり、皆技や魔法を磨くために努力を積み重ねている。


いいねー、若いって。


年寄りくさい思考を振り払い、待ち合わせの人物を待つ。









・・・・・・遅いっ!!!

HRが終わってもう1時間は立っているはずだ。長引いたとしても大分前についても可笑しくないはずだ。


迷った?いやまさかー。



「すみませーん!!」


そんなことを思っていると、目的の人物が現れた。


「待ちました?」

「うん、すごく」


ドラマみたいに「いや、今来たとこ」なんて言う筈もない。

そんな俺の態度にしきりに頭を下げる綾芽さん。


「す、すみませんっ!!その、迷ってしまって」


・・・・・・まじで?

先ほどのバカみたいな予想がなんと当たってしまっていた賞金とか貰えないかな?


「いや、頭上げて。そろそろ始めないと日が暮れるから」

「は、はい!!すみませんっ!!」


いや、だから・・・・・・まぁいいか。


俺の言葉にもう一度深く深ーく頭を下げて、目を瞑る。


「ジェネレート」


綾芽さんが呟くと手に光が集まる。実戦では目を瞑っての武装展開なんてできないが、学校の模擬戦なんかでは展開まで相手が待ってくれるので、集中しやすくするために目を瞑って行う人も少なくない。


やがて光が散り、彼女の手に一メートルほどの杖が現れた。


「特化型ねー」


魔力保有量が多い魔術師などに良く使われる魔法オンリーの補助武装だ。

なるほど、と頷いていた俺だったが、次の瞬間には唖然とさせられた。


「おいで、クウ」


彼女が呟くと今度は空中に魔法陣が浮かび上がる。

その中から水色の少女の妖精が現れたのだ。


「せ、精霊術師〜っ!?」


さっきの魔法陣。あれは召還術師や精霊術師が魔獣、精霊を呼び出すために展開する物だ。別にそこまで珍しいものではない。だが問題があった。


「なんで俺に教えてもらおおうと思ったんだっけ?」

「え?友達が華瀬さんの魔法がすごいって言ってたからですけど?」


はぁ〜、この子はほんとに確信犯なんだか天然なんだか。


「確認のために聞くけど、魔術師と精霊術師だと魔法の発動の仕方が違うって知ってる?」

「え!?そうなんですか!?」



やっぱりか・・・・・・。


「いいか?魔術師は自分の魔力を補助武装に組み込まれた術式に流し込んで発動させるのに対して、精霊魔法は魔力を補助武装に流し込んで術式を展開、そして精霊が補助武装に魔力を流し込んで発動っていう手順が必要なんだよ。精霊と同じ属性のしか使えないけど、その分精霊魔法は少量の魔力でも威力が強いってわけだ」


「そ、そうだったんですか・・・」


なんでそんなことも知らないのだろう。こんなの学園都市の小学校で教えられただろうに。


「その、私勉強苦手で。成績もいっつも下の方で」


そんな俺の疑問を察したのか、苦笑いをしながら言ってくる。上目遣いが妙にかわいらしい。


「・・・・・・まぁいいか。そのかわり役にたつかわからないぞ」

「はいっ!お願いしますっ!」



満面の笑顔を向けてくる綾芽さんに毒気を抜かれた俺は、これから彼女に魔法を教えることになってしまった。



この日はアリーナが閉まるギリギリの時間まで行われたのだった。






トーナメントまで後三日。




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