表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2 聖女なのは全力で隠します

当面の生活費とやらを頂いた私は、お金の価値と近くの町の情報をもらい城を後にした。

城下町で暮らして良いと言われたが、この城の近くに住むのは危険な気がするので、どこか違う町で暮らしたかった。

ついでに自分のスキルというものがどんなものか確認したかったし、人目につかない森とかで試したい。

次の町までは森が続くが、人が何度も通っているせいか砂地の一本道ができており迷うことは無かった。

かなり城から遠ざかったところで、城下町で買ったパンを食べることにした。


何をしてても人間ってお腹すくのよねー。


パンといっても現世と違ってあんまり味無い・・サクサクじゃなくてガツンガツンって言っていいくらい硬い・・。

不満だらけでも腹はすく。とにかく食べなくちゃ。

水で流し込むように食事し、ほっと一息。

周囲に人目が無いことを確認して、もう一度ステータス画面を開いた。

やっぱり玉なんて触らなくても出てくる。なんでだろう。


「ん?」


画面がさっきと違うことに気づいた。

ほとんど一緒だけど、所有スキルのところに「弓」っていうのが追加されてる。

弓って、もう一人の子が持ってたやつじゃ・・・?

なんで私に同じスキルがあるんだろう。

頭の中はハテナマークの花嵐だ。わからないことだらけ。

けど、とにかくさっきは隠ぺいのスキルのおかげで、思ったとおりの表示を誘い出すことができた。

レベルの上から2ケタを削って、治癒以外のスキルは無表示にし、称号も適当に考えてつけた。

治癒魔術師が居るってことは、治癒のスキルがこの世界にあるってことなんだろうと、ほとんどあてずっぽ。

おかげで私はたいしたことない一般の平民ですよーんってことになり、ほっと一安心だけどね。


「とりあえずは生きていかないと・・」


魔術が存在する世界なら、私が現世で見てきたファンタジーものと似てるんじゃないだろうか。

何か自分に向いてる職を探して、生活できるようにならないと王様からもらったお金なんてすぐに尽きる。

何ができるんだろう。それを探さないと・・・。


パンくずが落ちた服をパンパンとはたき、私は再び歩き始めた。日が暮れる前に町には着きたい。

歩きながら周囲を見渡すが、背の高い木々が並び、気持ちよさそうに揺らいでいた。

なんていう名前の木なんだろう。

風に気持ちよく揺れる様子を見ながらふっと考えると


ぴこん


名前:トレノの木 特徴:縦に切れやすく、乾燥して薪を作るのに向いている


えっ?なんで?

なんでと考えたせいか、木々のステータスに加えて自分のスキルが表示された。


スキル:隠ぺい 自分及び周囲の人間のステータスなど改ざん。相手のステータスが分かる。隠し事が見抜ける。


なにこれ、ちょー便利じゃん。自分の事はごまかせて、相手のことは何でもわかるってことでしょ。

これは他の人間相手に使えるなと、ちょっとニヤリ。

他のスキルもどんな詳細なのか見ようかとしかけた時


「キャー!」


女性の悲鳴と一緒に大きな爆発音が聞こえた。私が進んでいる道の前方約200メートルくらい先。

確実に何かあったから悲鳴をあげているのだろう。そう思うと駆け出していた。

もう一度、爆発音。


到着したら死んでるとかはやめてよねえええええ。


嫌な展開を考えて急ぐが、女性は生きていた。

手には剣を持っている。銀髪のスラリとした女性。

服のすそあたりが焦げたように茶色くなっている。

剣を構えてキリリと睨んでいる方向を見ると、イノシシのでっかい版みたいな動物が見えた。


イノシシ汁・・・。


お腹がすいてるせいか、食べ物に結び付ける自分が情けない。

様子を見ていると、女性はイノシシを倒そうとしているようだが、すばしっこくて剣を当てられない。掠るだけだ。

なんか弱点ないのお?イノシシのステータスを探る。

あ、あるじゃん。


「そいつの頭。眉間のあたりに一撃当てて!」


私が大声で叫ぶと、女性は剣の刃を下向きに回転させ、突進してきたイノシシに突き刺した。


命中!


「すごい、やるぅ」


イノシシが動かなくなったのを見て草むらから出ると、女性はハァハァと息を弾ませながら剣を鞘に収めた。

私に向き直り


「体に傷つけても突進が止まらなかったが・・あなたの一言で弱点が分かり助かった。ほんとにありがとう」

「いいんですよ、そんなこと!それより、これ解体とかってできます?」

「え?解体?」

「そう!お肉とかめちゃくちゃおいしそう。食べたい!」


パンだけじゃお腹いっぱいになるわきゃない!

生のままかじりつきそうに言った私に対して女性はプっと笑い


「分かった。待ってて」


小型のナイフを取り出し、イノシシをさばき始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ