ハーレムエンドは地獄(続編)の入り口
ネタ昇華
誤字報告ありがとうございます!!
「ベルティーユ・ブラックオパール!聖女を殺そうとしたお前に貴種たる資格はない!」
1人の女を7人の男たちが囲っている。まさしく『聖女と7人の王子様♡』のハーレムエンドスチルだ。ベルティーユは手を後ろに回され乱暴に取り押さえられながら思った。
(ようやくハーレムエンドに到達したのね…でもこれが終わりの始まりよ…)
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ベルティーユがこの世界が『聖女と7人の王子様♡』略して聖ナナの世界だと気づいたのは魔法学園入学の三ヶ月前だった。
生死を彷徨うなんてこともなく、突如脳内に溢れ出した前世の記憶、ベルティーユは叫んだ
「なんてこと私は悪役令嬢ベルティーユ・ブラックオパール!!聖ナナでヒロインに暗殺者を送り込んで婚約破棄され処刑をされる悪役!!」
ベルティーユはアメジストのような深い紫の瞳に黒真珠のような艶のある美しい黒髪をした美少女で辺境伯ブラックオパールの令嬢である。
この国の王子シュヴァリエ・ホワイトダイヤモンドとは婚約関係にある。
『聖女と7人の王子様♡』は、ファンタジー世界に転移してしまった主人公愛花がイケメンと愛を育むといった内容だ。
王子の前に突然現れた愛花は転移者として保護され、王子やその側近たちと恋愛しつつ聖女の力に目覚め反逆を企むブラックオパール家を打ち負かすというストーリーだ。
恋のお相手は正統派王子、ヤンチャ系王弟、ショタ双子、インテリ宰相の息子、細マッチョ騎士、女たらしの教師の7人である。
ベルティーユは豪華な布団の上で目を閉じながら考えた。
「今までの転移者も特別な魔法に目覚めることがあった、ちょうどよく王城に現れたから最初は王子のお遊びとして保護したのね。そして愛花は王城にいる男たちを攻略する…
どのルートでもベルティーユは聖女を害した罪を問われる…婚約者でもない騎士と聖女が恋愛してもベルティーユには関係がないのにベルティーユが罪に問わてブラックオパールが没落するということは、そもそも王家がブラックオパール家を切りたがっているということね…
入学の三ヶ月前ということは丁度ゲームが始まったあたり、まだ何かできるはずだわ!」
ベルティーユは起き上がり、強く誓うのだった
「ベル、どうしたの?」
母が心配そうな顔で近づいてきて、ベルティーユのひたいにそっと手を置いた。
「熱はないわね…でも顔色が悪いわよ」
ベルティーユは母の手の温もりに胸がジンとしたが、慌てて目を逸らした
(お母様を私の道連れにするわけにはいかない…)
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結論として、ベルティーユは物語には大きな影響を与えられなかった。
強制力でもあるのかストーリーを邪魔するような根回しが一切うまくいかない。情報を集めることによって父である辺境伯に王家への疑念を持たせるのがせいぜいであった。
「なんとかスパイを送ってヒロインが王子と側近たちと関係を深めていることはわかったけど…転移で直接王城に転がり込むなんてズルよ!」
ベルティーユはまだ婚約者である王子に会ったことがなかった。
魔物がいるこの世界では長旅が危険なため貴族子女が遠くの領地に出かけることはない、王子との初顔合わせは魔法学園で行うと決められていた。
ベルティーユ自身が王城に乗り込もうにも結婚前に婚約者の家に乗り込むのは節操がないと見做されるのだ。貞淑に育てられたベルティーユには無理なことであった。
魔法学園でもベルティーユは無力だった。父の根回しで自身の派閥がヒロインに嫌がらせをするのはやめさせたが強制力なのか王家の手回しだろうか、有象無象の令嬢たちがベルティーユ様のためといいつつヒロインへの手出しをやめないかった。
ヒロインが王子だけでなく他のイケメン達も攻略しているのが彼女たちの怒りを買っているのだろうが…
「愛花様、異邦人であることは存じておりますが。この世界の規範というものを尊重してくださいませ」
「規範?ふざけないで。あんたの企みとっくに気づいてるわ。私絶対負けないんだから」
愛花はベルティーユを睨みつけ、ベルティーユが絶対悪だと確信した様子で言い切った。
(ダメだわ。あの聖女はゲームのストーリーが真実だと思い込んでいる…ブラックオパールは反逆なんて考えていなかったのに…強制力なのかストーリーが変わるような手は悉く失敗してしまう我がブラックオパールを救うにはどうしたらいいの…)
ベルティーユはあまりの悔しさに爪を噛んだ
(ハーレムエンドを迎えたら…あの続編が現実になる…?)
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ベルティーユはそれから打って変わって愛花を虐め抜いた。取り巻きを率いて愛花にいびること日に7度、学園の討伐演習では毎回魔物を襲撃させ、暗殺者や暴漢を送り込むこと13回…(双子は暴漢襲撃デートが一回で済む)
ベルティーユの目的を達成するには、再現できるイベントを何回も起こし、攻略者の好感度を全員上げる必要があるのだ大聖堂は一回しか焼けない。
「忙しい…忙しすぎる!」
暗殺者なんて在庫切れしてしまって、最初の方に使った暗殺者を脱獄させて再利用した。誰かおかしいとは思わないのだろうか?!
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「また暗殺者…!きっとベルティーユ様だわ…本当にひどい」
愛花は騎士に抱きつき震えるフリをした。
(でもこれで騎士様の好感度は80を超えたわ…ベルティーユ様ってバカなのかしらゲームどおりで笑えちゃう)
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そして遂に断罪のときが来た。
正統派王子シュヴァリエが高らかに言う
「ベルティーユ・ブラックオパール!聖女を殺そうとしたお前に貴種たる資格はない!」
聖女愛花を守るように7人の男たちが囲っている。まさしく『聖女と7人の王子様♡』のハーレムエンドスチルだ。ベルティーユは手を後ろに回され乱暴に取り押さえられながら思った。
(ようやくハーレムエンドに到達したのね…でもこれが終わりの始まりよ…)
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父が王城に送り込んでいたスパイによって処刑前に地下牢から助け出されたベルティーユは、一目散に王城を目指す魔物を横目にしながら呟いた。
「やっぱり続編が始まったのね…」
歴史ある王城を覆い隠すように、無数の魔物たちが集っている。きっとその中心にいるのは愛花を囲む7人の男たち。
実は聖ナナにはソシャゲの続編があったのだ。
聖ナナはノベルゲームであったのに何をとち狂ったのかアクションゲームになり、シナリオも不評であったため、一年とすこしてサービス終了してしまった。
1周年記念イベントのストーリー(短い)でそのソシャゲ版がハーレムエンドの続きであることがわかるのだが、その頃には多くのプレイヤーが離脱していた、愛花もそのうちの1人だったのだろう。
聖ナナの続編は無限湧きする魔物を倒し続けて生存時間を競うシステムだった、魔物たちは決して止まらない、いつか彼女たちの悲鳴が途切れる瞬間がくる…
ベルティーユは静かに目を閉じた。
「これで王家は滅ぶ…少なくともブラックオパール家は守られたわ」
見てくれてありがとうございました(^人^)
続編はヴァンサバみたいなモノを想像してます
シリーズ続いたゲームがマンネリ打破のためか違うジャンルに手を出すことってありますよね…
IP物のソシャゲだとシナリオ微妙なことになりがち




