24話:シナリオの力に突き動かされて
ロイヤルブルームーンストーンの平均相場一万ゴールド。
今回出品されたロイヤルブルームーンストーンのイヤリングは、金具がゴールド。しかも逸話もある。そして石には美しく碧いシラーが入っているため、宝石としての価値は高いと思う。それでも百万ゴールドが妥当だと思う。
だが、ジャレッドと私が競り合った結果、三百万ゴールドまで値段が上がっていた。
ロイヤルブルームーンストーンのイヤリングを落札する運命から抗えないと思い、事前に石のみの最高価格を調べたところ、約四百万ゴールドだった。もしこの石を加工し、他の宝石と組み合わせれば、一千万ゴールドくらいにはなるだろう。
だが、今、オークションにかけられているロイヤルブルームーンストーンは、そこまでではない。そして三百万ゴールドは、今の私が動かせる最大だった。
これを超えた分は、両親に泣きつき、払ってもらうことになる。
心から欲しいわけではないのに。
どうしてこんなに執着するのか。それは――シナリオの強制力のせい!
シナリオの力に突き動かされているのは、私だけではない。
それはジャレッドも同じ。
仮面<アイマスク>をつけていても分かるぐらい、怒りの表情をしたジャレッド。
何度も私を睨みながら、札を持ち上げていた。
隣に座るアナは、ジャレッドに何度か耳打ちをしている。
それは煽っているのか、宥めているのか。
ともかく、ロイヤルブルームーンストーンのイヤリングで熱戦を繰り広げるジャレッドと私には、会場の客たちも驚いている。ただ、接戦を見るのは楽しい。よってゲーム感覚、面白半分で、見られている気がしていた。
「なんと! 美しき愛の逸話を持つイヤリングに、三百万ゴールドの声があがりました。どうでしょうか。これ以上の声は? おっと、手前の一階席の男性の手が上がりました。三百十万ゴールドです!」
これまで三十万単位で値を上げて来たジャレッドが、十万ゴールド単位で釣りあげて来たということは。ジャレッドも予定していた予算に近いのだろう。
いくら公爵家の令息だと言っても。毎月使える予算は限られているはず。オーバーしたら、理由を両親に説明し、立て替えてもらうしかない。
ジャレッドが限界ならこれで決める!
「三百五十万ゴールド!」
私は一気に四十万ゴールド上げたのだ。
ジャレッドが悔しそうな顔をしていた。
アナはしきりにジャレッドに何か言っている。
勝てたか。勝てたかしら!?
本当は、どうでもいいのに。
シナリオの強制力で、どうしても勝ちたい心境になっている。
「三百七十万ゴールド!」
ジャレッドが勢いよく札を上げ、叫んだ。
三百七十万ゴールド!
私が勝負に出たので、ジャレッドも勝負に出たのだろう。
こうなると四百万ゴールドを出すしかない。
背中に汗が伝ったその時。
すっとセシリオが札を上げた。
「五百万ゴールド」
会場がシンとした。
いきなり百三十万ゴールドも上がったのだ。しかも金が金具に使われているとはいえ、ロイヤルブルームーンストーンなのだ。それに対し、五百万ゴールド! 逸話や歴史的価値を考えても破格だった。
だが。
これで喧嘩両成敗(?)になった。
さすがに五百万ゴールドは、ジャレッドも私も出せない。
「五百万ゴールドが遂に出ました。競り合っていた二人のお客様、いかがでしょうか。五百万ゴールドを上回る価格の提示はされますか!?」
司会者がしきりに煽るが、もう無理だ。
五百万ゴールドと言われた瞬間に、ジャレッドも私もクールダウンした。
「では他に声が上がらないことから、美しき愛の逸話を持つロイヤルブルームーンストーンのイヤリングは、五百万ゴールドで落札です!」
◇
一人一品出品したので、三学年合計で百八十点の品が売れた。
その売上総額は一億五千万ゴールド。
一億ゴールドはヴェルナーが出品した黄金の盃だ。
「すごい熱気でしたね。どうですか、この後。丁度、夕ご飯の時間です。レストランで食事でもして解散にしませんか?」
ヴェルナーの提案で、セシリオと三人でレストランへ行くことになった。
セシリオの馬車に、三人で乗り込むことになる。
対面の席にヴェルナーとセシリオが並んで座った。
「それにしてもキャンデル伯爵令嬢は、何でまたあのイヤリングをそこまで欲しがったのですか? やはりあの愛の逸話ですか? それとも嫉妬ですか?」
馬車の中は、三人だけ。
その気さくさから、ヴェルナーはこんな質問をしたのだろう。
だが嫉妬。
つまりは男子であるジャレッドが、自分のためにイヤリングを欲しがるわけがない。誰かにプレゼントするために張り合っている……ということは、明白だった。そうなると普段からアナとジャレッドは一緒にいるわけだから、アナのために競り落とそうとしていると、容易に想像がつく。
対してジャレッドの婚約者である私が、そのイヤリングを競り落とそうしていたら……。
アナへの嫉妬で頑張ったと思われて当然だった。そしてこのゲームの世界のシナリオも、それを望んでいたはずだ。
「ホルス第二皇子、嫉妬なんて、さすがに失礼では。あのイヤリングのロイヤルブルームーンストーンは、とても美しかった。それにロマンチックな逸話もあったのだから。レディが憧れ、欲しくなっても当然。むしろ、キャンデル伯爵令嬢に譲ろうとしない婚約者に問題を感じる」
セシリオがバッサリ、ジャレッドのことをヒドイ婚約者認定した。






















































