表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

オオカミと赤ずきん

 むかしむかし、ある森に、一匹のオオカミが住んでいました。

 そのオオカミは、とても繊細で、人間がちょっぴり怖いと思っていました。

 けれどある日、森に赤いずきんをかぶった少女がやってきてから、オオカミの生活は一変しました。


 おばあさんの家に向かうという赤ずきんが、森に入ってきました。

 森の緑の中に赤ずきんの赤は鮮やかで、オオカミの目を惹きました。

「オオカミさん、こんにちは!」

 と赤ずきんに笑顔で話しかけられて、オオカミは足がすくんでしましました。

(どうして人間って、あんなにまっすぐ目を見てくるんだろう。怖い。でも、ちょっと、きれい。)

 オオカミは赤ずきんに返事をすることなく無事におばあさんの家に着けるかこっそり後ろから見守ることしかできませんでした。


 赤ずきんがまた森にやって来ました。

 今日もおばあさんの家に行く途中で、赤ずきんはクッキーを持っていました。

「オオカミさんも食べる?」

 まさか、人間の子どもからクッキーをもらう日が来るとは思わなかったオオカミは、挙動不審になりながらも赤ずきんからクッキーを受け取りました。

 クッキーはほんのり甘くて、なんだか胸がキュンとしたオオカミでした。


 また赤ずきんがおばあさんの家に向かうのを確認したオオカミは、思いきっておばあさんの家に先回りすることにしました。

 おばあさんのふりをして赤ずきんを驚かせてみようと思いついたのです。

 思いのほか帽子が似合ってしまい、これは気づかれないかもしれないと、オオカミは布団に入ってわくわくしながら赤ずきんを待っていました。

「……オオカミさん、なんでおばあさんの格好してるの?」

 赤ずきんにすぐにバレました。

「……なんとなく」

 赤ずきんは爆笑して、

「じゃあ次は私がオオカミさんの格好する!」

 と楽しそうにオオカミと指切りをしました。


 ある日、赤ずきんが「森の中を案内して」と言いました。

 どうして人間は、怖いものに近づきたがるのか、とオオカミは不思議に思いましたが、赤ずきんに森の中で一番美しい泉を見せてあげることにしました。

 赤ずきんはにっこり笑って言いました。

「この森、だいすき。オオカミさんがいるから」

 オオカミは泣いてしまうかと思いました。


 村から狩人がやってきました。

 赤ずきんが森でオオカミに襲われてるって噂があるとのこと。

 オオカミは咄嗟に身を隠しました。

 赤ずきんと狩人が話しているのが聞こえてきました。

「オオカミは君のこと襲ってくるだろ?」

「そんなことないです。森のオオカミさんは、わたしのお友達です」

 その瞬間、オオカミは泣きました。


 赤ずきんがオオカミへ手紙を渡しました。

「オオカミさんへ

 また森に遊びにくるね。

 でも、しばらく来られないかもしれない。

 おばあさんが風邪をひいちゃってうつるといけないから遊びに行けないの。

 でも、ずっと友達だよ。

 赤ずきんより」

 オオカミは、自分がオオカミでよかったと生まれて初めて思いました。


 ある森に、一匹のオオカミが住んでいました。

 そのオオカミは、とても繊細で、人間がちょっぴり怖いと思っていました。

 でも、赤ずきんに出会い、人間もオオカミもそんなに変わらないんだということに気がつきました。


 今日もオオカミは森の中で赤ずきんが来るのを待っています。

赤ずきんより

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ