あれを食べたい……!(後編)
「茜、チャーシューっぽい豚肉料理が完成よ」
「わーい、味見する!」
「茜、麺を切ってみるか?」
「あ、やってみたい!」
こんな風に親子三人で何かを作るって、本当に。
本当に、久しぶりだった。
楽しくて仕方ない。
「野菜、炒めることできたよー」
私がそう言った時、本物のヘッドバトラーが、厨房に顔をのぞかせる。
何ともいい香りがするので、彼は微笑みながら母親に伝えた。
「王太子殿下が王宮を出発されたそうです」
「あか……エマ、着替えを」
「はい!」
今回作った洋風ラーメン。
親子水入らずで食べるのでもいいけれど、新しく家族になるセシリオ、それに大切な友達であるヴェルナーも招待し、みんなで食べたいと思ったのだ。
そこで二人には「アナのお屋敷で、新しい料理にチャレンジすることにしたの。もしかしたら失敗するかもしれないけれど……よかったら、一緒に食べませんか?」と、声を掛けたのだ。
するとセシリオとヴェルナーは「「喜んでお邪魔する!」」と、即答だった。
そんなわけで、二人がまもなくやって来る!
急いでドレスに着替え、エントランスホールでセシリオとヴェルナーを迎えることになった。
着替えを終えた母親と私は、なんと色違いでお揃いのデザインのドレスに着替えていた。
いわゆる双子コーデ!
桜色を思わせるドレスは母親が、藤色を思わせるドレスが私。
“ラブマジ”ではやっぱり、この配色だよネ。
そして私は、セシリオにプレゼントしてもらったロイヤルムーンストーンのイヤリングも、しっかりつけている。
一方の母親は……。
「え、そんな若い髪型無理よ」「お母さん、若いから大丈夫!」と言うことで、アナのトレードマークとも言える、ツインテールにしてもらった。そうなると母親は、まさに絵に描いたような、アナ・ココ・ディアスになる!
父親……リベルタスは、いつも通りのシンプルな黒のスーツ姿だけど、それでカッコいいのだから!
本当になんだか不思議!
「エール王太子殿下、ご到着です」
「ホルス第二皇子殿下、ご到着です」
元攻略対象二人が、華麗にエントランスホールにその姿を現わす。
「今日はお招きいただき、ありがとうございます」
世界を照らすような、明るく輝かしいセシリオの笑顔!
サラサラの金髪、碧眼の整った顔。
シャープな顎のラインに高い鼻。
今すぐひれ伏し拝みたくなる。
それに。
スカイブルーのセットアップが、痺れる程よく似合っている!
「やっぱり殿下はイケメンね」
「でしょ」
思わず母親と、前世で一緒に行ったファンイベントにいるような気持ちになり、コソコソ話。
「本日はご招待いただき、ありがとうございます」
端正な顔立ちで、大変甘い声をしており、イケボの代表格のヴェルナー!
今日はアンティークグリーンのスーツ姿で登場。
その衣装は、襟足の長い銀髪、エメラルドのような瞳のヴェルナーに、実にピッタリだ。
「お待ちしていました。王太子殿下、第二皇子殿下。ダイニングルームへご案内いたします」
母親はいつものアナに戻り、笑顔で二人を迎えた。
◇
「これは……初めて食べた料理だ。パスタ(麺)が珍しい感触だね。でもスープの味と合っているよ。とても美味しいな」
「この豚肉も濃厚な味付けで、パスタとも合います。しかも野菜。このスープと野菜も合っていますね!」
セシリオとヴェルナーは、初めて食べる洋風ラーメンを、とても気に入ってくれた。麺については色も白く、うどんみたいだけど、かんすいという物がないから仕方ない。この世界でひとまず用意できるもので作ったのだから。でも私達親子……アナ、リベルタス、私の三人の手作りだと知ったセシリオとヴェルナーは……。
「次回は僕も調理から参加したいな。料理の経験はないけど、頑張るよ!」
セシリオがそう言えば、ヴェルナーまで「わたしも挑戦したいです。ぜひお誘いください」と言い出したのだ!
王太子と第二皇子が料理!?と思ってしまうが、それはそれで楽しそう。
何より。
まさか推しと攻略対象と料理を作れるなんて、激レア!
「「勿論ですよ、殿下!!」」
母親と声を揃えて返事をしてしまい、二人は勿論、父親も笑っている。
転生したこの世界で。
親子三人でこんな風に笑えるなんて。
推しと攻略対象とラーメンを食べられるなんて。
夢のようであり、そして……とても幸せだった!
お読みいただき、ありがとうございました~
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