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豆じゃない木

 むかしむかし、貧しいけれど心のやさしい少年、ジャックがおりました。

 ある日、おかあさんが言いました。

「ジャック、うちの大事なヤギを売ってきておくれ。パンを買うお金がないからねぇ」

「はーい」

 ジャックは、ヤギを連れて村へ向かいました。

 でも途中で、妙な帽子をかぶったおじいさんに出会いました。

「そのヤギ、豆と取りかえっこしないかね?」

 ジャックは言いました。

「それ、ぜったいまずい豆じゃない?」

「いやいや、この豆はちがうんじゃ。そもそも豆じゃなくて種じゃ。豆じゃない木が生えてくるんじゃよ!」

「豆じゃない木……?」

「うむ。豆じゃない。なにかは、朝になればわかる」

 あやしすぎましたが、なぜかジャックはその豆じゃなくて種とヤギを取りかえることにしました。

 そして家に帰ると、おかあさんは泣きました。

「なんなの、この豆? 豆でもないの? 種? せめて豆であってほしかった!!」

 がっかりしながらも、ジャックは豆じゃない木がなる種を庭に植えて寝ました。


 次の日の朝。起きて外を見ると、そこには空に向かってぐんぐん伸びる、巨大な木……

 ではなく、巨大なオレンジ色の何かが……

 ジャックはそのオレンジ色の何かを見たことがありました。

「……あれ、にんじん?」

 でもそれは、にんじんのようでにんじんでなく、バナナのようでバナナでもなく、とにかく、すっごくでかい何かでした。

 ジャックはそれに登ってみました。

 ぐんぐん登ると、雲の上にとびだしました。


 雲の上では、巨大なテーブルと、巨大なカップと、そして、巨大な巨人の奥さんがティータイム中でした。

「まあ、いらっしゃい。ケーキ食べる?」

「えっ、いいんですか?」

「いいわよ。でもうちの夫は誰かがケーキに触ると怒る病なの。こっそり食べてね。」

 ……もちろんバレました。

 巨人が戻ってきて、ジャックはびっくり。巨大な巨人の奥さんのさらに倍ぐらい大きな大きな巨人だったのです。

「俺のケーキをつまみ食いするやつはどこのどいつじゃ!」

 巨人はかなり怒っていました。

「あの、つまみ食いじゃなくて、ちょっと味見しただけで……」

 ジャックはかなり苦しい言い訳をしました。

「あ、そうなの? じゃあ一緒に食べよ?」

 とても大きくて怖そうな顔をしていますが、実はとてもやさしい巨人でした。


 その日から、ジャックは雲の上でケーキ作りを習い、地上に戻ってからは、巨大な何かを利用して「ジャックと不思議なにんじんケーキの店」を開きました。

 にんじんのようでにんじんでない何かは色あざかやで控えめで上品な甘みがあり、ジャックのケーキは人気が出ました。

 おかあさんもにっこり。豆じゃない木がなる種と交換したヤギも帰ってきました。なぜか。

 そしてあの妙な帽子をかぶったおじいさんもジャックのケーキ屋さんに来店してこう言いました。

「おかしいのう。ほんとうはダイコンの木だったんじゃよ」

 ジャックは言いました。

「もうなんでもいいです」

ジャックと豆の木より

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