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二人の決戦は夏祭り~両想いの可能性にかけて~

作者: アオ

みなさんこんにちは!アオです!

久しぶりに短編小説を書きました!

今回は「二人の決戦は夏祭り~両想いの可能性にかけて~」です!

少し長いかもしれませんがぜひ最後までお付き合いください!

【#1 これまでの恋物語】

(かい)ってさ好きな人とかいないの?」

中学に上がって二カ月が経とうとしていたときに上野舞華(うえのまいか)が尋ねてきた。

「いないよ。生まれてこの方一度も恋愛を経験したことがないから」

「やっぱりそっかぁ~……最近さ、好きな人というか気になる人というかが

 できたからさちょっと相談に乗ってほしいなって思って」


彼女とは小学校三年生のころからの付き合いだ。幼馴染とかではないのに

なぜか小三のときからずっとクラスが同じだ。腐れ縁なのかもしれない。

「へぇ~……舞華も俺と同じでこれまで恋愛をしてこなかったよな?」

「うんそうだよ。それで、その人が後ろの席の人で……」

「あ~あの人か。でも中学になって初めて一緒になったわけだから

 あまり話したことがないよな?」


「うん、私もさ恋愛初心者だから助言がほしくて」

「……舞華が恋愛初心者なのはわかるがなぜ恋愛超初心者の俺に相談するんだ?」

「私には男友達が少ないからね!友達にも相談してるけど異性の意見って

 結構大事かなって私的には思ったから!」

「なるほど。とりあえず積極的に話に行ったら?」

「そうだよね!まずは仲良くなるところからだよね!」


ということで翌日から舞華はその人に猛烈にアタックするようになった。

彼女はかなり元気でパワーがあるからやろうと思ったことはすぐに

行動に移すタイプだからそういうところだけは見習いたい。


そして猛烈にアタックするようになってから一か月後……

二人はかなり仲良くなりとうとう遊びをする約束までこぎつけた。

さすがに二人だけとは言わないがそれでも彼女にとっては大きな進歩だ。


その報告を受けた日、俺はまるで自分のことのように喜んだ。

ここまで協力してきた友達の恋が実る可能性があるのだから。

「よかったな……舞華、一つ相談に乗ってもらっていいか?」

「おっ……どうした?もしかして恋の相談!?」

俺が何も言わずにうなずくと彼女は身を乗り出して話を聞いてくる。


「やっと海にもその時期が訪れたのかぁ~。それで相手は誰?」

「……部活動の部長さん……」

俺が恥ずかしさを必死にこらえながらそういうと舞華は数秒考え

「あぁ~!生徒会に入ってるあの人でしょ?」

俺が所属している部活動、クイズ部の部長さんで生徒会にも入っている。


「そっかぁ~……ライバルは多いけどねぇ~……」

舞華の言う通りその人はかなりモテる……同級生はもちろん時には

先輩や後輩からも告白されるという。その中で付き合った人数はゼロ。

「だよな……どうしたらいいかな?」


「ん~……海が私に行ったみたいに積極的に話してみるといいと思うよ。

 部活が同じなら部活の話題で話しながら帰ってもいいかもしれないね」

「なるほど……わかった、参考にしてみるよ」

「うん!また進展があったら教えてね!」

そうしてお互いの恋を成功させるべくお互いに相談に乗ったり乗られたりした。


そしてその年の冬。舞華からうれしい報告があった。

「なんとクリスマスにイルミネーション見に行くことになった!」

「おぉ~!!おめでとう!とうとうそこまで行けたか」

相談を受けてから実に半年以上が経った……

しかもこのイルミネーションは二人きりで行くらしい……完全にデートだ。

「うれしすぎて心臓が張り裂けそう……あ~早く冬休みにならないかなぁ~」

彼女の笑顔は完全に恋をしている乙女だった。


「そういえば海も方はどうなの?最近はあまり報告を受けないけど」

「……あれから何も進展がないよ……たまに一緒に帰るくらいの仲で終わってる」

「そっかぁ~……なんかクイズ関係のイベントに行ってみたら?

 部活関係だから先輩も一緒に行ってくれそうだしどうかな?」

「確かに!クイズ関係のイベント探してみる!」

舞華の助言を受けながら俺の恋も一歩一歩確実に前へ進んでいた。


冬休みに入り一週間ほどが経過した12月26日……

俺は舞華の家に呼び出された。話がしたいと言われてきたのだが……

すごく嫌な予感しかしない……頼むウソであってくれ……

祈りながら舞華と会ったときの顔はまさに泣く寸前の顔だった。


部屋に上がらせてもらうと舞華がいきなり泣き出した。

「落ち着けって……とりあえずこれで涙を拭け」

「……あ゛り゛……か゛と゛う゛……」

数分後、ひとしきり泣いた彼女はぽつりぽつりと話し出す。

「昨日ね……イルミネーションに行って……告白したの……」

「うん」

俺は彼女の声を聞き洩らさずしっかり聞く。


「……最初こそね……驚いていたけど……笑って……うっ……

 優しく振られた……あぁ……」

状況を端的に俺に伝えると再び泣き出す舞華。

いつもなら絶対にこんな姿を俺にも見せないはずだ。いつも元気で

パワーがあって決して弱い姿を見せない彼女……

よっぽど彼に対する思い入れが強かったのだろう。


再び泣き止んだ彼女は

「ごめんね……ずっと応援してくれていたけどこんな結果になって……」

「全然……今一番つらいのは舞華だから人の心配なんかせずに

 ひたすらに気持ちを吐き出していいよ」

俺がそういうと再び舞華は泣き出す。


結局その後もひたすらに舞華の話を聞いたり泣く姿を見たりで

三時間くらい付きっ切りだった。

「今日はありがとう。おかげでだいぶ気持ちが軽くなった。

 なんとか新年気持ちを切り替えて迎えることができそうだよ」

「それならよかった。じゃあ体調に気を付けてね。よいお年を」

「うん!海もね!よいお年を!」


翌年、新学期が始めり舞華のことが少し心配だったが登校したときの

様子からそんな心配は不要だったことがわかった。

「あけおめ~!」

「あけおめ。相変わらずテンション高いな。切り替えも早いし」

「こう見えても実はまだ引きずってるんだよ。多分もう数か月は引きずる」

そうは言ったものの彼女は笑っていた。完全に心配はいらないようだ。


「だよな。あれだけ思っていたんだからな。でも引きずりすぎはよくないからな」

「わかってるよ!さて次は海の方を応援しなくちゃ!」

自分が失恋をしたというのに人の恋愛の応援ができるのかが不思議だ。

「まあな……それと報告だが、冬休み中に一度クイズのイベントに先輩と

 一緒に行ってきたよ。舞華がいなかったらこんなことできなかった」

「よかった~……これでまた一歩前進だね!」


舞華が失恋をし俺は恋愛を継続という形で一年生が終わった。

二年生でも舞華とは同じクラスでよく恋愛相談に乗ってもらっていた。

「……やっぱり俺には高嶺の花過ぎるのかな……」

舞華に相談中、俺はそんなことをため息まじりで愚痴る。

「そんなことないって!クイズ関係のイベントにも二人だけで行ってるんでしょ!

 諦めるにはまだまだ早いって!引退まであと半年あるんだし!」

「そうだな、もう少しだけアタックしてみるよ」


しかし現実は辛いもので、俺が意気込んだ一カ月後……

「……やっぱりモテるから仕方がないよな……」

「よしよし……今日くらい声を出して泣いていいからね」

俺は失恋した……同じクラスの人に告白されまさかのその人のことを好きだった

ようで晴れてカップルになったそうだ……その分俺に対するショックは大きい。


「ありがとう……でももう少しだけ我慢するよ。先輩が部活動を

 引退してからでも遅くないと思うんだ」

「海は強いね……私だったら一日中泣いてるよ」

そう言った舞華に俺は苦笑するしかなかった。

そして先輩が部活動を引退して俺の恋の行方は完全に幕を閉じた。


【#2 舞華の想い】

中学三年生の夏……体育の授業でひどくこけてしまった……

自分一人では立てないくらいに派手にこけてしまい助けを求めようとしたが

友達や先生は向こうの方におり一向に気が付いてくれなかった……

私が声を上げようとした瞬間

「大丈夫?立てるか?」


いつもの彼の声が聞こえた。彼の質問に私は頭を横に振る。

「仕方がないな……ほらこれで立てるだろう」

そう言って彼は肩を貸してくれた。

そしてそのまま先生の方へ行き保健室へ付き添ってくれた。


肩を貸してくれた……つまりそれはゼロ距離を意味する……

途中、他の男子たちに冷やかされていたがそんなのお構いなしに

保健室へ付き添ってくれた……その間、私はぼーっとしていた。

自分の顔が赤くなっていったのを感じた。私はそっぽを向き海に顔を

見えないようにした。その後、保健室の先生に引き渡されて海は戻っていった。


「あ~……派手に擦り剝けたわね……消毒と絆創膏を張っておくわね……

 って顔も真っ赤だけど大丈夫?少しベッドで寝ておく?」

「……そうさせてもらいます……」

私はそのままベッドに横になった……それでも顔の赤さは収まらなかった。

さらに心臓がドキドキしていてその音を聞くたびに顔は赤くなっていった。


さっき横目で見た海の顔ってあんなにかっこよかったっけ……

いつもよりキラキラしていてかっこよかった……

すると次々にこれまでの海の笑顔がフラッシュバックする……

思い出す度に私の顔はさらに熱くなっていった……

……何なのこの気持ち……もしかして……恋……?


一時間後、怪我だけだったため次の授業には戻った。

「おっ、舞華大丈夫だったか?かなりひどくすりむいていたが?」

「だっ……大丈夫わよ!……あっ……あっ……ありがとう」

「おう、どういたしまして。困ったら声をかけろよ」

「かけようとしたわよ……その直前に来てくれたから……」

「そうか、まあ舞華が無事でよかったよ」


彼がそう言ってニコリと笑った……私の顔はすぐに真っ赤になった。

急いで自分の席へ戻って深呼吸をする……

やばい、いつも普通に話していた海なのにいつも通りに話せない……

やっぱり……恋なのかな……?

その疑問が確信へと変わるのはそこまで時間を必要としなかった。


気が付けばいつも海を目で追ってしまうようになっていた。

それを見かねた友達がにやにやして私に話しかけてくる。

「あれぇ~、なんだか恋する乙女って感じの目だね」

「ばっ……バカ!!声が大きい!聞こえちゃうじゃない!」

私は友達よりも大きな声でそう注意をして海の方を見る……

よかった……友達と談笑していて気付いていなかったようだ……


「なるほど……相手はわかったわ。前にあのことがあったからねぇ~」

「……私どうしたらいいかな?」

「猛烈アタックすれば舞華の可愛さなら一撃だから大丈夫だって!」

友達にそんなことを言われて私は顔を真っ赤にする。

「やっぱり恋愛は見るに限るわ~……これから面白くなりそう」

そう言った友達に内心苛立ちを覚えた。


【#3 海の想い】

俺の失恋騒動があってから一年半……ついに俺たちは高校生となった。

「それにしても俺たちずっと同じクラスだな」

「ね……でも話しやすいからいいんじゃない?」

確かにと思い俺は舞華の言葉にうなずく。高校に入った初めてのクラス分けでも

舞華とは同じクラスになった。この高校は通っていた中学から少し離れているため

中学の同級生が少ない……そのためからかわれることがない。


からかわれるというのは……いつも彼女と話しているとたまに男友達が

"良い感じですねぇ~"とチャチャを入れてくるものだ。

毎回やめろと言っているのだがなかなかやめてもらえなかった。

実はいつからか舞華のことを意識してしまった……


最初こそただの友達だったがそれぞれの恋愛や日常生活を通して

俺は彼女に惹かれていった……いつから彼女のことが好きかはわからない。

チャチャを毎回入れられているので舞華がそれに気が付いたときもあった。

正直、そのとき俺は終わったと思った……しかし俺の気持ちなんかお構いなしに

頬を赤く染めていた……そんな表情をすると期待してしまう……

でも彼女は俺のことをただの友達としか見えてくれていない……もどかしい恋だ。


それに高校に入って彼女は一気にモテ始めた。いわゆるモテ期に入ったのだろう。

それも相まって彼女が誰かのことを好きになるのは時間の問題かもしれない。

俺のアドバンテージといえば小さいころから一緒にいる……

ただ、それだけのことだ……それ以上でもそれ以下でもない……

近いのに遠い存在……なんだか前の恋と同じことが悩んでる……


【#4 夏祭り~海の決意~】

いつもの日常が流れていきあっという間に高校生活初めての夏休みに入った。

「舞華、またあそこの夏祭りに行かないか?」

俺は内心めちゃくちゃドキドキしながら舞華を夏祭りに誘う。

「いいよ!今年は浴衣を着て行こうかな~」

何気ない彼女の一言で俺はさらにドキドキさせられた。

彼女の浴衣姿なんか見たら理性を保つことすら困難な気がしてきた……


それでも彼女を夏祭りに誘うことができて大満足だ。

確かにこれまで何度か夏祭りに彼女を誘ったことはあった。

しかし今の俺の気持ちでは全く心構えが違う……しっかり準備していかないと。


そしてそれ以上に迷っていることといえば……告白だ……

もちろん勝率が低いことは重々承知の上だ。ただモテるからこの先

彼女にとって告白なんて日常茶飯事になってしまうかもしれない。

そうなってしまったら、ますます俺の勝ち目はなくなる決まっている。

それまでの勇気については心配ないと思う。夏祭りの夜なんてだいぶ

テンションがおかしくなってノリで言ってしまう気がするからだ。

とにかく俺は夏祭りを心待ちにした。


【#5 夏祭り~舞華の決意~】

やばいやばいやばい……家に帰ってきても私はずっとその場をうろうろしていた。

海から夏祭りに誘われちゃった……これまで確かに私からも彼からも誘ったりは

したが、彼のことを意識してしまっている私にとってはやばい状況だ。

しかも何よ……"浴衣着て行こうかなぁ~"なんて!実際告白しているような

ものじゃない!……ってそれよりも私って浴衣あったっけ!?


「お母さん、私の浴衣ってある?」

「ないわよ。これまで欲しいって言わなかったからね」

「そんなぁ~……」

「……そういうことならお母さんに任せなさい!」

そう言ってお母さんはどこかへ行ったと思ったら大きな入れ物を

抱えながら戻ってきた……

「って!?もしかしてこれってお母さんの浴衣!?」


「そうよ。押し入れにしまっていたから少し埃がかぶっているけど

 そうじすれば使えるわ。それにもう浴衣使わなくなったから!」

そう言ってお母さんは親指を立てて私に浴衣をくれた。


そして私は一度部屋に戻って自分を落ち着かせる……

この状況で落ち着けるわけない!好きな人から祭りに誘われてドキドキ

しないわけがないでしょ!あぁ~……早く祭りにならないかな……

……告白しようかな……なんてことが私の頭によぎった。


【#6 決戦の夏祭り】

俺は集合場所に二十分前に到着した。当たり前だが彼女の姿はない。

わくわくしすぎてこんな時間に家を出てしまった……そういえば

浴衣で来るって言っていたよな。私服で来てしまったけど何か別の

服装にすればよかったかも……失敗した……


五分後、集合時刻の十五分前に舞華がおぼつかない足取りでこちらに

向かってきているのが見えた。俺はすぐに彼女のもとに駆け寄った。

「大丈夫か。なんか足取りが変だったけど」

「大丈夫!大丈夫!下駄を履いてきたから少し慣れないだけ!」

「たくっ……無理はするなよ」


彼女は言っていた通り浴衣で来た。いつもに増して可愛すぎるでしょ……

彼女を見る度に赤面しそうでなかなか彼女と顔を合わすことができない。

「とっ……とりあえず何か食べるか」

「うんそうだね!夏祭りと言ったらやっぱりりんご飴かな~」

「いいな。よしっ!行くか!」


人ごみをかき分けながらなんとか屋台のところまでたどり着く。

「焼きそばとかもある!めちゃくちゃまようぅ~」

彼女はそう言いながら二つの屋台を交互に見ていた。

「迷うなら二つ食べれば?」

「確かに!なんでそんなことに気づかなかったんだろう!?」

舞華は自身で驚きながらも焼きそばとりんご飴を両手に持つ。

それを横目に俺はりんご飴をほおばる。


「んん!やっぱり祭りのりんご飴って一段とおいしく感じるよな」

「だよね~……ってあぁあぁ~」

石でつまずいたのか彼女が倒れそうになった。ぎりぎりのところで

俺は彼女を受け止めた……やばい心臓が……

「だっ……大丈夫か?」

なるべく平常心を保ちながら俺は彼女にそう問いかける。

「うっ……うん、大丈夫……ありがとう……」


彼女は赤面しながらそう言う……期待しちゃうからそんな笑顔しないでくれ……

少し気まずい空気が流れながらも俺たちは人が少ないところへ移動する。

「さっきはありがとう……焼きそばのソースついてない?」

「大丈夫だって。まあ転んだときはびっくりしたけどな」

俺が笑いながら答えたことによって彼女も笑いだして気まずい空気は和んだ。


「海は何かやりたいものある~?」

「ん~……射的とかはやってみたいな。でも舞華のやりたいことに合わせるよ」

「海って本当に優しいよね。たまにはわがまま言ってもいいのに」

……だったら付き合いたいよ~……でもそんなこと言っても無理に決まっている。


「アハハ、じゃあ射的をやりに行ってもいいか?」

「もちろん!私の腕前を見せてあげるんだから!」

「お、言ったな。じゃあその腕前見てあげようじゃないか」

そんなことを笑いながら言って俺たちは射的のところに移動した。


射的を並んで待っていると"わ~キャー"言いながら近づいてくる女子たちがいた。

「舞華ちゃん久しぶり~!どう?部活順調?」

「お久しぶりです、先輩。はい!これから夏の大会があるので奮闘中です!」

「頑張ってるね~……それで隣の子は彼氏さん?」

「かっ……かっ……彼氏!?じゃないですよ!幼馴染みたいな関係です!」

俺は苦笑いしながらその先輩に軽く会釈した。

「え~、そうなの~……普通にカップルに見えるんだけどなぁ~」

「ちっ……違いますから!」

赤面しながらそういう彼女につられて俺も赤面してしまった。


「ごっ……ごめんね。先輩があんなこと言って……」

「……いっ……いや大丈夫だよ。それにしても元気ある先輩だね」

なるべく気持ちを悟られないように俺は話題を変える。

「うん、高校に入ったときに三年生の先輩で優しく教えてくれたからね~

 たまにああやって偶然会うときがあるんだよね」

そう言って先輩のことを語りだす舞華は楽しそうだった。


「あっ!あのぬいぐるみ小さいころ欲しかったやつだ!」

射的の景品が見えてくるといきなり舞華がそう言いだす。

「射的得意だから取ってあげるよ」

なんとなくかっこつけたくなった俺はそんなことを言う。

「大丈夫だよ。それにあれだけ大きいといくら得意でもさすがに無理でしょ」


そして話しているうちに射的の番が回ってきた。

さっき言った通り射的を得意で狙ったものは50%くらいで手に入れれる。

「……えいっ!」

最初の一発目で見事、舞華が言っていたぬいぐるみをゲットした。


「……はい、小さいときから欲しかったんだろ」

俺はそう言って舞華にぬいぐるみを渡す。

「べっ……別になくてもよかったのに……ありがとう……そのっ……

 打つ姿……かっ……かっこよかった……」

ぬいぐるみを抱きしめてうつむく彼女……バカみたいに赤面する俺……


やばいやばい……そんなこと言われたら少しくらい期待しちゃうじゃないか。

止めてくれ、俺のためにもそんな期待させることは言わないでくれ。

そんなことを思いながら二人で屋台を歩く。

ちなみにさっきの射的で舞華は取れなくて残念賞をもらっていた。


その後少しだけ屋台で見つけた食べ物を食べていると……

「この後、7時30分より打ち上げ花火が始まります。広場が通常観覧席と

 なっておりますのでよろしくお願いいたします」

と放送が入った。それを聞きつけた他の人たちが続々と広場に集まってくる。

「……広場よりももっといいところ知ってるからそっち行こうぜ」

俺がそう提案すると舞華はうなずく。


人の波に逆らうようにして目的地へ進んでいく。

しかしこれだけの人がいるため思うように進むことができない……

「舞華、大丈夫か?……舞華?」

後ろを振り返ると舞華の姿がなかった……くそっ……離れたか……

「舞華!舞華!舞華!」

人ごみをかき分けながら()()()()の名前を叫ぶ。


すると向こうの方から"海!"と俺の名前を呼ぶ声がした。

俺はすぐにその声の方向へ駆けつけた。いた、舞華だ。

しかし人の流れによってさらに向こう側へ流されてしまう……

俺は手を伸ばして舞華の手を握る。恥ずかしい……でも今はそんなことを

気にしている場合ではない。導くようにして俺は人の波に逆らっていく。


何とか人ごみから脱出することができ、人通りが少ないところへ向かう。

そしてここまでずっと舞華の手を握っていたことに気が付く。

「っ……ごっ……ごめん……忘れてた……」

「ん……うんん、大丈夫。ありがとう」

そう言って笑う姿に俺の胸はドキドキしていた……


数分歩き、町全体……とまではいかないがそこそこ見渡せる場所に着いた。

そしてタイミング良く、花火が打ちあがり始める。

「こんなところがあったんだね。遠くまで見渡せて綺麗!」

彼女がそう言って喜んでいる姿を見るだけで俺はうれしかった。


俺も目線を花火に移す……好きな人と一緒に見る花火ってこんなにも

綺麗に感じるんだ……すると横から視線が送られてくるのがわかった。

「ん?どうしたんだ?」

「なっ……なんでもない。ただ……この時間が一生続けばなって思って」

そう言ってまたもや俺のペースを乱してくる彼女……


そんな期待させるようなことやめてくれよ……

俺がみじめになるだろう……俺が浮かれるだけだろう……

もう我慢の限界だ!俺は意を決して想いを打ち明かし始める。

「舞華、俺は舞華のことが好きだ!大好きだ!何気ない会話でもうれしくなるし

 一緒に適当にどこかへ行くことも楽しかった。そして今のこの時間も

 永遠に続いてほしいと思ってる……それくらい好きだ!付き合ってくれ!」


夏祭りの効果というべきか……普段の俺なら絶対に言えない胸の奥の言葉まで

洗いざらい全て彼女に想いを伝えた。後半、自分が言っているだけで爆発

しそうになった……でも言い切った……これが俺の気持ちだ。


「っ……そっ、そういうところが海のいいところ。私もずっと海のことが

 好き。大好き。ずっと片思いだと思ってた……

 あれだけアピールしたのに全然私の気持ちに気づいてくれなかった!

 そんな海のことが大好き!よろしくお願いします!」


うそ……信じられない……片思いだと思って玉砕される気持ちで告白したけど

まさか舞華も好きでいてくれたなんて……俺はうれしさでいっぱいだ。

「えっ……本当!?やばい、うれしすぎて言葉にできない」

「先に告白してきたのはそっちじゃない……わっ……私もうれしい……」

そう言ってほのかに頬を赤く染める彼女。


【#7 エピローグ】

花火の打ち上げが終わり、俺たちは余韻に浸っていた。

「全然現実味がない……いつから好きだったの!?」

「……いつの間にか好きになっていたよ……自分でもわからない」

俺はそう言って彼女に笑いかけた。すると彼女も笑い

「なにそれ……手つないでいい?」


俺の真横に立ってそういう彼女に俺はドキッとした。

「うっ……うん……うれしい」

それだけ言って彼女の手を握る。女の子の手ってこんなにも小さいんだ。

彼女の体温が伝わってくる。それだけで俺は幸せだ。


夏休み明け、俺たちがカップルになったことはすぐに学校中に広がった。

もともと仲が良かったこともあり一部の人では"まだかまだか"と

思っていたほどだったらしい……まさかそこまで期待されていなんてな。

でもとにかく付き合えたことがうれしかった。

読んでいただきありがとうございました!

夏ということで"夏祭り"をテーマにしたものを書きたいと思い

書かせていただきました!お互いの恋愛を手伝っていて気が付けば

お互いが好きになっていた……個人的にかなり好きなストーリーです!

お互いの心情を交互に書いていたので読者の皆さんは

"早く付き合ってくれないかな"と思っていたことでしょう!

それでも必死に頑張る彼らの恋模様を描いてみました!

よければ評価やブックマークをしてくださるとモチベにつながります!

それでは今回はこの辺で!アオでした!

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