少年と蛇の守り神
遅くなってしまいすみません。久しぶりの小説投稿です。巳年に因んだ小説を書こうと思ったら二週間が経っていました。あと、この物語は夏が舞台です。楽しんで頂けたら幸いです。
「ゴンはまたおばあちゃんの所へ行ったのか?もう四日連続じゃないか。仏壇で祈ればいいのに。」
「あの子はおばあちゃん大好きだったからね。無理もないわ。」
「ねぇ、お兄ちゃん何処行ったの?」
家の中から父さんと母さん、そして妹の巳華の声が聞こえて来る。僕は花と昨日とったカブトムシの入った虫カゴと、昔おばあちゃんと一緒に編んだ赤いミサンガを持っておばあちゃんの墓地まで走った。
「おばあちゃん、暑いね。今日はね、カブトムシとって来たんだ。」
そう言って、おばあちゃんのお墓に花を添えてカブトムシを置く僕。けど、すぐにカブトムシは飛び去っていった。
去年の夏、僕の父方のおばあちゃんが亡くなった。82歳で、がんだった。僕はおばあちゃんが大好きだった。僕がここに帰って来ると、この地の神様の話をしてくれた。それにおばあちゃんの水羊羹は美味しかったし、一緒に編み物をするのも楽しかった。だから、僕は男子にしてはお菓子作りや編み物に詳しかった。おばあちゃんのお葬式では、わんわん泣いた。それから一年、今は夏休み中で父方の実家に二週間滞在している。そして今日も、おばあちゃんのお墓へ毎日手を合わせている。
「欲を言えば、もっとおばあちゃんのお菓子を食べたかったし、編み物も一緒にやりたかったな。また明日ね、おばあちゃん。」
そう言って、僕はおばあちゃんのお墓を後にした。
シャリン...何処かで鈴のような音がした気がする。
「なぁに、誰かいるの?」
辺りを見回すが、誰もいない。僕は何か、嫌な予感がして、直ぐに家に引き返した。
シャリン...。
また、鈴のような音がする。今度はさっきよりはっきりと。なんなんだろう、怖いな。
何か、いつもと空気が違う。けど、何処がおかしいのか、わからない。ただ、いつもと何かが違うのはわかる。必死に家まで走る僕。やっと家に着いた。
「ただいまー。」
下を向いて息切れしながらもはっきり感じた。おかしい、いつも帰って来たら真っ先に僕の所までくる妹が来ないどころか声すらしない。父さんの声も母さんの声も聞こえて来ない。そして次の瞬間、僕は慄いた。
「ゴンちゃん。おかえり!」
声がして、ゆっくり顔を上げると、
「ゴンちゃん、いっぱい走って来たんだね。水羊羹冷やしてあるよ。」
そこには、去年亡くなったはずのおばあちゃんが居た。
「おばあちゃん。」
何でここにおばあちゃんがいるのだろう。何かの幻覚?けど、今日変なもの食べたか?おじいちゃんの釣って来た魚のつみれ汁が美味しかったことは覚えている。
「あ、ゴンちゃん。おばあちゃんね、また編み物してみたの、綺麗に出来たか見てほしいの。」
僕は、これが現実ではないと気づきつつも、おばあちゃんの言葉に「いいよ。」と返した。おばあちゃんとリビングまで行く。おばあちゃんがテーブルに座り、カゴから編んで作ったコースターを取り出す。
「ほらこれ。ゴンちゃん赤いの好きでしょ。あげるから使っていいよ。」
困ったな、ほんとにおばあちゃんだ。僕は眼からにじむ涙を堪えながら、おばあちゃんを見つめていた。
「あ、水羊羹忘れてた。今切って来るね。」
「はーい。」
それにしても、何でこんな幻覚を見ているのだろう。けど、もう少しだけ、ここに居たいな。もう、おばあちゃんは居ない。でも、寂しいことには変わりない。そう考えているうちにおばあちゃんが水羊羹を切り終えて、台所からこちらへ来る。
「さ、切ってきたよ。」
おばあちゃんが切った水羊羹をテーブルに置き、そう言った。なんか、いつものおばあちゃんが切った時よりサイズが明らかにでかい。
「さぁ、食べましょう!」
おばあちゃんがフォークで水羊羹を食べ始めるのを見て、僕も食べ始める。
「甘い。」
「美味しいでしょ。」
「うん。」
ふと台所を見ると、さっきおばあちゃんが使ってた型のなかに水羊羹がほとんど残ってないことに気づいた。
「おばあちゃん、巳華と父さんと母さんの分がなくなっちゃうよ?分けておかなきゃ。」
「いらないよ、みんなの分なんて。」
おばあちゃんの言葉を聞いて戦慄する。いつもは僕のことと同じくらい巳華のことも可愛がっていて、父さん母さんにも優しいおばあちゃんが、急にそんなことを言うなんて。
「ひどいよおばあちゃん。巳華の分も残そうよ。」
「ひどいですって。あなたの為に作ったのに?」
「もういい!僕帰る!」
そう言って家を出ようとする僕。しかしすぐにおばあちゃんは僕の腕を掴んだ。
「もっとおばあちゃんと一緒に居たいでしょ?ずっと一緒なんだから。」
冷や汗が止まらない。やはりここは幻覚なのだろう。けど、ここから出る術がわからない。おばあちゃんの姿をしたおばあちゃんではない何かが、僕を抱きしめる。
「離して!」
返事はない。これはやばい、今すぐに逃げなくては、そんな思いとは裏腹に、どんどん締め付けが強くなっていく。やばい助けて...。そう声に出そうとした。が、
「は、いて。」
「?」
今度は遠いところから誰かの声がする。さっきと違って知らない声。
「吐いて!」
もう一度はっきり聞こえたと同時に、僕は猛烈な吐き気に襲われた。
「お、おげぇ...。」
僕はさっき食べた水羊羹を全部吐き戻した。そして窓が割れる音がしたと思うと、「おのれ、邪魔をするな!」
おばあちゃんではない何かの声と同時に僕は気を失った。
「ゴンジャくーん。赤口権蛇くーん!」
また知らない声がする。赤口権蛇は僕のフルネームだ。誰だろう。僕が目を開けると、森の中だった。けど、知らない場所じゃない。昨日カブトムシを取りに来た裏山の森だ。そしてルビーのように赤い眼で真っ白な身体の大きな蛇が居た。
「君は?」
「権蛇くん。君が権蛇くんだね!」
また幻覚なのだろうか、蛇が当たり前のように喋っている。けど、もうこれくらいじゃ驚かなくなってしまったようだ。
「君は?」
「あたしミシャ、この森の守神の娘!さっきは危なかったね。」
「守神?神様ってこと?」
「うん。」
喋っている時点で普通の蛇じゃないのは確実だから、僕はすんなり、「そうなんだ。」と言った。おばあちゃんが昔僕に話してくれたこの地の神様の話を思い出す。この森には白蛇様が居て、この森の周辺を守っていると。危なかったってどう言うことだ?さっきおばあちゃんではない何かの幻覚を見ていたことを知っているのか?もしかして...。
「君が助けてくれたの?」
「そうだよ。」
「ありがとう。けど、何で君は僕の名前を知っているの?」
「赤口景子と昔友達だったからだよ。」
赤口景子はおばあちゃんの名前だ。
「おばあちゃんと?」
僕がそう聞くと、ミシャが煙に包まれる。しばらく経つと、ミシャは白髪赤眼で白いワンピースを着た女の子になっていた。あまりに綺麗だ。
「そう。景子はね、昔ここで烏に襲われていた私を助けてくれたの。それにあたしの傷が治るまで家においてくれたの。だからお礼をしたいって言ったらね。『じゃあ、私の家族がここに来た時、守って。』って言われたの。だからこうして君を隣の森の神様の呪いから守った。」
さっきの幻覚は神様の仕業だったんだ...。
「それから景子は、人間の世界の色々なこと教えてくれた。景子は優しかったしみず...ようかん?ってやつも美味しかった。権蛇くん達のことも話してくれたよ。あと、編み物も見せてくれた。いつかあたしの分の編み物も編んであげるって言ってたから、楽しみにしていたんだけど、その前に景子、いなくなっちゃって。」
僕はおばあちゃんのことを思い出して、また涙が出そうになった。おばあちゃんの病気が発覚した時、既におばあちゃんは末期だった。それから3ヶ月位で、あっという間だった。もう、おばあちゃんはいない。やっぱり寂しいよ、おばあちゃん。
「じゃあ、やはり私の中にいたらよかったものを...。」
背後から中性的で凛とした声がする。振り返ると、蛙のような形のパーカーを着た僕より少し年上くらいの少年がいた。なんか、妙にオシャレだ。
「退がって。」
ミシャが構える。
「なんだよ。私はそいつが『もっとおばあちゃんと一緒いたかった』と言うから"作って"やったのに。」
「サイル、去って。あなたの居場所はここにはない。それに、権蛇くんだって嫌がってたでしょ?」
「ふん!人間がされて嬉しいことをするのが神の役目だろ?」
「サイルは無理矢理幻の世界に閉じ込められるのが嬉しいの?!」
サイル、と呼ばれたその少年は、寂しそうな眼でこちらを睨んでいた。ミシャが嫌がっていたと言っているのと"作ってやった"と言うことは、やはりさっきの幻覚をみせていたのは彼なのだろう。
「サイルは、ミシャと同じ神様なの?」
「そうだぜ、この森の隣の森のな。」
「ちょ、権蛇くん!」
僕はサイルの方を向いて、話し始めた。
「サイル、君なりに僕を気づかってくれたんだよね。ありがとう。けど、もういきなり幻覚の中に閉じ込めるのはやめてね。」
「権蛇くん...。」
「お前...。済まなかった。もうしない。」
「なら、大丈夫。じゃあ、みんなで水羊羹食べに行こう。さっき家で作って冷やしてあるんだ!」
「そうか、『みずようかん』って本当はどんな味がするんだ?」
サイルが、「?」マークを浮かべながらそう言うので、僕は思わず。
「え、知らなかったの?!さっき幻覚の中に思いっきり水羊羹出て来たのに?」
「私は別世界を作りお前の記憶から五感を再現してそれを"感じさせる"だけだからな。」
「みずようかんは、前に景子が作ってくれた。食べるとすっごい不思議な感じの、泥を固めた感じの...お、『おやつ』ってやつだった気がする!」
ミシャがそう説明する。
「泥を固めた?私に泥を食わせる気か!?」
「そうじゃないから大丈夫!サイルもきっと気にいるよ!」
僕は二人の手をとって、山を駆け降りた。
「お、おいお前!」
「みっずようかん!みっずようかん!」
あっという間に僕達3人は家まで着いた。僕が「ただいまー!」と声を出して家の扉を開ける。
「お兄ちゃん!その人たちはお友だち?」
巳華が玄関まで走ってくる。
「久しぶりに来たー!」
「ここが、お前の家か。」
「正確にはおばあちゃんの家だけどね。」
奥からお母さんが来る。
「あら、お友だち?」
「ミシャです!こっちはサイル。」
「...こんにちは。」
洗面台にて。
「じゃあ、手洗おう。手のひら出して。」
「?」
二人が手を僕の前に出す。僕は二人の手のひらに泡で出て来る石鹸を出した。
「な、なんだこの...ゾワゾワしてる白い何かは!」
「サイル、これは石鹸っていうの。久しぶりだなぁ。」
どうやらサイルは石鹸で手を洗うのは初めてだったみたい。
「こうやって洗うんだよ。」
手を擦りながら手首も洗って、サイルに手の洗い方を教える僕。この人は、案外覚えるの早いな。
「お母さん、水羊羹切って!」
「もー。そろそろ自分で切れるようになりなさいよ。」
僕は刃物が怖くて、包丁を使うのは基本的にお母さんに任せてる。しばらくすると、台所から均等に切られた水羊羹をお盆に乗せて母が来た。
「はーい。切りましたよー。」
「ありがとうお母さん。それじゃ早速、いただきまーす!」
「これが、みずようかんか。」
サイルがゆっくり一口食べる。そしてすぐにぱくぱく食べ始めた。
「なんだこの食べ物は、口の中で優しい感じがする。」
「景子の作ったみずようかんとおんなじ味だ!」
「あら、義母さんとお知り合いなの?」
お母さんが優しく聞いた。
「昔助けてもらった者です。」
と、ミシャが笑顔で返す。サイルのお皿に乗った水羊羹が猛スピードで消えていく。
「なぁ、これもっとあるか?」
三人でたくさん水羊羹を食べたその 後。ミシャが僕に聞いて来た。
「ねぇ権蛇くん。景子の編み物、見ていい?」
「ああ、おばあちゃんの編み物ね、いいよ。
「あみ?もの?」
僕は二人を、まだそのまま残してあ るおばあちゃんの部屋へ案内した。
扉を開けると、部屋一面、おばあちゃんの編み物の作品で埋め尽くされてい た。二人は目を見張っている。
「何回かこの家に来たことはあったけど。ここは入ったことなかった。」
「所々きらきら光ってるこの模様はなんだ?私はこれが欲しい。」
「ちょっとサイル!いきなりそれは...。」
「別にいいよ。」
「いいの!?」
ミシャがめちゃくちゃ驚いた顔で言った。
「これはおばあちゃんが趣味で作ったもの。もうおばあちゃんは居ないし、それに、おばあちゃんは作った作品を僕ふくめ色々な人にあげてたから。きっと許してくれるよ。」
「じゃあ、私はこの緑色の蛙みたいな何かを頂こう。」
「それはポーチって言うんだよ。ミシャもなんか選びなよ。」
ミシャが少し申し訳なさそうな顔で、
「い、いいの?」
「いいんだよ。それに、多分おばあちゃんはミシャの分の編み物も作ってくれているはずだし、まずはそれを探そう。」
「うん。けど、なかったらどうしよう。」
少なくとも、おばあちゃんは人との約束を破ることはしないはずだ。いつも作って欲しい約束したものは時間がかかってもちゃんと作っていたし。しかし、やはり不安なのは仕方ない。
「大丈夫、もし見つからなかったら、僕がおばあちゃんとの約束、引き継ぐよ。」
「どう言うこと?」
「僕が、ミシャの欲しい編み物、編むから。」
「...うん!」
そう会話して、おばあちゃんの仏壇に手を合わせると、僕らは生前におばあちゃんが作ったであろうミシャに作っていた編み物を探し始めた。確実にこの部屋の中に、あるだろうから、必死に探す。
おばあちゃんが編み物に使っていた毛糸や糸を整理つつ、探して30分が経過した頃。おばあちゃんの部屋の扉が開いた。
「おや?ゴンちゃん。その子達はお友達かい?」
おばあちゃんが亡くなるまで、ずっとそばに居て、看病し続けたおばあちゃんの旦那さん。おじいちゃんだ。
「おお、ミシャちゃんじゃないか!前に景子の水羊羹、食べてくれてた子だろ?最近会ってなかったから、元気そうで良かった。」
「景子の旦那さんも元気で良かった!」
「ねぇおじいちゃん。おばあちゃんがミシャに作ってあげた編み物を探してるんだけど、見つからなくて。おじいちゃん、どこにあるのか知らない?」
「あぁ、前に景子が赤いブレスレットを編んでいた所は見たぞ。『これはミシャにあげるの』って言ってたな。だが、今それがどこにあるのかは知らない。」
僕とミシャは、声を揃えて「そっかー。」と言葉にした。
「なぁ。」
サイルが僕達に話しかける。何かに気づいたのだろうか。そう思って後ろを見やると、サイルはクローゼットの上の段から顔を出していた。
「ここ、なんか見つけたぞ。」
人の家のクローゼットに勝手に入るのはちょっといかがなものかと一瞬思ったが、"なんか見つけた"?
「どうしたのサイル。」
「ほら、これ。」
サイルが古ぼけた箱を抱えて降りてくる。
「お前の祖母がミシャに残したものって、これなんじゃないか?」
箱を受け取る僕。机に置いて箱を開けると、中から赤くて太い、ジグザグのブレスレットが出て来た。ブレスレットの他にも、手紙も添えられていた。僕が手紙を読み上げる。
「ミシャへ、私の水羊羹を美味しいと言ってくれてありがとう。あなたは本当に優しい子だね。これをあなたに託します。私はもう長くはないから、私がいなくなっても、私の家族のことを守ってください。赤口景子より。」
ミシャが目を潤ませた。
「やっぱりこれだよ!おばあちゃんがミシャに残した編み物は!」
「良かった。景子、ちゃんとあたしとの約束覚えててくれた!」
僕とミシャが安心と感動に浸ってると、
「あ、ちょっと待て。」
サイルがまた何かに気づいた様だ。
「この編み物ってやつ、これで完成なのか?」
そう言われて僕は気づいた。確かにこのブレスレットにはまだ編棒が刺さったままで、全部は編みきれてない。いつもおばあちゃんの編んでいたところを見ていた僕には一目瞭然だった。
「確かに。どうしよう、まだ未完成だ。おばあちゃん、ミシャにプレゼントするのが楽しみすぎて、編む途中で先に手紙書いちゃったんだ。」
みんなでオロオロしていると、おじいちゃんが後ろから優しく声をかけてくれた。
「大丈夫さ。ゴンちゃんが最後まで編めば良いじゃないか。」
「え。けど、ミシャいいの?」
僕が迷っていると、ミシャはにっと笑いながら、
「いいよ、景子もそれを望んだはずだよ。それに、あたしにも編み物教えてよ。」
「それがいい。私にも教えてくれ。」
サイルも後押しした。
「じゃあ、編もうかな!」
「ここに輪を作って、そこに棒に引っ掛けた糸を入れる。これを繰り返す。」
「ふむふむ。」
「二人共、覚えるの早いね。」
「そりゃ、私達は守り神だからな。」
「完成だよ。」
遂に、僕はおばあちゃんが残した編み物を完成させた。
出来上がったブレスレットを渡すと、ミシャは大きな瞳を更にキラキラさせた。
「ありがとう権蛇くん。あたし、大事にする!」
おばあちゃん。見てる?僕、ちゃんとミシャに渡したよ!
僕が仏壇に置かれたおばあちゃんの写真を眺めていると、
「そう言えば、権蛇くんは、いつまでこの村に居るの?」
「あ、あと10日は居るよ。」
「そうか、じゃあそれまでにこの編み物を完成させないとな。最後まで教えてくれ。」
それから、僕達は編み物はもちろん、お菓子も作った。二人は巳華とも遊んでくれたし、川でも山でも遊んだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。今日は、家に帰る日だ。ミシャとサイルも、見送りに来てくれた。
「権蛇くん。次はいつ来る?」
「多分、お正月かな...。」
僕にそう言われて、二人は、
「多分、その時あたし達は...。」
「冬眠、してるだろうな。」
「冬眠?!」
僕は驚いたが、確かにミシャは本来の姿は蛇だったし、もしかしたらサイルも本来は冬眠する動物の神様なのかも知れない。
「じゃあ、来年の夏かな。」
「楽しみにしてるぞ、権蛇。」
「ゴン!もう行くよ。」
父さんの言葉に頷いて、僕は車に乗った。
「じゃあ、また来年の夏!」
「「バイバイ!!!」」
ゆっくり車が動き出す。窓から外を見ると、二人が手を振っていた。
二人が見えなくなった所で、空を見上げると、遠くでばあちゃんが微笑んだ気がした。おばあちゃん、これからも天国から僕達を見守っていてね。
おわり