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天明のシンパシー  作者: 砂石 一獄
⑨ショッピングモールダンジョン編
280/322

【第百三十五話(2)】LiveとLife(中編)

【配信メンバー】

・勇者セイレイ

・盗賊noise

・魔法使いホズミ

・魔物使い雨天 水萌

【ドローン操作】

・船出 道音(漆黒のドローン)

 鈍く、重い金属音が幾度となく鳴り響く。

 それに重なるのは、可憐に大鎌を振るい続けるホズミの声だ。

「はっ、たっ!」

 空莉は攻撃を返すこともなく、防御に専念していた。大鎌の隙間から、どこか葛藤の滲む表情を覗かせる。

「君達はどうして、セーちゃんについていこうって思えたの。どうして、ここまで一緒に頑張れたの」

「一緒に戦ってきた空莉君なら、分かるでしょっ!分からないふりするの、やめてっ!」

 どこか苛立ちの滲んだ声でホズミは幾度も打ち付ける。

「……僕は……っ」

 攻撃を受け続ける空莉の声が弱々しくなっていく。

 その声を聞いたホズミは、一度素早くバックステップし体制を整える。それから、大鎌を構え直して叫んだ。

「ごめん、お金いっぱい使うけどっ!」

 次の瞬間、ホズミが持つ大鎌を中心として炎が滲み出す。

 大蛇の如くうねる炎の中、ホズミは素早く駆け出した。

[ホズミ:炎纏]

「こうでもしないとっ、分かってくれないでしょ!!」

 炎を纏ったホズミの姿が、橙色に照らされる。彼女が駆けるに連なって、アスファルトが焼け焦げていく。

 だがそれすらも気にせず、ホズミは高く振り上げた大鎌を振り下ろす。

「責任を抱え込んでたセイレイ君に、優しい言葉をかけてくれたのは空莉君だよっ!なんでっ、それをっ、自分にっ、出来ないっ!」

 幾度となく大鎌を振り回す。その動きによって描く炎の軌跡が、色鮮やかに配信画面に照らされる。

 彼女の言葉の一つ一つに、空莉の表情が歪んでいく。

「僕は……っ、許されないことをした、守りたかった皆を殺したっ、許せるもんか……!」

「その結果が記憶を消して現実逃避!?そっちの方が許されないよっ!力を持つという責任から逃げたんだ、空莉君はっ!!」

「……力を持つ、責任……」

 空莉は葛藤の滲む表情のまま、じっと盾の如く構えた大鎌を握り直した。


「ホズちゃんも見てよ。これが、僕が手に入れた力だよ」

「っ!?」

 空莉はホズミが振るう一撃に合わせて、大鎌を振り抜く。

 カウンターを喰らったホズミは体勢を保持することが出来ず、大きくバランスを崩す。しかし転倒には至らず、すんでのところで体勢を立て直した。

 だが、その間に空莉は低く大鎌を後方に構えていた。

「制御なんて出来なかった!僕は、自分自身さえもコントロールできなかった愚か者だよっ……!」

 そして、空莉は大鎌を振るう。


「——なに、なんなの……っ!?」

 アスファルトが、突如として無数の斬撃に抉られる。見えない刃が、幾度もホズミを襲う。

「ホズミ!」

 俺は彼女の元に駆け寄ろうとしたが、ホズミは左手を突き出してそれを阻止。

「来ないでっ!私が……受け止めないとっ」

「ホズちゃんには僕の引き立て役になってもらうよっ!」

 空莉がそう宣言すると同時だった。

 ようやく、空莉が放ったスキル名がシステムメッセージとして表示される。

[青菜 空莉:瞬貫通]

「僕でさえもこの力をコントロールできなかったっ!君達に理解できるもんかっ!」

 土煙が舞い上がる。

 引き裂かれた傷跡だけが、攻撃の痕跡を伝える。ホズミは大鎌を構えて防御態勢を取りながら、ちらりと俺へと微笑みかけた。

「……セイレイ君、お願いね」

「ホズミ……?」

 俺は困惑しながらも幼馴染の名を呼ぶ。だが、すでに彼女は俺の声など聞いてはいなかった。

「空莉君っ……!」

 ホズミは防御の構えを解除し、スキルによって向上した身体機能を存分に駆使して跳躍。

「——っ!」

 見えない斬撃に、幾度もホズミは切り裂かれる。だが徐々に減少するお稲荷ポイントをも気にせず、ホズミはクウリ目掛けて降下する勢いのままに大鎌を振り下ろした。

「君は独りよがりだよっ、他人の助けを拒んだ、臆病者だ!」

 自ら、空莉が振るう大鎌の元へと飛び込む。

 受けるダメージも気にせずに、ホズミは最後の一振りを浴びせた。

「な……っ!」

 空莉の胴元から、舞い上がるホログラムの欠片。だが、空莉のお稲荷ポイントを全損させるには至らなかった。


「ホズミちゃん、退場ね」

 秋狐から淡々と浴びせられた宣言を聞いた後、ホズミは俺達に背を向けた。

「……あのわからず屋に教えてあげて。頼んだよ」

 そう言って、ホズミもnoiseと共に「見学席」へと姿を消す。


 残ったのは、俺と雨天だけだ。

 

「……私が、先に行っていいですか?」

 雨天は、じっと俺を見上げながらそう問いかける。

 駄目だ——そう言おうとしたが、彼女の顔を見て、俺は口を閉ざした。

「空莉君と私は、同じ四天王ですから。話さないといけないんです」

 覚悟の滲む表情に、俺は何も言えなかった。たとえそれが演技だとしても、引き留める理由を見出すには値しないだろう。

 俺は観念して、雨天の小さな肩をポンと叩いた。

「分かった。お前の想いを浴びせて来い」

「はいっ」

 

 雨天はレインコートのフードを被り直すように引っ張り、それから右手に槍を顕現させた。

 徐々に、彼女の周りに水滴が浮かび上がる。

「空莉君。皆の言葉の意味、分かってますか」

「分かってるよ。そこまで馬鹿じゃ」

「脳で、じゃなくて魂で分かってるか、ですよ?」

 雨天は空莉の言葉を遮って、自身の胸元を撫でる。

「一ノ瀬さんは、たった一人で戦うことよりもセイレイ君達と戦うことを選んだんです。穂澄ちゃんは、セイレイ君と肩を並べて戦う為に力を望んだんです」

「……それは……セーちゃんだから……」

 口を濁して言葉を返す空莉に対し、雨天は呆れたようにため息を吐く。

「やっぱり分かってないじゃないですか。同じくセイレイ君達に負けた私が教えないと駄目みたいですねっ」

 雨天は大きく深呼吸を繰り返す。その動きに呼応するように、舞い上がる水滴が徐々に雨天の元に集い始めた。

「……誓います。皆が私を受け入れてくれたように、私も皆を受け入れたいんです。だから……まずは私が、私を受け入れますっ!」

「自分で、自分を信じる……」

「弱くて、無力で、どうしようもないほどに捻くれた私にも居場所をくれたんです。だから、今度は私が!」


 [information

 雨天 水萌がスパチャブースト”黄”を獲得しました。

 黄:水纏 ※初回のみ無料で使用することが出来ます]


「届いてっ、私の想い!スパチャブースト”黄”!」

[雨天:水纏]

 そのシステムメッセージが流れると同時に、彼女の全身を水流が纏った。彼女は掌に水滴を乗せて、ちらりと空莉に視線を送る。

「空莉君。次は、私が伝える番です」

「……もう、やめようよ……」

 空莉は震えた声音で、拒絶するように目を逸らす。

 明らかに、大鎌を持つ力が弱まっている。

「意地張るのは、もう終わりにしましょう?私達は受け入れますっ、空莉君も大切な仲間なんですよ」

「でも、でも……!」

 それは、半ば自棄と言った形だった。

「……放っといてっ!」

 空莉は自身を拒絶するように、勢いのままに大鎌を振るう。

[青菜 空莉:瞬貫通]

 再び流れる、そのシステムメッセージ。それと同時に、透明の刃が次から次にアスファルトを斬り裂く。

 雨天は襲い掛かる斬撃を目の当たりにしても、逃げようともしなかった。

 それどころか、自身の周囲を纏う水流を操作し、斬撃に近づく。

「これが、空莉君の力なんですね。理不尽に全てを奪われた……どうしようもない怒り、何もかも救うことの出来なかった悲しみ……いっぱい伝わります」

 纏う水流が、全ての斬撃を受け止める。水に沈む斬撃を見届けながら、雨天は寂しげな表情を浮かべた。

「突然大きな力を与えられて、使い方も分からない。ですよね?」

「雨天ちゃんに何が分かるって言うんだ……」

「他人を拒み続けた私を説得してくれたのは、空莉君含めた勇者一行ですよっ」

 切り替えるように、雨天はにこりと微笑む。彼女が手を動かすに連なり、踊るように水流が波打つ。

「もっと見せてください。何度だって聞きます、何度だって寄り添います。それが、私達勇者一行ですから」

「……っ、そんなこと言われても……っ……僕、は……許されない。逃げたんだ、垢消しして逃げた……っ」

「確かに、紛れもない罪です……私も、船出先輩も、同じ罪を抱えています」

 ちらりと、雨天は漆黒のドローン——道音に視線を送った。

 それから首を横に振り、左手を高く掲げる。左手に集うように、水流が大きな渦を生み出していく。

「罪は決して消えません。後悔して、苦しんで。もう……無様な姿をさらしながら、生きていくしかないんですよ」

「……っ」

「一緒に無様な姿を晒しません?……それが、私達に残された道ですから」

 雨天は、勢いよく左腕を振り下ろす。それと同時に、大渦となった水流が空莉に襲い掛かる。

「……わっ!?」

 瞬く間に空莉は水流に飲まれ、大きく渦に沿って振り回された。

 そのまま遠心力に従うままに、空莉は激しく吹き飛ばされてアスファルトの壁に強く打ち付けられる。

「——かはっ!」

 空莉の肺から吐息が零れる音が聞こえると共に、土煙が激しく舞い上がる。轟音が鳴り響くと同時に、配信画面に表示された空莉のお稲荷ポイントが大きく減少するのが見えた。

 雨天はそれを見届けてから、自身を纏う水流を空へと打ち上げる。

 シャワーの如く降り注ぐ雨粒を浴びながら、俺の方を振り返った。

「でも、やっぱり心に言葉を届かせるのはセイレイ君だけですっ。お願いしますね」

「……任せとけ」

「はー……いっぱい動いたのでお腹すきました。こんな時は稲荷寿司でも食べたい気分です、ね。秋狐ちゃん」

 雨天はわざとらしく、悪戯染みた笑みを浮かべながら秋狐へ視線を送る。


「……はは……」

 秋狐は苦笑いを浮かべながら、その場をやり過ごす。


 俺は、右手にファルシオンを顕現させて空莉と対峙する。

 結局のところ、直接ぶつかり合うしかないのだ。


 To Be Continued……

https://x.com/Sironkone_1569s/status/1926941489088680090?t=vZT69Meh7bvJuSnhO7AHbg&s=19

参加してます。ディル君動かしました(小説ついでの宣伝)

【開放スキル一覧】

セイレイ

青:五秒間跳躍力倍加

緑:自動回復

黄:雷纏

noise

青:影移動(光纏時のみ”光速”に変化)

緑:金色の盾

黄:光纏

赤:金色の矛

ホズミ

青:煙幕

緑:障壁展開

黄:身体能力強化

赤:形状変化

雨天 水萌

青:スタイルチェンジ

緑:純水の障壁

黄:水纏

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