2.人類の電脳世界への移住と「階級」
――2102年、NEUROSHIFT計画、始動。
人類の電脳世界への“移住”が始まった
各国は人々の肉体を冷凍保存し、深海施設で管理した。
用意された”理想”
だが、電脳世界でも“死”は存在していた。
意識を完全に破壊されることで、人は本当に死ぬ。それは魂と呼ぶべき何かを失う行為だった。
AIには人間に危害を加えられないよう、根本的な制約が施されていたため、AIが人間を制圧することは不可能だった。
「衣食住を失わない世界では、
人間は“自我”を保てない」
確かに問題は多かった
そこで、この世界の秩序と自我の維持を目的として、「階級制度」が導入された。
その基準は、生前の行い、社会的地位、功績、そして犯罪歴など。
4つの階級に分けられ、階級が上がるほど、電脳世界における「創造への干渉権限」が大きくなる。
第1階級:エデン《天国》
・権限: 与えられた領域の創造・改変/記憶と物理法則の書き換え 等
・対象者: 電脳世界の設計者・統括AI・天才科学者・NEUROSHIFTの原初コード保持者 他
・労働義務: 免除(資源・資金ともに管理する立場)
第2階級:オーバーシア《管理層》
・権限: 領域管理/ルール運用の一部変更/物理法則・領域への一部干渉/記録へのアクセス
・対象者: 上級研究者・旧国家上官以上・極大な支援者・高名な人物
・労働義務: 下階層の監視及び管理・司法秩序維持
第3階級:レジデント《市民層》
・権限: 私有空間の所有/軽度な構造変更/定められたプログラムの実行
・対象者: 一般移住者(90%がこの階層)
・労働義務: 標準的な仮想労働が必要(住居確保・一般的な娯楽 等)
第4階級:ゲヘナ《八大地獄》
・権限: なし
・対象者: 犯罪者/逃亡者 等
・労働義務: 無し だが、八つの苦痛を与えるシステム下に置かれる
まるで死後、閻魔に裁かれるような構図である。